「芹沢、家なき子になってもた」
「またですか…」
「マッポが悪いマッポが」
本日発売とCMもけたたましく販促していた自由度が高すぎると話題のクライムアクションゲームにのめり込み完全にあちらの世界の住人と化したナマエは、芹沢が母親からジュースを受け取り部屋に戻ったとたん普段より三割増しに口悪く帰還を喜んだ。警官とのカーチェイスに勝てず、豚箱にぶち込まれ、その間に家賃が払えず居住契約を解除されるという魔のスパイラルに陥っていたらしい。5分程度の短時間でよくもまあそんな話が進むなと芹沢はドアを超能力で閉めると折り畳み机にお菓子とジュースを置いて定位置と化した布団三段折りのソファーの上に座る。ポテトチップスの袋を開け、力を使ってナマエの眼前に持って行ってやった。ぱくり。
「マルチだ、私を助けろ克也ぁ…」
「名前で呼ばれると弱いのわかってて使うんだもんなぁ…」
アクションゲームは得意じゃないけどそれでもいいなら、そう前置きしてコントローラーを接続する。マジこのミッションクリア出来たら合コンでもなんでも組んであげるから。過去のバイトのおかげで無駄に顔が広いナマエが画面から一瞬たりとも目線を離さずに答える。「うちの後輩がいれば負けなんてねーんだわ」年下の先輩は芹沢の横で画面の中のパトカーの大群に中指を立てた。





「はい雑魚――――っ!おつかれしゃ―――――っす!!!」
ミッションクリアのアルファベットの羅列がエフェクトと共に光出せば、ナマエがコントローラーを投げて叫び、芹沢に抱き着いた。瞬間、息を止めてしまった芹沢もどうにかコントローラーを空中キャッチし浮遊させる。人の物を投げるな、芹沢には言えない文字列である。

「いや―――、ここ三日ずっとこいつらに悩まされたからほんと苛ついててさー!」
やっぱりうちの新人は頼りになりますわと床に直で座っているナマエが腰に抱きついたままゆらゆら身体を揺らす。
あんな事を騙されていたとはいえ起こした自分と普通に話をし、ゲームを進める為ではあるが家に押しかけ、己の母親にフレンズですと自己紹介し、これほどまで気を許す霊とか相談所の先輩。
言わずもがな異性である。
15年ひきこもってきた芹沢の世界に入り込んできた母親以外の親しい女性である。
そんな存在に頼りになるだの百人力だのチヤホヤされれば誰だって期待する。ピュアな心を持った元引きこもりなんてもってのほかである。
密着し、ユルい愛玩の舞にドギマギしてる芹沢に、無慈悲にもお礼何がいい?合コンでいい?どんなのがタイプ?なんて聞きだすナマエに耳まで染めていた芹沢はがっくりと肩を落とした。
後輩の心、先輩知らずなのであった。






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