宝石とさよなら | ナノ


▼ 307



ナマエはあちらの世界ではシャチクというモノだったらしい。
おかげでチクマのところの細かい作業や人数不足気味だった事務仕事が片付きだしていたが、こうも時間が取れないとやっぱり寂しいわけで。
昼を誘おうと頻繁に球体の中をうろついているのだがナマエが見つからないのは考え物だ。
比較的会議室周辺で見かけるマジュと同じチームについてるが、自分が頼んでしまった仕事のせいで普段からバラバラに行動しているとかいう。お願いだからツーマンセルで行動して欲しい。

「ナマエ?さっき下忍の子が飯に連れ出してたネ」
この後手合せしてほしいとかで何なら一緒に飲食店街の様子も見て来てって頼んだしと返したマジュに不満だと色を変えた視線を送った。
「あいつは……、飯時も仕事か」
「受験者も大名も里に来るんだからそっちだって調整しておかないと外のお金入ってこないじゃん、今回はうちのリーダー外回りで忙しいし」
居てほしければ起きた時に予約入れとかないと、言わなくちゃ解らないですよ風影様。
からかいを含んだ笑みを浮かべたマジュに正論を刺され、眉間にしわを刻み押し黙ると「代わりにご一緒しますネー」とナマエ用に買ってきていたらしい弁当をオレの前にコイツは置いたのだった。


「聞いてくださいナマエさん!」
そう言って両脇を抱えるようにして連れてこられたのは最近開店したらしいラーメン屋だった。
ここに来るまでさながら某組織に捕まった宇宙人状態に見えたであろう私は現在、やっぱり両端を挟まれた状態でカウンターに腰かけている。何故私を挟むのだ若人よ。
ほぼ同時に茹で上がった3人分のラーメン。各々の注文品が目の前に置かれ、割り箸を適当に割るとそれを啜りながら、背中に花を舞わせている彼女たちの言葉を待った。

多分……、我愛羅君の事なんだろうな。試験に関する相談で連れ出されたんじゃないのはここ数日でよくわかっている。
プライバシーに関する事はなるべく言わないようにしているが、連日のように迫られうっかり食べ物の趣味が酒のつまみ系だと零してしまったのが一昨日である。
親父臭さに女子高生の年代である彼女らは引くかと冷や汗をかいたものの「ギャップ可愛い」と壁を叩き、身悶えていたのを思い出した。
「私達今朝帰ってきたんですけど、我愛羅様が今回の任務の出来を褒めてくださって!」
きゃあっと黄色い声を出し頬を抑え恥じらう二人はラーメンが伸びるのも構わんとばかりに身を捩っている。
若干気力を吸い取られてる気がしつつもやったじゃないと共に喜べば、先輩たちは先代様からはあまり声をかけてもらえなかったらしくて悔しがってましたと私以外にも自慢して回ったことを暴露するマツリちゃん。
まあ確かに羅砂さんは人を褒めるタイプではないなぁと接して来た短い間の彼の姿を思い浮かべつつ、彼女らの話に適当に頷きながら久々に食べたラーメンに舌鼓を打っていれば「ナマエさん絶対今の適当でしょ」と突っ込まれた。ばれてたか……。




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