企画 | ナノ


▼ 3秒間の沈黙


最近、その辺を歩く男子高校生のように年相応の悪戯を仕掛けてくるようになった我愛羅君。
子供のころの悲惨な状態を知っているからこそ怒るに怒れない私がいるんだけど、たまには嘘をついても構わないと思う。
そんなことを思いながらも何かと忙しくて3月が終わってしまったのだ、まあエイプリルフールなら嘘をついても笑って済むだろう。
そんな安直な考えの元、行ったのがかぐや姫作戦であった。姫って柄じゃないけど。

ガシャンと瀬戸物を落とし破片が床に散らばる。
なんとなくこの時点で嫌な予感はしていたのだ。いや私としては昔から帰り方わかんないって公言しているしエイプリルフールだしで「こやつめ、ははは」で終わると思ってたんだよ。
「が、我愛羅君……、ここ来る?」
そう言って膝の上を示したがいつもなら飛びついてくる我愛羅君は頑なに嫌がった。
首を横に振り髪を乱しながら顔面蒼白といった感じで私を凝視する。

「い、いやだ……!」
乗ったら消えちゃうんでしょ…とどうしてそういう理論になったのかよくわからない彼の言葉に自身でダメージを受けたのかさらに目元まで潤ませた。
お、おう……この目に弱いんだよ私……。
嘘だ嘘だと連呼する我愛羅君にこっちも必死に首を縦に振るが聞いちゃいない。
あげくの果てには慟哭し、淡いグリーンがぼたぼたと瀬戸物の破片と床を濡らして膝を抱え座り込んでしまった。
流石に瀬戸物の破片の上は危ないので立たせて、自分が今さっきまで座っていたソファーへと誘導する。
「消えない、消えないから!冗談だから!」
カレンダーみて!今日エイプリルフール!と慌てて弁解を入れるも我愛羅君の涙が止まることはなく、さらにこちらを見向きもしない彼に変な依存の仕方をされているなぁと苦笑いして抱きしめた。
背中をリズム良く叩く私の耳に、震える唇から発せられた「ナマエはもう戻れないはずなのに」という不吉な言葉が入ってきたがスルーしておいた。

「二度とそんなこと言うな……」
「うん……、ごめんね」
30分ほど抱きしめて撫で繰り回してやれば、すん…と鼻を啜る音は聞こえるもののようやく洪水は止まったようで。
ティッシュ箱を私ゴミ箱を足で手繰り寄せてやればその中にポイポイ鼻を噛んだ紙を投げ入れていく。
子供の時以上にでかくなってしまった心残りにいつか帰らねばならない日を案じたのだった。




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