企画 | ナノ


▼ 昼の月


「ソォラァッ!」
久々に骨のある敵と遭遇し、長引きそうだと判断したデイダラがサソリに殿を頼み先を急ぐ。いつもなら我先にと獲物を追いかけるデイダラが本日とても冷静で大人しいのはおまけがついていたからに他ならない。
サソリの良く通る声が後方から響き渡り、フードをかぶったナマエの耳にも若干くぐもった状態で届いた。実に楽しそうな仲間の笑い声の後に続いた複数の悲鳴に、抱えられているナマエはうわぁと顔を引き攣らせる。
ちなみにこのフードは顔を見られないようにととっさに頭から被せられたデイダラの上着でありボタンを閉めているのだが、体格差からやはり余った部分が出てしまい、はためく生地がいちいち目に入ってウザったい…そんな代物である。
「デイダラ先輩、これ見えない」
「良いからお前はフード被ってろ、うん」
戦闘能力がないのに下手に目を付けられてビンゴブックに乗ったら角都にすぐに換金所まで連れてかれるからなと脅すデイダラに角都さんはそんなことしないしと否定しつつも大人しくいう事を聞いておく。一瞬だけやりかねないと疑ってしまったのは秘密なのである。

「…ッとそんな遊んでらんねぇらしいぜ、ナマエ。旦那が来るまで持ちこたえるぞ」
「まじですか…ぐえっ」
降ろされれば俵持ちされていたせいか普段から粘土を練っているためか割と逞しいデイダラの腕が余計に腹へと食い込み思わず口元を抑える。
変なところに入った……。腹の違和感を拭えず摩るナマエを横目で見、「来るぞ、援護しろよ」とデイダラがポーチを腰から外しこちらに投げる。
起爆粘土が入っている方は自分で持っているからこっちは普通の忍具だろう。予想は当たっていたようで、がさごそと中を漁り適当にクナイを二本護身用にと取り出すと「整列!」と号令をかける。
他人には小さすぎて見えないが、私にだけは見える彼らがさっと目の前に整列する。良くできた子たちだ、まあ今から食事できるからだろうけど……。

「あいつらは食べていいよ、先輩が爆破するらしいから下半身を中心に狙って足止めを頼むね」
角都さんから命令されていないイレギュラーな敵だから構わんだろう。手加減しなくても良いと許可し、4つの連隊を飛び込んできた奴らの足元へと向かわせた。
忍はどうしてつま先の空いた草履を履いてしまうのだろうか、隙だらけだと内心ほくそ笑み、足元から力が抜けて立っていられなくなった敵から次の奴等へと字面を這わせ逃げさせる。
「先輩ッ」
「っしゃナマエ良くやった!」
一瞬で足のチャクラを喰いつくされた奴らがデイダラの起爆粘土に巻き込まれ肉片を飛び散らせる。
超感知タイプや同じような使い手がいてばれたらなす術もないが、それ以外なら毎日小動物を勝手に狩って貪るうちの特殊なバクテリアたちの方が機動力は上である。
まあ私自身は一般人並の動きしかできないんだけど。頭上に飛んできた無数の肉片に引き攣った顔を整えることもせずに思考を巡らす。
少し前の戦闘で、サソリがばらした死体の血を盛大に浴びその地生臭さが風呂入っても消えずに吐き気で一週間寝込んでいたのだ。
ようやく復帰して角都さんのお手伝いとして賞金首稼ぎに出てきたけどまたか!またこれか!またなのかちくしょうデイダラ先輩あんまりだよ!

スローモーションに見える紅い雨の中、唯一出来そうなことは走馬灯を流す頭を下げて顔に引っ付かなくする程度なのでしゃがみこみ避けようとする私にようやく追いついたサソリが前に立ちかばってくれた。
「おいお前もう少し爆発後のブツの軌道変えらんねぇのか!綺麗に消し飛ばせよ!この前みたいにひきこもりかねないぞコイツ」
「無茶言うなよ!しかもあの時は旦那が悪いだろ、うん!」
無駄に数だけ多い敵をなぎ倒しつつ口論を始めた二人の後ろで頭を抱える私の耳に先輩の「旦那の中に入れとけばいいだろ」という声が入ってきた。
眉を顰め呆けるナマエとは対照的に先輩に「名案」と返し、こっそり背中側の外套下から手を出してきたサソリがナマエの腕を引っ張ってヒルコの中に引きずり込んだ。
膝の上に対面しまたがることになったナマエが狭いだのこれやだだのと叫ぶもサソリは始終密着しているナマエからは見れない顔面をニヤつかせていた。





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