宝石とさよなら | ナノ


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「点呼向かって左から」
「いーち、マジュでーす。起きてまーすどうぞヨー」
「二、オウメイ。右に同じく覚醒済みです隊長どうぞ」
「三、ナマエ。それなりに覚醒してます…どうぞ」
くわりと欠伸をして横二人に乗る。薄明4時、普段ならまだベッドの中でごろごろしている時間である。
まあ今家出状態だし工房にベッドなんてものないから固い床に布団を敷いて寝ているのだが……。
貯めていたお金で仮の寝床として買うべきかとも思ったが、私が帰った後それがゴミとなるだろう事に気付き、若干寝心地の悪さを感じつつも諦めたのだった。
おかげで固まった身体は不快指数を跳ねあげている為ごきりと首を鳴らし気合を入れる。こんな夜明けに集合しているのには理由があった。

「よし。それでは、トラブルはいくつかあったが今日から中忍試験が始まる。他国の忍が里中を闊歩することになる。その中で私達はこの試験中あらゆる情報を管理する総司令部となる訳だが……」
いつも以上に言葉には気を配り、人質に取られることなく、いかなる時も中立の立場で節度を持って過ごしてくれと注意事項が彼女の口からつらつらと述べられる。
ド素人の自分が考えうる限りのテンプレ通りの羅列だったが一番効率が良いからだろう。頭の中に叩き込んだこれからの流れへのはしりも終わり一息ついた彼女は冷めたお茶で口を湿らせてからそれぞれの担当先を伝えた。

「追加でオウメイは担当になった食堂への手配と最終確認しといて。ナマエは…悪いんだけど」
こういう時に珍しく歯切れの悪くなったチクマちゃんに不信のまなざしを向ければ「サソリを連れて第二次試験終了までゴールの塔で待機」と苦々しさを携えた表情で口を動かした。
自分一人なら何ら問題はなかったがその付き人の名にそれぞれ反応せざるを得なかった。何せ今緩いとはいえ軟禁状態のまま監視下に置かれている人物である。
「……サソリ外に出しちゃって大丈夫なの?」
「ものすごくまずい、んだけど……、五代目があんなことあったからさらに警備の方に人数を割かなくちゃいけなくてさ……。どうせ身体は出来てて仕込みもそれなりに揃えてるんでしょ」
実力は申し分ないし一次試験が始まったらすぐに移動してほしいから今から一旦工房に戻って護衛頼んどいてとチクマちゃんは眉間に出来た皺を揉み解しながら取引の材料にしようと考えているらしい条件を口にした。


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