「島崎、お前最近疲れてんのか?」
「情報売ってた下っ端共を制裁して少なくなったから割り振り増えましたもんね」
彼の能力は便利ですし、楽なお使いでも数が増えれば疲労は増えるのは明白です。柴田に羽鳥が答える。自分と同じく攻撃型ではない能力持ちであり、なんだかんだと細かい工作を任されてきたのでその苦労はわかっているつもりだった。羽鳥のフォローに最近煽りにキレがない島崎が顔を向ける。
「わかりますか…、可愛がっていた猫が行方不明になりましてね」
人懐こい奴だったんですよ、気まぐれでしたけど。普段から表情も態度もあまり変わらない島崎のしょぼくれた様子に羽鳥は重症じゃないかと慌てた。成人をとうに越えた男のそんな姿なんて見たくなかったと心中でぼやく。というかボスから目をかけられてる男の猫と戯れている姿も想像したくなかったんだが。羽鳥の脳内では猫の両前足を捕まえて二足歩行させているしゃがんだ島崎のイメージができていたが残念ながら猫(人間)でありさらに女性であることを彼が知るのはもっと後の話になる。小学生のような悪戯で構ってもらおうとしているのを知り、もっと嫌だわと叫んで喉と眼鏡のレンズを壊す未来がここで確定した。合掌。

「じゃあ誰かに飼われてるんじゃないの」
峯岸が珍しいものを見たとばかりに本から視線をあげ、島崎にボールを投げる。その言葉が島崎の耳に性格に届くと、ムッと、それこそ嫉妬のような感情をモロに顔に出したので本で口元を抑えた。えぇ、マジで珍しいな。コイツ感情揺らすことあるんだ。峯岸と羽鳥の動揺を察知した島崎は即座にいつもの胡散臭い笑顔を張り付けるが怒気は隠しきれていなかった。お前、自分の気は察知できないのかよ…、柴田は喉まで出かかった言葉を胃の中に力技で押し込めた。

「地域猫みたいなもんだからどうなんでしょうね、それはそれで許せないな」
「そ、そっか…」
みたいなもんってなんだ?地域猫じゃないのか?3人が各々考察を進める間、島崎の尻ポケットに突っ込まれていた携帯ががなりたてる。ふぅと一つため息をついてそれを耳にあてた。海外に飛んでいるボスからの新しい指令であった。つかの間の休憩が終わり見かけたら教えてくれとだけ零してテレポートで立ち去った。その話を聞いて割と真剣に猫を探してくれていた羽鳥と、暇だったので付き添って共に探してくれていた芹沢が、首輪をつけていない猫を抱いては島崎を探してうろつくのが見られることになる。



「ナマエ、マジでそこを何とか」
「時間外労働は一円もまけられないですね、はよ払って」
「今月厳しいんだよほんとお願いもう少し待って」
同時刻、島崎の猫が飼い主と給与金の交渉戦を繰り広げていたのもまた別の話である。






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