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たくさんの紙袋を持った女の子達であふれかえる2月14日。
私も例外なくたくさんの荷物を持って教室へと足を踏み入れる。自分の席までの間、友人と挨拶を交わしながら紙袋の中身をどんどん渡していくが、同じ数だけもらうので一向に減る気配はない。
朝からキャッキャとした女子たちのやり取りを男子は一体どんな気持ちで見ているのだろうか。うるせーとか言いながらも、もしかしたら・・なんて期待していたりするのかな。
ちらりと確認した隣りの席は空いたまま。この時間なら朝練を終えて教室へ向かう途中かな、っと彼の席越しに窓の外を確認すれば、彼と同じ部活の先輩たちがたくさんの女子に囲まれている姿が目に入った。彼らの人気はもちろん知っているし、中でもオイカワさんって人が凄いとも聞いたことがある・・・が。


「うわぁ・・・あれ間に合うのかな」
「ねぇそれ独り言?」


窓の外の異様な光景に無意識に出た声だっただけに、まさか聞いてる人がいるなんて思わずビクッとあからさまに驚いてしまった。


「く、国見?!居たんだ」
「・・・何?自分の席に向かって話しかけられて驚くの俺の方なんだけど」


独り言にしてはでかくない?と気怠そうに席につくのは部活で疲れているから、それとも私に呆れているのか。カバンを片付けたあと、私の視線を確認するように窓の外のを見た国見は、女の子達を引き連れて移動する先輩達をも哀れみの目で見下ろしていた。


「あれ見たら思わず声出ちゃうでしょ」
「別に。想像ついてたし」


だから早めに逃げて来たんだけど、なんて言って窓から視線を外し頬杖をつく国見は、そういえば鞄以外の荷物を持っている様には見受けられなかった。


「先輩たちは沢山もらえるのに国見はもらえないんだ」


おこぼれとかもないの?なんて余計なことを聞けば、それなりにおまけは貰ったが部室に置いてきたと言われ、ズキっと胸が痛んだ。きっと口ぶりから義理ばかりなのだろうが、国見に渡そうと思った子たちがいることに内心焦る。
確かに国見は見た目キレイ系だし、クールビューティと言われているのも聞いたことがある。
だが実際には口は悪いし、仲間以外の人への興味も薄いし、不愛想。
きっとチョコをあげた子たちは本当の国見を知らないんだな、なんて自分に言い聞かせるように心で悪態をついているが、じゃあ友チョコとは違う気合の入ったラッピングは誰にあげる為に持って来たんだと言われてしまえば何も言えなくなるんだけど。
事前に国見が甘い物好きな事まで調査して、間違えて渡さない様にそれだけ鞄の方に入れて。今日の為に気合入れましたと言っているようなものだ。


「沢山もらえるといいね」
「別に・・・まぁ、あって困らないけど」
「嬉しいくせに〜。帰りまでにあまり貰えてないようならしょうがないから私からもあげよう」


本当はもう誰からもチョコを受け取ってほしくないくせに、本心とは違う言葉ばかりが口から滑り落ちる。
チョコだっていま渡してしまえばよかったはずなのに。素直になれないこの性格を悔やんではいるが改善できないでいる私は、いつも大切なタイミングを逃す。
かなり上からの発言にしまったと思っている内に、国見は「ハイハイ」と流す様に私の会話を終了させてしまった。

いつもそうだ。
好きな子ほど虐める小学生男子かと思うほど、好きな人ほど素直になれない。

好きです、付き合って下さい

そう伝えたいはずなのに、その言葉をいう雰囲気もタイミングもすべて自分自身で壊しているようなものだ。
もう一度国見を盗み見てみるが、自分の世界に入ってしまっているのか彼と目が合う事はないまま。結局、その日一日可愛くない態度のままで過ごしてしまい、鞄のから出されることのなかったチョコを抱えて部活へと向かう国見の後姿を見送ってしまった。

本当、何やってるんだろう。
自分の意気地のなさにへこたれそうになりながら抱きしめた鞄から甘い匂いが漂う。
その時、別のクラスの子が勢いよく入ってきて「オッケー貰えたー!!嬉しい〜〜思い切って渡して良かった〜」と叫びながら友人へと抱き着いた。その顔は本当に嬉しそうで幸せそうで、素直にいいなっと羨んでしまった。


「おめでとう!だから渡さないと後悔するって言ったでしょ!」


抱きしめ返した友人の子が、姉の様にその子を撫でながら言った台詞が私の胸へと突き刺さる。
渡さないと後悔するよ
確かにその通りだ。恥ずかしいとかタイミングをのがしたとか、そんな言い訳ばかりして。結局は勇気が無いだけなのに状況のせいにしている自分が恥ずかしい。
そう思ったときには足が動いていた。
駆けだした足は真っ直ぐ男子バレー部の部室へと向い、校舎を出た所で彼の後姿を視界に入れた。


「あ・・・国見!」


何も考えずに叫んで呼び止めれば、サラリとした髪をなびかせながら国見が振り返る。その姿だけで何故かドクンと大きく音を立てる心臓が、また可愛げのない私を呼び戻す。


「えっと、、あれからチョコ貰えた?少ないんじゃないの?」
「・・はぁ。別にどうでもいい。義理チョコが欲しいわけじゃないし」


わざわざ呼び止めてその確認?と眉を寄せる国見に、近寄ろうとしていた足が止まった。
違うの、そうじゃなくて。そんなことが言いたかったわけじゃないのに、また「好き」の二文字がのどに詰まる。
完全に意気消沈してしまい、「だよね、ゴメン」なんて渡すはずのチョコが入っている鞄に視線を落としながら言った言葉は国見まで届いただろうか。


「呼び止めてごめん!部活頑張れ」


じわりと熱くなる目頭を必死に我慢して、強張りながらも笑顔を繕ってあげた顔は、国見があまりにも近いところまで来ていたことに驚き一瞬にして崩れる。
感情の移行が激しすぎて付いていけない顔はきっと酷いものだったのだろう。


「っで、いつになったらそれ俺にくれるの?」


フッと笑った国見が、皆からのチョコが入っている紙袋ではなく、本命チョコの入ったカバンを指さしながらそんなことを言うから、本気で息が止まった。
なんで。どうして。
考えても考えても理解しがたい国見の行動に、咄嗟に出てくるのはやはり天邪鬼の私。


「なんでコッチの知ってるの・・?ってか国見、チョコ欲しいわけじゃないって言ったじゃん」
「お前からの義理チョコはいらない。けど、それ義理じゃないんだろ?」


ドクドクと煩い心臓で周りの音がかき消されていく。国見が言っている意味を半分も理解できていないまま、取り出せと言わんばかりに視線を向けられ鞄を開けた。明らかに友達にあげていた物とは違う可愛らしいラッピングがほどこされた生チョコを取り出す。見た目だけじゃなく、生チョコの中に彼が好きだと聞いた塩キャラメルを入れている特別仕様だ。
これはカバンから出していないはずなのになんで。その疑問は全て顔に出ていたのか「バレてないと思ってたんだ」なんて言いながら鞄開ける度に見えてたけどと言われ、一気に顔が熱くなる。


「べ、別にコレが国見へのなんて言ってない」
「ふ〜ん。まぁいいや。俺は高宮の本命チョコ欲しかったけどね」


さっきから国見は何を言っているのだろうかなど考える暇もなく、「違うならいいわ」と言って私に背を向けた国見が、ためらいもなく立ち去ろうと足を進めた。


「ま、まって!ほんと・・なの?」
「お前はどうなの?」


顔色一つ変わらないように見える国見に振り回されてばかりいる気がするけど、からかっている様には見えない。
国見も私の事が‥なんて都合のいい期待のせいで上がった心拍数で手が震える。


「わっ、私は、国見がすき。・・です」


勢いよく噛んだし片言風な日本語になってしまったけど、ひねくれることなく伝える事が出来た好きの二文字。初めて口から出た「好き」という響きがやたらと大きく聞こえるのは自分の声以外があまり聞こえないからだろうか。
チョコを差し出した手はやっぱり震えていたけど、国見が私の手ごとチョコを包み込むように受け取るから、その後も震えていたかなんてわからなかった。


「ん、ありがと。俺も結構前から高宮が好き」


知らなかっただろうけどっと、不敵に笑う国見に驚いている間にチョコごと手を引かれ、ふわりと唇に温かいものが触れた。


「とりあえず部活終わったら電話するから。あ、チョコありがと」


今まで見た事ないような優しい顔は少し赤みがかっていて、またしてもトクンと心臓が反応する。
不意打ちばかりで放心する私のおでこを突いてから部活へと向かう国見を、「待ってる!」とだけ叫んで見送った後もしばらく動けずその場に座り込む。

国見が触れたおでこも、唇も、しばらく熱を持ったまま。
2月の寒空の下だという事も忘れ、込み上げる幸せを一人噛み締めた。

早く、早く部活が終わりますように




葵様、こんにちは!この度はリクエストありがとうございます。
沢山のキャラクターと沢山の設定を二度も送ってくださいましたが、おひとり様一作品とさせて頂いておりますのでこちらで勝手に抜粋させて頂きました。
全てにお答えする事は出来ず、ご希望のモノになっていない可能性はご了承ください。

素直になれない女の子設定だったので、あえて国見くんにさせて頂きましたがいかがだったでしょうか。
個人的にはとても楽しく書かせて頂きました!国見くんズルい!!私は告白は男にしてもらいたい派ですがバレンタインは別物ですね!!

管理人二人共マイペースにやらせて頂いておりますが、今後も色々なキャラを書いて行けたらと思っておりますので遊びに来て頂けると嬉しいです。
お体の気を付け、よいお年をお過ごしください。
write by 朋


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