企画 | ナノ


▼ パペット


怯えるナマエが好きだった。
見つめるその綺麗な瞳をオレの為に懇願し潤ませる。オレの為に口を開き、オレだけに向けて言葉を発する。

ねえやめて、震えた声が鼓膜に届いた。やめるわけないだろうオレは貴方のその顔が好きなんだ。
ぐずりぐずり……熟しすぎて腐り黒くなった桃のように風味を損なった愛がナマエの全身に注がれ重くのしかかっている。
垂れた果汁をナマエのぷっくりとした唇に親指の腹で塗りたくり黒い口紅代わりにする。ああ、ああやはり見込んだ通り。綺麗だナマエ。
口に入れられたオレの愛のえぐみや腐臭を零し吐きだしたナマエは自分で何もできない様な赤子のようにぐずりだす。
オレの心も視覚化出来ていればきっと同じような顔をしていると思う。何せずっと昔から同じ音をしている。

どうして飲んでくれないのか、今度は口移しでナマエの口へと運ぶ。ナマエ、見てくれお揃いだ。貴方と一緒の味を楽しんでいる。
黒く腐って口の端から滴るそれを指の腹で拭い舐める。酷く不味い、舌が痺れてきた。一生忘れられなそうな味にうっすら笑みを浮かべた。
ナマエは今後もずっとこの味を思い出しては吐くのだろう。思い出すたびオレの事も一緒に脳裏に浮かべるのだろう。
実に愉快だ。再び砂で拘束されて動けないナマエの口にオレの愛を注ぐ。ねっとりと絡みつく舌がナマエの味蕾にこびりつけていった。

「我愛羅君なんて嫌いだ」
瞼を腫らせながらぽつりと零したナマエに黒く糸を引く口を離す。
酷く不細工な良い顔をしている。ゾクゾクと背中に微弱な電流が流れ我愛羅はその顔を歪ませ笑った。
恍惚とした表情を向けナマエを彩る服を丁寧に外し素肌に手を這わせる。
「オレは愛してる」
怯えたような顔は死に、愛しい彼女は人形となったのだ。




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