斯く言うお前も | ナノ


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「少年、気分はどうかな」
河原まで一キロ程度離れた木の洞で、ナマエは持ってきていた巻物をすべて展開させ藪医者のおっさんがくれた手帳と四肢をなくした少年の身体を見比べながら尋ねた。
自分にとどめを刺したはずの女の顔が間近にあり引き攣る顔がゆがみごめんなさいごめんなさいと連呼し出した子供にああ、まあそうなるよねうんと頭を掻きナマエは近づく。
殺すなら一思いに殺してよと粘膜がとことん傷ついている少年の喉がその体と顔に似合わない濁声を発する。
涙と鼻水をまき散らしながら泣き叫ぶものだから動けない体では出したものを対処できず、案の定窒息しかけている少年へ回復体位を施す。
暴れようにも四肢が無い為徐々に諦めて大人しくなるのを待って落ち着いたかなと話しかけた。さっきからマタンさんの事藪医者って言ってたけど技法手帳はしっかり医者してますね、訂正しますよ私は。

「戦場から離脱させるためにああするしかなかったんだ、ごめんね」
私じゃ彼らに敵いそうにもなかったからと未だ怯えたままの彼の頭を撫でる。
腕を出せば噛み付かれるかと思ったけど少年はそんな気配すらなく妙に大人しくなってしまったので、また失神してしまったのだろうかと安心させようと微笑んでいた顔を崩し目を開いた。
少年の鼻水塗れの顔は、というか視線は私の……処置途中だった腹に注がれていてこれ以上のトラウマを植え付けてしまったかと切り開いた箇所を隠す様に支えていない方の手で押さえた。
ただどうやら私の考えていたこととは違う事を考えたらしい。助けようとして間に割り込んで切られたのではと思ったらしくまた歪みだした顔についた血まみれの口がごめんなさいと動いた。音にはならなかったけど。
……まあそういう事にしておこう。視界が朦朧としていたのか覚えていないのかは知らないが、私が先ほど発した離脱の理由と結びつけている様なのでそれを利用させてもらおう。
少年が二人も三人もいたら私も見ないふりをしたが助けるすべがありタイミングもそれなりに良かったのだ、何より最初に出会った時の我愛羅君とあまり変わらない年齢の子を見捨てることなんてできなかった。
なーんて理由を心の中で呟きながら騙していることとクナイを向けたことを懺悔しつつ、とりあえずそのみっともない鼻水を拭ってやることにした。タオルの替えがもうないのでこれ以上泣くのはやめてもらいたいものである。
「手足もそのうち治るけどとりあえずこのお腹縫うから泣かないでボーっとして待っててくれる?」
寝ててもいいけれどと伝え、地面に敷いたタオルの上に広げた簡易的な医療キットで手縫いしていく。筋の方向だのなんだのと解らないから引き攣るだろうがまあしょうがないだろう。そこまでマタンさんに教わっている様な時間もなかったし。
出先でマタンさんがいない時に自分の身体を使う手術をしなければならない時様にちまちまと巻物の中に貯蔵していたコレクションが大いに役立ったわけである。

背を向けていたので様子は解らなかったんだが後数針と言うところで少年がぎゃあと叫び、思わず飛び退いて辺りを見回したが敵も獣も見つからず。
どういう事だと最後に少年を見ると彼の視線がもがれた腕と脚に注がれていて、ぼこぼこと泡立つそれに恐怖する彼を見、一人納得した。
「あー、気持ち悪いだろうけどそれ、私の術だから」
一刻位待ってれば細胞が構成されて元に戻っていくから、と医療忍術だなんて死んでも分類できない外道術の説明を一言だけして地面に落ちた針をしまい代わりの針を取り出した。
ただでさえ野外という不衛生な場所なのに地面に落ちた針で縫えるわけがないのである。「ひっ」とか喉を引き攣らせいまだ静かにおびえる少年の悲鳴をBGMにプルプルと震える指で縫い進めた。

悪戦苦闘しながら糸を止めた私が印を結び近づけば、何をされるのかと怯える少年の腕の複製を速めようとぼこぼこと波打つ先に片手を這わせる。
メモを見ながら長い印を結んで、マタンさんに万が一の為にと特訓させられた特殊なチャクラを流し込めば泡立っていた個所が白い細胞で構成されてき、記憶形状物質のように元の形に戻りだした腕に目をむく少年の反応にちょっと得意になりつつ私はチャクラを盛大に振る舞う。
まあ流石に並のチャクラ量じゃ一気にやるのも両腕が限界だったわけで、貧血のような感覚に陥り案の定少年の最初に複製を施したもののしっかりと元に戻せず蚯蚓腫れだらけの腹に突っ伏してしまったわけである。
朦朧とし出した私の耳にお姉ちゃん?!とびっくりする少年の声が届いたところで私の口からは休憩という声が漏れそこから数時間記憶を飛ばすことになった。ああ、お姉ちゃんだって、良い響きね……ぐぅ。


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