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「はよ」
「おはよ〜大ちゃん」


まだ夜も明けきらない薄暗い道を二人並んで歩く。
澤村家とはご近所さんだからお互い朝練がある日は時間がかぶり、こうやって一緒に登校することも珍しくない。幼いころからよく一緒に居たから隣を歩くのが当たり前だった。

大ちゃんに彼女ができるまでは

お互い他愛もない話しをしながら歩く道はあっという間で、校門をくぐれば前まで当たり前だった光景は変わってしまう。
遠くから大ちゃんを呼ぶ可愛らしい声の彼女に手をあげて合図を送る大ちゃんの横をそっと離れた。


「ん?じゃあな高宮」
「・・・またね、澤村君」


私の頭にポンと手を乗せて去っていく大ちゃんを、呼び慣れない名を呼んで見送る。
彼女さんがいるのに大ちゃんなんて馴れ馴れしいし、きっと彼女さんが嫌がるから。そう言いだしたのは私の方なのに、澤村君と呼ぶたびに大ちゃんが遠くに行ってしまった気になって寂しく思う私は相当なワガママ。
頭に残る手の温もりも、本来私が受ける事のないモノのはずなのに。やめてと言えないのは、それを喜んでしまう私がいるから。


「・・・大ちゃん、好きだよ」


もうはるか遠くにいる大ちゃんに向かって、真隣にいても聞こえないくらいの小さな声で呟けば、すぐさま風が言の葉をかき消した。

私の中の気持ちもかき消してくれたらいいのに。
もう、ずっとずっと抱き続けている大ちゃんへの恋心。幼き日の初恋からずーっと大ちゃんしか好きになれない私は、大ちゃんに彼女が出来たにもかかわらずこの気持ちを切り替える事が出来ないでいる。
二人が一緒に居るのを見るのが苦しい。大ちゃんが今まで通り優しく接してくるのが辛い。なのに嬉しい。

いっそ会わない様にすればいいのかな。そう思うのに朝練へ行く時間を変えられない私は諦めが悪いんだろう。
学校までのわずかな時間だけでも、大ちゃんと呼んで、大ちゃんの隣を歩けるあの時間がいつまでも手放せないのだから。

だからいけなかったのだろう。


「高宮さん・・・ちょっと図々しくない?」


大ちゃんの彼女さんに話しがあると呼び出された時から嫌な予感はしていた。
お友達を引き連れ特別棟のトイレまで連れていかれるとか、漫画でありそうな展開なだけに何を言われるかなんて予想は付いていた。


「いくら幼馴染だからって澤村君にベタベタして。この子が可哀そうじゃない!」


ベタベタなんてしてない。そう言い返してやりたいけど、火に油を注いでも仕方がないし、多勢に無勢。
それに、私に少しもやましい気持ちが無かったかと言われれば嘘になるし、何より大ちゃんに迷惑がかかってもいけない。
大ちゃんの彼女さんは、私じゃないのだから。


「ごめん。澤村君には近寄らないようにするね」


これでいいんだ。本来なら恋人ができた時点でそうしなきゃいけなかったんだから、少しでも長く大ちゃんの隣に居られただけで感謝しなくちゃ。
そう思うのに。
彼女さんたちが居なくなった廊下で一人、零れ落ちる涙を止める事が出来ないでいる。
今更になってやっと失恋を実感したのかと、自分のおこがましさに失笑してしまう。


「は〜〜〜、彼氏作ろ」


今はそんな気ないけど、口に出さないときっと心がついてこないから。
大ちゃんよりいい男見つけて、幸せになって、いつか大ちゃんに自信をもって紹介してやろう。

そう意気込んでからひと月。
朝練の時間もずらし、廊下でも極力合わない様に大ちゃんを避けた。
友達と一緒になって他校の男の子と遊んだり、大ちゃん以外の男の人に目を向けるようにしてみたのに、いまだ心を動かしてくれる人には出会えず。
たまに遠めに見える大ちゃんと彼女さんの姿に苦しくなる胸の痛みを見て見ぬふりするしかできなくて、ついため息が漏れる。

いつまで続くのかな。
部活中とか何かに集中している時はいいけど、休み時間になると考えてしまってダメだ。
「ちょっと外の風でも辺りに行くよ!」と友人に強制連行されるくらい辛気臭い顔をしてしまってる。


「何があったか話したくなったらいつでも聞くからね」
「・・うん、ありがとう。その時は聞いて」
「了解。ま、私じゃなくても他に・・・ほら、澤村君とかに相談したら?幼馴染なんでしょ?丁度いるし」


え?っと指さす方を見た時には遅かったようで、自分の名前が出たからかしっかりこちらを向いていた大ちゃんとバッチリ目が合った。
今から逃げたらあからさま過ぎる。片手をあげながらこちらへやってくる大ちゃんの笑顔が辛い。


「高宮、なんだか久しぶり。お前と会わない日がこんなに続くの新鮮だな」
「そうだね。でもこれが普通なんだよ」


もう子供じゃないんだから。と何でもない事のように装うが、動揺はバレていないだろうか。
私が避けてるからね、なんて言うわけにもいかないし、一刻も早くここを立ち去りたいのに、隣で相談しなくていいのかと肘でつついてくる友人のおかげでそれも叶わず。
不審な私たちに大ちゃんもどうしたのかと話しを聞く体勢になってしまい、何かを言わなくてはいけない空気が漂う。


「・・・別に、恋人探しが上手くいってないだけだよ」
「え?恋人・・探してるのか?」


なんでソコに驚くのか知らないけど、なぜか納得いかない様に眉を寄せる大ちゃんにイラっとしてしまった。
私には恋人なんてできないとでも思ってるのかな?自分は彼女いるくせに。


「そうですー!だからだい・・澤村君に構ってる暇ないんですー」


行くよ、っと友人の手を引いて大ちゃんの顔を見ずに横を通り過ぎる。
流石にあからさまな態度だったから友人は色々感じ取ってくれたようで「今度合コンセッティングするわ」とだけいって、詳しくは追及してこない事に感謝した。
大ちゃんにも宣言したし、友人のおぜん立てもある。これで忘れられるはずなんだ。忘れなきゃダメなんだ。

そう決意しているのに、なんで。なんで朝、ココに居るの。


「・・・澤村君、朝練遅れるよ?」
「今日は朝練ないから大丈夫だ」


じゃあなんでこの時間に家の前に居るの?廊下で鉢合わせてしまったあの日以降も避け続けて、何とかして忘れようとしてるのに。
いつもの様な温かい雰囲気なんてなくて、ちょっと怖いくらいに真剣な表情の大ちゃんは久しぶりに見た。いや、ちゃんと大ちゃんと向き合ったのも久しぶりなんだ。
だからなのか鼓動が落ち着かない。


「なぁ、お前が俺を避けてるのはアイツが言ったから、だろ?すまん」
「っ!!な、なんのこと?私は自分が恋人探すのに男の影があったら困るってだけで・・別に…」


彼女さんは関係ない。そう言いたいのに、全て知っているかのような顔でみてくる大ちゃんのせいで言葉に詰まる。
なんでそのことを知っているのかなんて聞けるわけも無くて、視線をそらして押し黙るしかない私に、大ちゃんは更に衝撃的ことを言い放つ。


「アイツとは別れたよ」
「・・は!?え、なんで!?」


私のせい、なのだろうか。だから怒っているのだろうか。


「アイツに高宮と二度としゃべるなって言われて、気が付いたことがあってさ」


そんなこと言われたの??いや、私が悪い。私の態度が彼女さんを不安にさせてそんなことを言わせてしまったんだ。
大ちゃんの幸せを壊したかったわけじゃないのに、私の気持ちが溢れ出ているのを彼女さんは感じ取ってしまったのだろうか。


「ご、ごめん。私のせいで・・」
「お前のせいではないが、お前だからってのはあるな」


大ちゃんの言っている意味が分からず、逸らしていた視線を上げてその目を見つめる。
いつもなら揺るぎないはずの大ちゃんの瞳がなぜか揺らいでいて、こちらが戸惑ってしまった。これは大ちゃんが自信の無い時の瞳のはず。なんで今この目をしているのだろか。


「俺はさ、お前がいるのが当たり前だと思ってたんだ、ずっと。それこそアイツと付き合ってる時も」


隣にいるのが当たり前すぎて、それが当り前じゃなくなるなんて考えもしなかったんだよと、大ちゃんはバカだよなって小さく笑った。
でも私には笑えない。同じ事をずっと思っていたから。ずっと想い続けたからこそ辛かったのだから。


「ここ数か月避けられただけで結構しんどかったのに、それがずっとなんて耐えられないと思った」
「無理だよ・・。ずっと一緒に居るなんて不自然なんだよ」
「無理じゃない。俺とお前が‥「無理だよ!!男女で一緒に居るなんて無理なの!私たちはもう子供じゃないの!だから忘れようとしてるの!なのに、、なんで」・・・高宮」


なんでそんなこと言うの。
自然と溢れ出た涙は悔しいからか、哀しいからか。自分が何を叫んだかわからないまま泣きじゃくる私を、逞しい腕が包み込んだ。


「それでも俺は、お前と居たい。だから、俺と付き合ってくれ」


今まで受けることを許されなかった、触れてはだめだと思っていた温もりがじんわりと染み込んでくる。
あの子が好きだったんじゃないのかとか、今更なんでとか。聞きたい事も反論したい事も沢山あるのに何から言えばいいのかわからなくて、その背に恐る恐る腕を回して抱きしめ返した。

夢でも妄想でもない確かな感触が、これが現実なんだと教えてくれるようでゆっくりと実感が生まれていく。
それに加え、私の行為を返事と取っていいのかと聞く大ちゃんの声が不安げで、緊張も動揺も私だけじゃないんだと思ったら少し落ち着けた。


「うん。私はずっとずっと大ちゃんが好きだったから」
「気付くの遅くてすまん。俺も高宮がずっと好きだったみたいだ」


ホントだよ、なんて返したけどそんなこと気にしていなかった。
大ちゃんが私を好きだと言ってくれて、こうやって抱きしめてくれている。それだけで、今まで苦しかったのが嘘のように幸せな気持ちになれるのだから。


「・・・いかんな。離したくなくなる」
「うん、私も。でもそろそろ行かないと部活に遅れちゃう」


大ちゃんを避けるようになってから家を早めに出ているからまだ間に合うとは思うが、ずっとこうしている訳にもいかない。
行くか、と差し出された手を取り、また隣を歩ける幸せを噛み締め歩き出す。

こうやって二人で並んで歩く未来が、いつまでもいつまでも続きます様に。




神楽様、こんにちは!このたびはリクエストありがとうございました。
澤村さん夢でのリクエストでしたし、もしかしたら昨年の1周年の時にもリクエスト下さいました神楽坂様でしょうか?
ご一緒の方でしたら長く通い続けて下さいましてありがとうございますっ!管理人共々感無量です!
別の方でしたら大変失礼しました。当サイトへようこそ!澤村さん少なくてすみません。

澤村さんはリクエストが素敵だからかすごくプロットが湧いてきて書きたい欲が高いお話しでした!
ただ、どうしても長くなってしまって。まとまりのないお話になってしまい、自分の文才能力の無さが悔やまれます。
読みにくくなってしまいましたが楽しんでいただけましたでしょうか?

きっと澤村さんは彼女さんと別れた時に一発くらい殴られてます。そのくらい悪い事をした自覚はあるけど、それ以上に夢主ちゃんが好きだから貫き通すと決めたんだと思います。
だからもし今後、周りから批判されようとも甘んじて受け入れたうえで、夢主ちゃんを幸せにすると決めてます!
そこまで書きたかったですが、これ以上長くするわけにもいかず断念。妄想の中で終わりました。

今後もこんな暴走気味な妄想によるお話しが増えると思いますが、少しでも神楽様に楽しんでいただけるようなお話を書いていけたらいいなと思います。
リクエスト本当にありがとうございました。今後とも宜しくお願い致します。
write by 朋


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