斯く言うお前も | ナノ


▼ 1



拝啓お父様お母様。あと今頃パリでジェンヌってるであろう妹様とカイシャのカチク的な根性を植え付けてくださった部長様。
それとサソリのおっさんが協力体制になってくれるきっかけになったフィギュアとドールとラブドールの知識を下さった友人様。
私ミョウジナマエは絶賛……迷子中です。どうもありがとうございます。
追伸、どなたでもいいので助けてください。


「いやーふざけてみたけどさっぱりわからん、どこよここ」
足が枝に引っかかり、頭に血がのぼる……というかこの場合は降りるかもしれないがとにかくくらくらと痛み出した頭をどうにかするために思いっきり暴れれば頭頂部に激しくそれでいて鈍い音が響いた。
地面に頭から落ち目の前に星を散らしたものの、痛みのない身体では今の自分が少し休んだ方が良いのかすらわからない。
……とりあえず冷やした方が良いだろうとお揃いがいいと駄々を捏ねられて買った――我愛羅君にデコられ済みの――瓢箪の水筒から水を垂らしタオルに浸み込ませた。
暗器をしまう用の巻物、非常に便利である。魔法陣のように形式的な呼び出し用の印を書かなければならないがそれでもこの四次元ポケットはサバイバルの出来ない私には無くてはならないものになった。
まあそんなことはどうでもいいのだ、だんだんと熱を持ち出したこぶにタオルを押し付け上から大工の兄ちゃんのようにもう一枚を巻きつけ固定すると、身体にチャクラを走らせた。

「ていうか時空間忍術出来るじゃないの……あの藪医者後で覚えとけよ……」
サソリの手助けはあったものの、禁術を解除せずとも移動できることが分かったのは大きな進歩である。
傀儡のおっさん35歳の狙いだったキンコウさんの身体は私と一緒に来ちゃってるっぽいけれども……。
溜息をつき再びチャクラを流せば他人のでありながらも使い慣れた感覚が身体を駆け巡る。
とにかくチクマちゃんへと通信をし現状の把握をしようと彼女の一族固有の秘術を使って見たのだが、ノイズがかって反応が鈍い。
チャクラが乱れているわけでもないのだが久しく触っていない携帯の圏外のような状態に少しばかり郷里を思ふ。
時空間忍術が使えることは解ったので一歩帰宅に近づいたのだ。この話は一旦良しとして、砂隠れに帰るべきだなとやたら背の高い樹木に足をかけ壁登りを始めた。
基礎忍術を習得していたおかげで身体も心も、足の筋肉までもが逞しくなってしまったのを少し悲しく思いつつ、重力に従い目元に絡みつく砂漠で傷んだ茶色の前髪を後ろになでつける。

「……おいおいおいおい」
視界に入ったのは白黒の半分だけ染めたのかと思うような面白い頭の子供を五人の大人が囲んでいる場面だった。
弄られていくのを止めるほどの力が私にはないし多勢に無勢で勝てるわけがないのは解り切っていた。
「一の術……」
柔らかくした地面に潜り息を潜めた目の前で「そろそろこいつの一族が来るぞ」とリーダー格らしき男に話し、留めに心臓へ一突き入れ去っていく大人たちを見送る。


十二分に離れて行ったのを確認したナマエは地中から抜け出ると、虫の息である子供の脈を確認する。
「ごめんね、ちょっと痛いからね」
そういって私は持っていたクナイを子供の身体につき立てたのだった。


駆け付けた柱間たちが見つけたのは愛弟板間の身に着けていた鎧甲冑と四散した四肢の破片、そして吹き飛ばされ抉られたような地面だった。



/



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -