企画 | ナノ


▼ バルコニーから見た星空


「ナマエさん、また居なくなるんですか?」
碗に盛られた三杯目の白米を頬張るナマエさんにオレは頬杖をつきながら見とれていた。
綺麗な白髪を揺らし、何の話だと茶碗から顔をあげる。頬についているご飯粒が憎い。何であいつナマエさんの頬に触れてんの?そこ俺の席だよね?ふざけんなよ米粒の分際でナマエさんに愛されてんじゃないよ。
食い物に理不尽すぎる怒りを抱いているオレの気も知らずナマエさんは「任務ですから」と答える。
アンコから聞いたがナマエさんは諜報が得意なようで木の葉に滞在している方が少ないという。まあオレが知らないんだからそうなんだろう。7班を受け持ってから木の葉から長期任務に出ることはなくなったし。
淡々と答えまるで甘味を頬張る女のように顔をほころばせるナマエさんに口布を避け湯呑みを傾けた。
ナマエさんの中ではどの人間も一緒のラインにいるのだろう。特出している男が居ないことは喜ばしいが、多数の中に自分も入れられているのだと思えば気分も落ちる。

「次は何ヶ月ですか」
高台で木製のテーブルに小さく音を響かせたオレはいつもの女将さんにお代わりを要求するナマエさんの顔を見た。
きょとんと呆けるナマエさんが懐から巻物を取り出しくるくるとそれを紐解きこちらへと向ける。
「んー、二年ですね」
「に、二年……ッ!」
つらすぎ。耐えられない。まだ俺達出会って半年もたってないのに……。思わずテーブルに突っ伏したオレにナマエさんが首をかしげる。
ただでさえ諜報とか危険な任務なのに火影様ホント何やってんのナマエさん行かせちゃダメでしょ!最悪の場合火影暗殺からの里抜けするけど大丈夫?帰ってこれる方に確固たる自信があるの?
頭を抱えて理性と感情を戦わせている俺になんて用はないとばかりに再びおかずの火の国産高級米とイチャイチャするナマエさんを盗み見する。あの米なくなるまで精米器にかけて削ってやりたいなにナマエさんの口で咀嚼されてんの絶対に許さないからネ。
白い前髪の間から透けて見える長い睫毛もまた光り、ただの電球で照らされているはずなのにその辺の女と比べちゃいけない程の美しさを奏でているナマエさんが、大きな口を開けてその血肉へとするためにみずみずしい米を取り込んでいる様はギャップでとんでもなく風光明媚な光景が広がっている。
つらい…、何がつらいって?ナマエさんが美しすぎてつらいの。向かい合う俺達をガイが見たら肩を叩いて青春してるな!だなんて言われるに違いない。一瞬出てきた濃い顔を掻き消し目の前の彼女だけを視界にいれた。
今日何回辛いって言ったかわからないけど本当につらいから、多分坊さんより修行してるよオレ。本能を抑える修行まじでつらい。
普段のアスマは紅に対してこんなに頑張ってるって言うの?あの顔で?熊だよ熊。まじかよアスマ、オレちょっとお前の事尊敬するわ。
同期の人間たちに失礼なことを脳内でひとり呟き続けるカカシに依頼書の写しをくるくると巻き、懐へ戻したナマエさんが食べ終わったらしく茶を啜って一息つくと、まあこれでも…とナマエさんは切り出した。
「プロですから諜報も無事済ませて帰ってきますよ」
ナマエさんの力量を疑ってるのだと思われたらしくウインクして自身をフォローするナマエさんに陥落しそうな理性が援軍を要請している。
ぶるぶると震えるオレにまさかの彼女から援軍が贈られたのだった。

「帰ってきたら一緒に美味しいお米食べに行きましょう、カカシさん」
むふむふと自宅で一人依頼人の大名から貰った大吟醸を味わうオレは二年前のナマエさんの言葉を反芻しては口布程度では隠しきれない笑みを浮かべた。
もうすぐナマエさんが帰ってくる、デートする日も今夜の様に晴れていたらいいとアカデミー生のような感想を浮かべてしまった。




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