企画 | ナノ


▼ アイロニーな世界


初めて火影と対面した私は、彼女の言葉に了承の意を伝え自身に嘘をつき一番良い笑みを浮かべてやった。



別れてください、いつものようにのほほんとした雰囲気を携え言い切った彼女に、カカシは今の今まで彼女だけの笑みを浮かべていた顔のまま目を見開いた。
表情筋が固まっているため傍から見れば笑ってるように見えるだろうが、今は深夜で彼女の家。
目の前のナマエ以外にそれを見ていた人間はいないだろう。
詰まった息を喉から吐き出すとやはり受け入れがたい言葉にどういう意味と聞き返す。
「そのままの意味ですけど」
私の知ってるカカシさんは読み取れない様な人物じゃなかったはずですがと首をかしげるナマエ。
彼女はオレと違って冗談を言う子ではなかったが、こればかりは冗談であってほしい。
オレは嘘が嫌いなナマエに嘘をついていることを望んだ。
「別れてください」
どうしてそんなことを言うの。
昨日までは抱きしめても「もう、人前ではやめてください」とか言いつつ笑ってくれたし、結婚しようとまで誓った仲じゃないか。
あれもこれも……みんな、みんな嘘だったのか?
聞きたいことはいっぱいあったが喉から絞り出すことが出来ずただ一つだけ「どうして」と震える声で尋ねた。


「耐えきれなくなったんですよ」
貴方が忍であることに。ナマエはオレの目を見て零す。
はたけカカシという忍は強く、里からの信頼も厚い。
重要任務を任されることもあるし、調略するため人質を取られることもあるだろう。その時狙われるのは一番近しい人間である。
だからこそ隣に立つ伴侶は相応しい人物でなければならない。美しく、強かで並んでも見劣りしない様な女性を選ぶべきだ。
「そんなの、オレが忍をやめれば……」

「忍でなくなったはたけカカシに、はたして……、価値はあるのでしょうか?」

火影様に向けた笑みを貼り付け玄関から押し出す。
しばらくドアを叩く音が聞こえたが、そのうちそれも聞こえなくなった。
戸に耳を当てたナマエは外の気配が無くなったことに安堵し靴の上に座り込んだ。
ただの一般人である彼女には優れた聴覚はなかったが、今も変わらず愛してる男の気配位は解っているつもりだ。


「カカシの重荷にならないでくれ」
火影様どうですか、これでカカシさんの為になったはずです。
ナマエは抱え込んだ膝に目元を当てると小さな染みを作った。




「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -