企画 | ナノ


▼ エレクトリックガール


「今日は委員会があるから」
先に帰っててとイタチから言われ、久しぶりの一人を満喫していた。居たら居たで楽しいけどたまには一人もいいもんだ。
鼻歌を奏でる私の腹がコロッケを食べたいと唸ったため買い食いをしようと駅前へと向かった所で見慣れない少年を目にする。
ランドセルを背負っているが自分の小学校では見たことが無い少年だった。私立だろうか。

「(年下かな……?)」
人の顔を覚えるのは割と得意だったが流石に自分の学年以外は親しい人物じゃないとわからない。
自分より小さい少年がこんなところで一人で突っ立ってるのもおかしい。ぼーっとしてるのに買い食いでもあるまい。

「迷子?」
背後からの私の声にばっと振り向いた少年がこちらを認識すると見る見るうちに顔を赤くしだす。
何がどうした、目線を合わせたままもう一度どうしたのぼくと首を傾げればみるみる目尻を吊り上げていく。
「テメーにはかんけーねーだろブス」
「親切に声かけてやってんのにそういう言い方はねーだろドチビ」
売り言葉に買い言葉であったがお互い小学生同士で気が回らず、罵倒雑言を吐き出しまくっていたナマエがふと先ほどまで少年の見ていた方に目線をやった。
煌びやかな装飾に引き立てられ、より綺麗に飾られたそれ。
高く聳え立つビルの一階の道端に面したショーウィンドウに展示されたマネキンであったが、精巧に作られたそれは着せられた服も相まって人間と見間違えるような出来であった。

「きれい……」
子供とはいえナマエも女、自身の虹彩が捉えた光の情報に思わずため息をついた。
「お前、これの素晴らしさがわかるのか……」
「素晴らしいかは人それぞれだと思うけどね」
マネキンだし、気持ち悪い人は気持ち悪いんだろうけど私は綺麗だと思ったよ。
先ほどまで悪口しか出てこなかった口から素直に返せば満足そうに少年は笑った。



「転校生を紹介します」
翌日、先生の後についてやってきた少年と同時に「あ」と漏らした私に隣の席のイタチが怪訝そうな顔を向けてきたのだった。




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