宝石とさよなら | ナノ


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手先と集中力を試される医療忍術とは違い、ただ練ったチャクラを指から腹へと移動させているだけなので自由がきく。
多少無理してもチャクラ切れを起こさなければ痛みも無く死ぬことも無い化け物であっても隣の命を延命させる程度には役に立つことが、現在進行形で続く災禍の中で一筋の希望を与えていた。
自分の身体がコンプレックスになりかけているのに気付くことなくナマエは我愛羅を助けるために、唯一敵と接触したらしいカンクロウの延命の手伝いをしていた。
と言っても傀儡師の命である手先の延命をしているだけである。死体でも複製は出来るが死んだものを生き返らせることはできないのでカンクロウの生命力にかかっているのだった。
それもまた複製した傍から再び毒にまみれていく現状ではただの鼬ごっこなのだが。解毒剤が出来て動けるようになったときに四肢切断にならないで済みそうだった。


大丈夫、我愛羅君は助けられる。里中が奪還に動いてるんだ、目の前の事から一つずつ潰して行かないと。
ナマエが自分に言い聞かせるように同じことを呟く端で、マタンは部屋に呼んだ自分の部下数人にナマエの人とは呼べなくなった身体の仕様を説明し、輪番でカンクロウ延命のために摘出と複製を繰り返している。
自分が複製も出来ればいいのだが、まだ傀儡の仕込みを取り出せない様な状態では術を使う事は出来ない。猫の手も借りたい状況で、過集中により精神を疲弊させる彼らにナマエは心の中で応援することしかできなかった。
そんな中、こちらに向かってくる足音がほぼ部屋の前まで来てからようやく気づいたナマエは開かれた腹に手を突っ込んでチャクラを放出し続けながら首だけをそちらに向ければ師匠であるチヨと目が合う。
大戦時を生き抜いただけあって慣れてはいるようだが、平気で腹に手を突っ込んでいる弟子には流石に顔を歪めた。

「……ナマエ、それを続けていればそのうちチャクラ切れを起こすぞ」
「傀儡師の手足が壊死するよりマシですよチヨ様」
それに自分にはこれくらいしかできないですしと疲労からかしょぼしょぼと瞬き多く返したナマエに嘆声するとチヨは部屋の隅で休憩を入れていたマタンを呼んだ。
50を過ぎてなお小僧扱いしてくるチヨ達に苦手意識があるマタンは傍に来たバキに一瞥をくれてからカンクロウの容体を説明し始めた。

頸動脈をさわり、瞳孔を見たりと先ほども散々弄り回されていたカンクロウの身体を一通り見て、黒くなっていく指先に気付いた一人が復活したナマエの新鮮な内臓を削ぎ取り切り落とした傷口に引っ付ける。
床にごろごろ転がっているであろう四肢の破片を一瞬想像して吐き気を覚えたもののナマエは目を瞑ることにより何とかそれを回避した。





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