宝石とさよなら | ナノ


▼ 324



「繰り返し同じところを切ってるんだ、君はもう少し安静にするべきだよ。痛覚が一時的にでも戻れば途端に動きにくくなる」
あとそれは洗濯頼んでおくから貸しなさいとマタンにシャツを剥ぎ取られ、代わりの物に袖を通したナマエはお礼も早々に速足でカンクロウの元へと向かっていった。
その背中を見てマタンはダメだありゃと肩を竦め、部下の一人に器具の洗浄を頼み後を追った。


桶に張った水に毒を落としたサクラは小さく切った胸の傷を閉じると額の汗を拭った。
処置は終わりましたと宣言したサクラに力が抜けたのか床に座り込んだテマリが良かったと渇いた喉を震わせて呟いた。
全員が感心する中閑散とした廊下に足音を響かせながらナマエが駆け込んで来た。
先ほど安静にしろと忠告されたが自制なんてできず、そのままサクラの両肩をがっしり掴むと若干血走った目で「ど、どう……」と尋ねる。
そんなナマエに微笑み「ほとんどの毒は除けましたよ、後はわずかに残留する毒を……」と返したサクラは途中でその言葉を途切れさせた。
「ありがとう、ありがとうサクラちゃん……ッ!」
引き寄せられて胸部にぶつかった衝撃で一瞬息が詰まったサクラの事なんてお構いなしに腕の力を強めたナマエ。
肩に埋められた顔からひっきりなしにお礼の言葉が漏れてくるのに気づき、サクラは巻き込まれなかった片腕で慰めるように背中を撫でてやった。

「しかし細胞壊死も見られたんですが良く手足が残ってましたね」
毒抜き中も血流の減少が進行してましたが流石に3日も黒ずむことなく持ったのは奇跡だとナマエの背中を撫でながらサクラは周りの医者たちに声をかけた。
ナマエの身体の事は機密であるが故に余計なことを口にしないよう一斉に黙り込んでしまった彼らに異常な空気を感じている中、空気だったカカシとナルトの背後から無精髭を蓄えたマタンが「壊死したらその都度生成していたからね」と答えた。
まさか自分たちの上司が機密を一介の…それも他国の忍にばらすとは思ってもなかったセッカたちはそれぞれマタンの名を呼ぶが、それを制すると自分たちに出来なかった事をやってのけた彼女には敬意を称すべきじゃないだろうかと返した。
まあ綱手様にはこの里に来る前に大体伝わってるからばらすも何もないけどねとリノリウムを進みサクラに抱きついたままのナマエを指さした。
「こいつの身体、患部に塗りこめば複製して元の形に戻ってくれるの」
傀儡師が指を失う事態だけは避けたいってナマエ本人にお願いされたから綱手様が来るまでを条件に四肢の延命をしていたんだ。
さっきまで腹開いてたでしょとぐるりと指でその場所を示しながら説明すればさすがのサクラも顔を顰め、抱きつくナマエを軽く離すとマタンを睨み付けた。

「まさか一般人のナマエさんに術をかけたのは……」
「そう、オレだよ」
ホントは大蛇丸も一緒だけどねと喉まで出かけた言葉を飲み込んでマタンは口端をあげた。


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