斯く言うお前も | ナノ


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解ってたことではあったがこれがあるから里に滞在して衣食住の確保という誘惑に負けずに留まろうとしていたんだよと正座をしたナマエは板間君の叫び声を背に受けつつぶっ倒れた。
戦時中でなくとも砂でも木の葉でも同様に尋問……をされたのだ、人生三度目の尋問という名の拷問には慣れたものだったが久しく痛い思いをしていなかったため痛がる演技をするのが中々に面倒だった。
まあ……一番つらいのは、ココ二週間ほどで相当に懐いてくれた板間君が泣き顔を腫らして謝罪をする今この瞬間なのだが。
二畳ほどの吹きっ曝しの座敷牢でニ、三日の話し合いののち処遇を決めると放り込まれた私は目の前でびーびーと出会ったばかりの我愛羅君と同じように泣きわめく板間君の頭を撫でる。
予測出来てたし君のせいじゃないよと誘拐犯の、もしくはそれ以上の容疑をかけられている私が慰めるもその視界に私の姿を捉えれば堪えていた涙を再び溢れさせる。
困ったとばかりに板間君を呼び戻しに来た兄たちに末っ子を寝かしつけてあげてと半ば無理やり自分の腕からそのか細い子供の両手を引きはがしつつ渡す。
力になれずにすまんと申し訳なさそうに謝る彼らにも良いからいいからと気丈に手の平をひらひら泳がせ見送った。
こっそり掠め取ってきたらしい私の荷物を柵の隙間から投げ入れた彼らが長屋を抜け集落内の自分の家へと帰って行ったのを見届け私はこの二畳を見渡した。まあ見渡すほどの広さもないが表現という奴だ。
逃げたらそれこそ一族郎党で追ってくるだろう。あまり得策ではない。
窮屈なのは大目に見るけどトイレに壁が無いのはとんでもない話だとひとまずはこの見世物小屋状態の宿を大改造しようとここに来るときに目の端に映った近くの川から粘質の土と、ついでに水を呼び寄せた。

翌日仏間が大人たちを引きつれてきたとき目に映ったものは吹きっ曝しの箱型の座敷牢ではなく、小さな……それこそ東屋程度の小屋だった。
即席の土壁は焼いたように固く中に放り込んだ女が何かしたのは確実だった。
警戒する彼らの殺気に気付いたのか中でごそごそと物音を立てていた女は殴られたままの顔を処置してのんきに挨拶をした為に全員の戦意が削がれていったのを仏間は感じたのだった。
「ええと、誰か記憶を見れる様な忍術を使える人はいないんですかね?」
それが一番手っ取り早いと思うんですけどと大して怯えもせずに提案するそいつに食えぬ女だと一族のじじばばはが一斉に頭を抱えた。
忍界で最強と謳われた二大巨塔の片方である千手に囲まれ真っ向から潔白を証明して見せようとする女の気丈さには舌を巻くがそんな特殊能力を使える人間は千手におらず却下される。
えぇー…と不満げに声を漏らし「じゃあ板間君と私を別々に尋問して二人の話があってたら少しだけ信じてもらえれば……」と少し思案した末に女は提案した。


結論から言えば、座敷牢から私は解放された。
板間君の主観が入りまくって解りにくかったものの細かい部分まで合致しており、幻術を疑って解除の印を結べどもそもそもそんなものかかっておらず。認めざるを得なかったのが一点。
一族のお偉方が半円状に囲み頭を下げている光景にどん引いているナマエがどのように作ったのか解らないが土壁と鉱物で出来た小屋にビビって隠れることになった。
良いですから、気にしてませんからと叫び籠って数分後、恐る恐る壁に開けていた小さな穴に隠す様に垂らした布を捲り覗けば未だ頭を下げたままの一族にひぃと悲鳴を上げる。
ナマエがこちらを見ているのに気づいた一人が「お医者様だと知らずにこんなところに閉じ込めてしまい申し訳ない」と頭を地面にこすり付けた。
今すぐ無礼を詫びたい、鍵を開けたいが土壁を壊しても宜しいかと聞く仏間にお店を開く様に巻物を散らかしていたナマエは吃りながらも少し待ってほしいと必死こいて答えた。


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