Irene | ナノ


▼ 6



「残念じゃったな、ペインとやら」
大蛇丸が抜けその後釜としてあの化け蜘蛛が人の形を取りリーダーの前に現れた時はどうしようかと思ったが、案外すんなり手合わせまで出来て半目を見開いてしまった。
サソリのスパイをしていたのだと、リーダーが全員把握できていないのを知ってか知らずか唱え腕に絡みつきじゃれてきた知朱を手で追い払う。
「お主……いやなんでもない、まあ生きている年数がそもそも違うからの」
観察しているうちに奇妙な事でも気付いたのか一瞬形の良い眉を寄せたが人のいる手前、自分と同じ人でない物の臭いがすると口にするのをやめた知朱は、若いのは無茶をしたら良いとサソリの元に戻りねっとりと絡みついた手で口元を抑え上品に笑った。

そんな様子を見て今まで黙って傍観していた古株達だったが、こうもあっけなくリーダーが倒されたのが納得いかないと言う建前で、普段の不平不満鬱憤を晴らす為に手合せを申し込む。
オレがうちの部下にムリさせんなと話を合わせながら止めに入ってやったのに「順番で良いなら一人ずつ来るが良い」と上から目線で告げた絡新婦へ嬉々として鮫肌を取り出して向かっていった鬼鮫も数分のうちにあっけなく膝をつくことになった。
いよいよ雲行きが怪しくなってきた。普段のオレからは考えられないほど生ぬるい思考回路で間に割って入るも先ほどまでべたべたと引っ付いていたその女は爛々と楽しげに輝かせたその目で邪魔するでないと胸を軽く押してきた。

まさか……この蜘蛛に全員負けるとは思わなかった。と、サソリは褒めろ撫でろと頭を擦り付けてくる女の我が儘を無意識のうちに聞いてやりながらぶっきらぼうにぼやく。
何せ自分が気まぐれに拾った時はこの女……いやこの絡新婦は瀕死の重傷だったのだ。自分が一度は敗した奴らに余裕で勝てるなどとは思うまい。
生きては居るが死んでいる様なものじゃからな、重力なんぞ効かぬしもっとぶっちゃければ自分次第で幽霊のように壁をすり抜けられる様にもなるとのたまう知朱には流石に先に言えと頭を抱えた。
もはや妖怪ではなく幽霊の類なんじゃなかろうか、コイツは。
……どうやら思っていたより自分はこの化け蜘蛛の心配をしていたらしい。自分にだけ懐くこいつにいつの間にか絆されていたようだ。

自分も人の子かと若干ショックを受けているサソリを傍目に、部屋を与えてやると言われた癖にそれを断りわざわざオレの部屋に奴曰く“愛の巣”をつくり出したのではたきで取っ払うと「あの時は油断をしていたのじゃ」と文句を交えつつ答えた。
「おかげでお主みたいな面白いものに出会えたから良い、良い。人生長生きするもんだ。まあ子種がないのは今でも不満じゃが……」
「オレは部屋は占拠されるわうるさいわで不満だらけだ」
「お主が困っておった死体に集る蟲の駆除が出来るのは良い事じゃろう?糸も出せる」
ぐぬぬと口を閉じざるを得なかったサソリに、からからと喉を鳴らし存分に頼るが良いと不敵に笑った。


/



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -