宝石とさよなら | ナノ


▼ 305



やっぱ痕はないよなぁ……。
自分の部屋で服の裾を捲り守鶴に割かれたであろう腹を見るも、いつもと変わらないそれがあるだけだった。
マタンさんからは、いくら修復機能があるからと言っても方向が悪いと数日は痕が残るとか言われたはずなんだけれど……。
ずたずただったからどうかなって思ったもののやはり夢は夢だったらしい。
奇妙な体験ができたと思っていた分ちょっとだけ残念に思いながらも裾をおろし化粧を乗せはじめた。
自身が異世界から飛んできたことをカウントするのをすっかり忘れていたのだった。


「ねえ我愛羅君、守鶴ってどんな性格してるの?」
「……いきなりどうした?」
昨晩髪を乾かしてる間に寝始めてしまったナマエをベッドに運び隣に潜り込むといういつもの流れで何ら変わりなかった我愛羅は突然の質問にピクリと頬の筋肉を反応させて聞き返してしまった。
なぜ今守鶴なんだ?そう問えば昨晩夢の中で話をしたのだとあけらかんとナマエは答えた。
自分が煩悩と戦って打ち負けかけている間に見ていた夢で二人っきりだったと聞いて動揺する我愛羅に腹を割かれたことは言わず、私の夢の守鶴は面白いやつだったよと笑う。
憑依体同士、奇妙な仲間意識が……少なくとも私は生まれたのだが、やはり夢は夢だったのだろう。残念。話し相手がいない寂しい満月を見ながらしっぽり月見酒と行きたかったのだが。
チャクラで割と何でもできる世界ではあるが、流石に夢に干渉とまでは聞いたことが無いと我愛羅君は答えてくれた。
「そもそも守鶴は人間が嫌いだ、この里だけとかは関係なく……」
オレも何度か守鶴に呼び出されたことがあるが、全部罵倒だったと理不尽なクレームを淹れられた過去を思いだし眉間にしわを刻みだす。
いつだって殺気の塊だったと記憶にある守鶴の事を答えれば、「そっかぁ」と微妙な返事をナマエは返したのだった。

「……それで、オレは夢の中のナマエにどうしたら会える?」
「いや知らんがな……」
いきなり話を変えてきた我愛羅にさっきからずっと考えてたのかそれ…と親離れの兆候がちっとも感じられない狸に眉を八の字にした。



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