『ブンちゃん聞いて、あのね、俺とやーぎゅ、付き合って3ヶ月になるじゃろ。だからそろそろいいかな、柳生さんいいかなち思って手、手を握ってみたんじゃよ!したらやーぎゅ、最初手ェ冷たかったんじゃが、あっという間にとキューと熱くなってな、それ言うたらそれは仁王くんの温度が伝染ったんですよ、だって仁王くんの顔真っ赤ですもの、ち言うて柳生の顔も赤くなってな、俺が柳生に伝わったんじゃな、繋がったんじゃなって幸せな気持ちになったんじゃ。そうなるとな、もっと柳生と繋がりたくて触れたくて、あの、キス、キスしたいって思ったんじゃ。じゃけど、どうすればいいのか判らんの。やり方判らんちいう意味じゃないぜよ?女の子らとはキスどころかそれ以上のことだってしとるし、キスだけで柳生の腰を砕く自信はあるぜよ。あ、誤解するんじゃなかよ、今は全員別れました柳生さんオンリーです!ちゅうか柳生知った今浮気なんて無理。柳生としかそんな気持ちになれんのじゃ。じゃけどな、あの、あまりに上手いとな、今まで何人の方と接吻してきたのでしょうち嫌な気持ちにさせるんじゃなかかと。そんなこと考えるとな、俺、柳生にキスしていいんか?ち気持ちになるんじゃ。だって柳生さん、ほんに綺麗じゃろ?だけど俺は汚れ捲っとる。俺が触れることで柳生が穢れる気がしてくるんじゃ。でも、俺、好いとうの。柳生さんを好いとうの。他の誰でも駄目なの、柳生とキスしたいの。どうしようブンちゃん、俺、どうしよう』


と先日あのばかは延々と語った。惚気か死ねとその時は軽く流したのだが、どうやらマジな悩みだったらしい。



今、奴と件の彼女(おとこだけど)が一つのベンチの上に、丸で合わせ鏡のように向かい合って正座している。仁王の両手が比呂士の顔を引き寄せ、唇と唇が触れる一歩手前でええともう何分「十分と七秒だ」げ!そんなに経ってたのかよ、つーか人のモノローグにぬるりと入り込むな怖ェだろ柳!!で、お互い耳まで真っ赤にして目を見開いて、おいキスする時は目を閉じろよ、じゃなくてそこ部室だから!みんな授業が終わってさあ部活だ頑張るぞと集まる放課後の部室だから!!TPO考えろばか!

「…俺、声かけてくるわ」

ジャッカルが暗い顔をしてドアノブに手をかけようとした、が。

「赤也、ゴー!」
「イエッサー!!」

悪魔と悪魔使いがそれを阻んだ。

「ちょ!お前ら何で止めるんだよ!幸村や真田に見つかったらヤバいだろ!!」
「問題ない。これは仁王の筋力のデータを取っているのだ。見ろ、そろそろ両腕がぷるぷる……」
「適当な事言うな!面白がってるだけだろ柳!!」

ああ、全く。手のかかる奴だぜぃ。

「ブン太!?」

俺は部室のドアを蹴破った。振り向く間は与えないぜ――そのまま仁王の後頭部に蹴りを入れた。

「「!!」」
ガチッと歯と歯の当たる音と共に二人はベンチから転がり落ちた。
「俺って天才的ぃ?」
「〜〜〜何さらすんじゃ、デブン太!!」
「何だよ、手伝ってやったんだろぃ?ファーストキス」
「!」

見る見るうちに仁王の顔が真っ青になっていく。

「な、なんて事してくれたんじゃ!柳生との最初の思い出が歯と歯のぶつけ合いとかあり得んじゃろ!!最悪じゃ!スマン、やーぎゅ……」

と仁王は下敷きになった比呂士の顔を見――固まった。

ホント、何度も言うようだけど、仁王はばかだ。

「仁王、くん……」

自己完結して勝手に悩んで、

「あの、私、嬉しいです。仁王くんと…出来て。なのに最悪とか……」
「へっ!?あっ……いや、そういう意味じゃのうて、あの、」
「仁王くんのばか――!!」
「ま、待ちんしゃいやーぎゅ!!!」



あのなあ、お前の大好きな柳生さんもお前が大好きだってこと忘れるなよな!








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