宝石とさよなら | ナノ


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「すみません、お待たせしました」
小一時間ほどシュデンと二人で淹れてもらったお茶を手に談笑していたら目的の人物が顔をのぞかせた。
まあ談笑と言ってもどちらもあまり表情が変わらない為テッカンはオレ達が話していると機密会議のようだといやそうな顔をしてくる。
案の定マタンも同じような反応をして扉を閉めかけたので、瓢箪から砂を出し閉じかけたドアに挟んだ。
「マタン、ここじゃなんだ。今後の話がしたい」
含みはあるものの何も間違ったことは言っていない。時間は大丈夫か?一応問えばちゃんと引き継ぎしてきましたよと目の前の出来る男は笑った。


医療忍術の研究をする部屋も併設してある砂の病院ではある程度の地位になると個室が与えられる。
それも父様が進めた政策の一つだった。軍縮を辿る一方で、他国に攻められる可能性を少しでも減らすために精鋭化が進むよう少しでも贔屓するのは当然のことだ。
風影になって直面した問題だったからこそ今ならこの案を出した父さまの気持ちも少しだけ解ってしまった。
淹れてもらったコーヒーに口を付け、整頓された紙だらけの部屋に腰を落ち着けたところでオレは口を開いた。
「昔からナマエ関連はお前に一任されていたらしいな」
「そうですね……、もしかして定期検査の件でしょうか?一人でも十分ですよ」
まあ増やしても構いませんが。何でもないようにそう答えたマタンだがそんなことをして困るのはお前だろう。
首を振って否定するオレに今度こそ予想がつかなくなったのかこちらを見つめた。
「オレが潰したキンコウの遺体はどこに保管されている?」
先日木の葉でそういう事件があったらしい、あいつの身体は少し特別だったから細胞が盗みとられてないといいんだが。
心配している体を装いマタンを見つめ返せばちらりとオレの少し後ろに陣取っているシュデンを見、下を向いて両手をあげた。
「ばれてましたか」
「そうだな、まあオレはナマエの身体に傷をつけたこと以外は怒っていない」
大体ナマエの身体がこの世界にとどめられているのはお前たちのおかげなのだろう?よくやったと笑えば面食らった顔をされた。
どうやら濁すべきか迷っているらしいがこっちとしても保護をする身としての注意事項などはきちんと聞いておかないとならない。
時間は確実に俺を歪めた。ナマエが消えたら今度こそ発狂するんじゃないかとさえ思っている。だからこそ聞いておきたい。

「話してくれないか、ナマエに使った術について」
話せば研究は続けていいし資金も少量なら出せる、お前にとっても悪い話じゃないはずだ。
時計の秒針が2周半を越えたところで「そうですね」と目の前の男は折れた。



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