落ち着いた所で詳しい話をしましょうとCaCa'Sへ…なぜか森羅万象丸さんも供なってやってきた私たちは、少し昼からずれていたこともありすんなりとボックス席へと通された。男女別れるかとお先にと言いかけた私を遮るようにボスが「おいナマエ」と静止の声をあげる。
「お前奥に座れ」
クイと顎で窓際を示された。知らない人間に囲まれるより逃げ道をあげた方がいいだろってことらしい、ボスそういう細かい所まで考えてるのほんと好き、全部詐欺の為の人心掌握術なんだろうけど。メニューをとってもいいのかとソワソワしているモブ君に構わず「人数分のドリンクバーとフライドポテト一つ」と勝手に注文を決めたボスを一瞥する。大人はまだしもモブ君に飯を食わせてやれ…。「あ、ペスカトーレ一つ追加で。小皿もお願いします」時間なくても半分なら食えるだろうしね、というか私もお腹すいてるし。ファミレスを頻繁にはしごしていたために覚えていたメニューのいくつかの内の一つを追加注文した私に苦い顔をしていたボスは見なかったことにした。800円位さっき稼いだしいいじゃんケチ。
各々ドリンクを片手に腰を下ろす。ちなみに成人男性に挟まれるのが可哀想なので対面にモブ君を呼んでいる。そのモブ君が初々しくもロックのかかっていたドリンクバーに気づかずポチポチ押してそれなりに時間がかかっていた為、席に着いた瞬間に注文が運ばれてきた。これ待ってたな…店員さんごめんね。半分ほどとりわけてやり貝やら海老やらを上に盛り付け渡す。「えっ」「お腹すいたでしょ、食べな」びっくりされたのにびっくりだわ。そら渡すでしょうに。ボスもしかしてこういう時にマジでケチってたの?嘘でしょ教育的指導を入れなきゃ…。お腹がすいていたのを悟られていたと知りポッと顔を赤らめいただきますとフォークを手にした少年の頬張る様子を見てから私も残りに手を付けた。ほぼ麺しかないけどそりゃ年下いるのに具材あげないわけにはいかないじゃん…?ねぇ?ついでにフォークを持ってきてもらうのを忘れたので箸で食ってる。そんなことを横でしていれば、神妙な顔で促していたボスの顔を見、女性がこくりと頷いた。任せっぱなしだったのを忘れるところだった。さてさて。ようやく本題に入るらしい。私も頬張りながら横目で女性へ視線を向ければぽつりぽつりと話を始める女性。なぜかちらちら私の反対側へと視線を向けているんだけど、あぁ幽霊いるんですかへぇ…。み、見えない!
インターネットか…とメモを取るボスに白い目を向けつつ一人怯え切っている女性を通り越した先を見やる。モブ君が言うんだからいるんだろうけど私には何も見えない。暇そうにモブ君の頭上に移っているはずのエクボを見やるが不可視モードを解いてくれないので反応はわからないままである。口元をペーパーナプキンで拭い、ドリンクに手を付けた。まあこの間零感じゃなくなったばかりだし不安定なんだろうなと適当に理由を立てて終わらせた。コースを説明しているボスちょっと隣のツッコミ職人見てみ?安すぎない?嘘でしょって顔してるから…。

「軽く見積もっても50万以上する案件だぞお前…」
「ですよねー!」
常識人のツッコミ職人こと森羅万象丸さんが心配そうに話しかけてくるので思わず同調してしまった。いや相場は知らないけどうちの料金表完全に美容コースだもんな。バイト代値切ろうとしてくるしな。ほとんどの依頼が1h相場3000円の指圧マッサージで済むからどうにかなってるだけでこれガチ除霊ばっかだったら一日で潰れてると思うわ。もっと言ってやって万象丸さん!私の脳内応援に共鳴するかのように彼は声を荒げていく。3言ほどすぎたあと、大体…という前置きを使用しつつ、彼らのバイト代払っちゃったら完全に赤字だろうとボスのアキレス腱を切り刻もうとしだしたので流石に放置できなくなったらしい。ボスは大げさに振り返った。
「だっ……!大丈夫、だしっ!うちの従業員は優秀だし」
お前にも手伝ってもらうし。吃るボスの死刑宣告になんでだと突っ込んでいる彼に合掌した。完全にボランティアである。というかこれエクボ抜いて4人で分けたら稼ぎほぼ0では?手品擬きやってた方が稼ぎ多いってどうなの世紀の霊能力者の霊幻新隆サァン…。ここで一言お願「ナマエ」ウッスなんじゃいボス。
「お前エクボと一緒にあいつについてって」
「いや待てなんで俺様まで働かせること前提なんだよ」
静止の声をあげ不可視モードを解いたエクボがモブ君の頭から降りる。分け前なんてないようなもんだしどうせ放り投げてどっかに行くだろと推測するエクボに首を振ると、ボスは詐欺師スキルの一つ「人間観察」を発動していたらしく、森羅万象丸という男の分析データを零した。ゲームだったらパッシブスキルでしょこれ…。「怖…」思わずエクボと重なった。
「というかあいつちゃんと霊が見えてるっぽいけど他特色ないただの一般人だろ?」
こっちに4人まとまってたら戦力の偏りがアレじゃん。万が一が起こった時にアイツが死んだら困る。人差し指を立ててそう説明すれば「師匠結構考えているんだな」と純粋な視線を飛ばしだしたモブをチラ見する。モブと俺が一緒の時点で偏るけどこいつは…、と一拍置きナマエとエクボの視線をモブへと促した。
「知らない人間と組ませらんないだろ」
「あー」
納得いった。意思疎通も誤魔化しも難しそうだわ。というか普通に中学生を見ず知らずの男と組ませるのもおかしいもんな。さりげなく霊幻が自身を戦力に入れてモブを騙してることは二人とも大人なのでスルーしてやった。


戻る 進む


グラフィカ


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -