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いつか、まどろみの朝を

お休みの日なのにいつもより早く起きてしまったのは、今日の予定が楽しみすぎたから。約束の時間までかなりあるにもかかわらず、張り切って準備をして足早に家を出た。
青い青い空が気持ちよくて鼻歌交じりに歩く私は、きっと誰が見ても浮かれてる人に見えるだろうな。

待ち合わせ場所ではなく、彼の家へと向かい、合鍵で勝手に侵入する。彼の事だからきっと朝からシャワーを浴びているか、にがーいブラックコーヒーでも嗜んでいるだろうと思っていたが、想像に反して部屋の中は暗く静まり返っていた。


「あれ?まさか寝坊??」


自分は楽しみすぎて朝早くから起きたというのに。そう思ったが、彼は日頃から無茶をしてお疲れ気味だし、たまの寝坊くらいいいか。
それよりも滅多に見られない寝顔でも拝見しようと、こっそりと寝室へと向かう。いつもお泊りをしても私より後に寝て、私より先に起きてしまう彼の寝顔を見れるなんて貴重だ。
音を立てない様にゆっくりと扉を開ければ、真ん中に置かれたベットにこんもりと山ができていた。だが残念なことに布団から頭がでておらず、肝心の寝顔を拝むことは出来なさそうだ。

ならば


「秀さーーん!!おはよーー!!」


そう言いながらベッドへと飛び乗り、彼の上へと馬乗りになる。秀さんは鍛えているからやっても潰れないだろうし。
思った通り、秀さんはうめき声をあげる事も無く、ゆっくりと布団から顔を出した。


「・・・朝から過激だな」
「ふふ、秀さんがお寝坊さんなのが珍しかったからついね」


起きた?って顔を覗けば、寝起きのくせに全く乱れていない、いつもどおりの顔がそこにあった。
もう少しボケボケしてくれてていいのにな、なんて思うけど。どうせ秀さんは私が家に入った時から起きていたんだろうな。人の気配で起きてしまうって前に言ってたし。


「それで?朝早くからどうかしたか?」
「もー!秀さん忘れちゃったの?!今日はお出かけする日でしょ?」


楽しみにしてたのに!そう頬を膨れさせてみたら、少し考えた後、枕元に置いてあるスマホを確認し、私へと画面を向けた。


「・・・約束は明日のはずだが?」
「え・・・・??」


映し出された秀さんとの日程のやり取りを改めて読み返し、自分のスマホに表示された日時と照らし合わせる。
自分のスマホには、確かに予定していた日にちより一日少ない数字が映し出されていた。


「・・・・えへ、間違えちゃった」


待ち遠しすぎて今日の日にちを間違えてるとは思わなかった。失敗、失敗。
ごめんなさいと謝れば、怒らずに「別にかまわないが」と許してくれるから、直ぐ調子に乗ってしまうのかな。
たしか秀さんが昨夜遅くまでお仕事でお疲れだろうから明日にしよう!って話をしたはずなのに。秀さんと会える日が増えた、なんて喜んでしまう。


「ねぇねぇ秀さん、今日も一緒にいていい??まったりデートでいいから」
「あぁ、構わない。・・・が、そろそろどいてくれないか?」


これではどこにも行けないぞ?と軽く頬を緩める秀さんに自分が秀さんの上に乗ったままだという事を思い出した。
布団越しだったし、あまりに安定感が良くて忘れていた。


「なんなら、このままで出来ることをしてもいいが」


そう言って更に楽し気に弧を描いた唇の意味がわからず、首を傾げた。このままで出来る事とは?そう聞こうと思った矢先、秀さんの手が腰へ伸ばされ、ゆっくりと下に向かって撫でていくおかげで聞かなくても何を意味したのか分かってしまった。
理解するなり熱くなる顔を隠す間もなく飛び降りようとしたが、その前に秀さんに腕を引かれ、反動でボフッと音を立てながら布団へと倒れ込んだ。
お互いの体の間に掛布団があるせいで、私が触れるのは秀さんの顔くらいしかないのに、秀さんは容赦なく私の体を撫でまわしていく。


「やぁ、、秀さ、ん」
「誘ったのはお前だぞ?止めるわけないだろ」
「んっ、違う・・・私もお布団にいれて欲しい、だけだもん」


もっとくっ付きたい。そう伝えれば、そっちかと笑いながら布団をめくってくれた秀さんに勢いよく抱き着いた。
さっきまで感じられなかった秀さんの体温が心地よくて、全身ですり寄る。


「煽るのが上手くなったな」
「ふふん、秀さんの彼女してますから」


ふざけ合いながらも互いに撫でる手が段々と色を含んでいく。眼を合わせれば吸い寄せられるように互いの唇が重なり合い、熱を伝えあう。
そうなってしまえば朝だろうが止まるわけもなく、オシャレに着飾った服も早々に剥ぎ取られ、互いを求めあった。





「おはよう。体は大丈夫か?」


ふわりと漂うコーヒーの香りに目を覚ませば、上半身裸のままの秀さんがコーヒーを入れた所だった。
そうか、あの後そのまま寝てしまったのか。
久しぶりの逢瀬なのだから、あんなことやそんなことも久しぶりなわけで。お疲れのはずの秀さんもいつも以上に激しかった気がする。うん。思い出したら恥ずかしくなってくるけど。


「また秀さんの寝顔見れなかった―」
「あまいな。俺の寝顔は安くないぞ」
「え〜いくらで見せてくれますかー」


私ばっかりズルいと抗議したところで、じゃあ早く起きろよって話なのかもしれないけど。
お疲れであんなに動いた後なのに私より元気な秀さんに勝てる日は来るのだろうか。それこそ、一緒に住んだりしたら見れるのかな、なんて思ったそんな時だった。


「そうだな。山崎茜を俺に売ってくれたらだな」
「・・???え、どういうこと??」


私を秀さんに売る??もう私は秀さんのモノだと思ってましたけど。
寝起きの頭をフル回転させてもまったく理解できない回答に唸っていたら、わからない事も想定内だったのかいつの間にかコーヒーを置いた秀さんがベッド脇に腰を掛けた。
まだ先程の余韻が残るベッドで、上半身裸の秀さんが微笑みながら私の頭に手を置く。それだけでじんわりと体が熱くなる。


「近いうちにお前の山崎は俺が貰うからな」
「・・うん?秀さんにあげられる??」
「あぁ、貰う。そのかわりお前に赤井をやろう」


どういうことか流石に分かるだろ。そう言ってグシャグシャと私の頭を乱してから立ち去る秀さんの背中をしばらく口を開けたまま見つめてしまった。
さすがに苗字を交換しようねーなんてアホみたいなノリじゃないことくらいわかる。
苗字を貰うってことはつまり、そういう事で。


「ちょっ、!?え、秀さん!!いつ!?」


既に飲みかけのコーヒーを持ってリビングに向かった秀さんを慌てて追いかける。
そのうちな、なんてこっちも見ないで優雅にコーヒーに口付ける秀さんが通常運転すぎてにわかに信じがたいけど、秀さんがそんな厄介な嘘をつくはずはない。

そのうち、がいつなのかはわからないけど。
近いうちに秀さんの寝顔を毎日拝める日が来るのかと思うと居てもたってもいられず、コーヒーを飲む秀さんに体当たりする勢いで抱き着いた。


「秀さん!!好き!大好き!!」
「あぁ、俺も好きだ。だから離れろ」




赤井さんすき、赤井さん楽しい!阿保っぽい夢主も愛おしい!!
もうこれが赤井さんですか?って言われても仕方がないけど、私は書いてて楽しかったです。
ごくわずかの人だけでも楽しんで頂けたら本望です!!

きっとこれは何もかも事がすんだ後の穏やかな日常ですね!そうじゃなきゃ無理だけど。
write by 朋



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