Irene | ナノ


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「なんてことだ…子種がもらえぬではないか……」
目元を手で覆い隠した知朱はよよよとその場に崩れ去った。まさか性欲すら湧かないとは思わなかったぞ……。
自身より小さいサソリの全面を舐めるように見つめ、再び顔を覆った。
「強い男の種を貰い子をなすのが女の定めではないか」
「時代錯誤も甚だしいぞ化け蜘蛛…」
「知朱だというておろうに!」
えぐえぐとついてきた意味がないではないかとべそをかく真似をする知朱にはぁぁあああと一つ大きなため息をつくとサソリはめんどくせぇと一刀両断した。
部屋から出て行こうとするサソリにハッとし顔をあげ、どこへ行くのじゃと慌てる知朱に任務だと苛つくサソリは音を立てドアを閉めたのだった。

「まあ鍵かけられても通れるからのう」
ケラケラと昔馴染みだったコムシのような笑い方をして肩に乗る小さくサイズを変えている知朱にヒルコに入ったサソリは二度目の大きなため息をついた。
狭いヒルコの中に一人煩いヤツがいるだけでストレスで胃潰瘍になりそうだ、胃なんてないけど。
舌打ちをして相方の大蛇丸を待つサソリに頬杖をつき楽しそうに笑う知朱。
どんな奴なのじゃ、ゆらゆらと四肢を揺らし退屈しのぎになりそうな話題を探す知朱に蛇と一言答え黙った。
「あらサソリ、ペットを飼う事にしたの?趣味悪いわね」
「蛇だ蛇、サソリの言ったまんまじゃった!」
興奮する知朱が肩の上でぴょんと跳ねたが、趣味が悪いの言葉に苛ついたのはどうしてか。その通りだとわかっているのに。
ヒルコの顔を大蛇丸に向け黙れと地の底から聞こえるような掠れた声で唸った。

「ペットでも我は良かったのじゃが?」
「煩ぇお前なんてゴミだゴミ、糸くず」
「はは、ぬかしおる」
相変わらずサソリは面白いのう、そういうところ気に入ってるぞ。
ぐりぐりと後ろ足を動かし肩を抉るように回され、痛覚のない筈のサソリは顔をしかめた。
後ろをついてくる大蛇丸に興味を持たれたのに気付きつつも、スパイから情報を仕入れたのだった。


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