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別にいつもと変わらない帰り道。
いつも忙しい彼氏と二人きりで帰れるこの時間は私の好きな時間だ。

だけど今日はちょっといつもの様には気持ちが上がらないでいた。

でも、その原因がわからない。
部活中に女の子たちからキャーキャー言われて、徹くんの人気ぶりを目の当たりにするなんて見慣れているし、徹くんと同学年だろうキレイなお姉さん方に鼻で笑われるのもよくある事。
徹くんの彼女になってから後ろ指さされるのも陰口を言われる事も多いけど、そのたび徹くんは周りを怒ってくれる。
年下の私では大人の魅力で勝てるわけないってわかっているし、徹くんは私を選んでくれたんだから自信を持たなくちゃ。

そう思っているのに、急に寂しさを感じる時があるのはなぜだろうか。

徹くんが冷たいわけでもないし、いつも通りの優しい笑顔をくれるのに。
なんらいつもと変わらないはずの日常で訪れるこの得体のしれない人恋しさで指先が冷えていくようで、徹くんの手を無意識に求めた。


「葵から繋ぐとか珍しいじゃん。何、どうしたの?」
「・・別に何でもないよ。ちょっと繋ぎたい気分だっただけ」


ふ〜ん、なんて言ってるけどきっと疑問を持っているだろう徹くんは、それでも深く聞いてこないで力強く手を握り返してくれる。
じわじわと伝わる熱に徹くんの優しさが混じっているようで、先程感じた指先の冷えは既に感じなくなっていた。
手を繋ぐ以外さっきと変わっていないはずなのに、なんだか違う道の様に見えてくる帰り道を、少しでも徹くんと居たくてゆっくりと歩く。


「ねぇ、ちょっとコンビニ寄っていい?」


岩泉さんたちとはよく行くみたいだが、二人の時には滅多によらないのに珍しいなと思いながら徹くんの顔を見上げれば、「腹減っちゃってさ〜」なんて笑ってみせるけど、この顔は何かを誤魔化している顔だ。
きっと徹くんの事だからいつもよりゆっくり歩く私に気付いて、少しでも一緒に居ようとしてくれてるのだろう。

徹くんって本当にズルい。
ズルいくらい優しくて、甘え下手の私を甘やかすんだから・・やっぱりズルい。


熱々の肉まんとミルクティーを買った徹くんが、当たり前のように私にミルクティーを差し出す。
コンビニの脇で包みを開けて食べだした徹くんにつられるように、私もプルタブを開けミルクティーに口を付けると、喉からお腹に広がっていく温かさにホッとため息が漏れた。
体が冷えていたから寂しいなんて感じたのだろうか、なんて思っていたらいつの間にか徹くんの手から肉まんが消えていた。
ペットボトルならまだしも、缶のミルクティーを持って歩いて制服を汚したら親になんて言われるか…。
まだ半分以上残っているミルクティーを急いで飲まなくちゃと口へ運ぶが、熱くて思う様に飲めるはずも無く、徹くんにもう少し待ってもらう様に謝る。


「ゆっくり飲みなよ」


そういって食べ終えたゴミを捨てに行った徹くんは、戻ってくるなり私の背後から抱き着く様に腕を回してきた。
優しく、でもしっかりと回された腕に急激に顔の温度が上昇するのが分かる。


「な、なに?」
「別に。俺がこうしたい気分だっただけ〜」


葵あったかいわ〜と話を逸らすけど、そんなのきっと取って付けた言い訳だ。
様子の可笑しい私に気付いていて、それでも理由を聞く事も無くこんな事されたら嬉しくないわけがない。
なんで徹くんは私が欲しいものがわかっちゃうんだろう。

手のひらから伝わる熱よりも温かい背中が体の内側まで温めていくようで、なぜか涙が出そうになった。
そのままの状態で取り留めのない話をする徹くんの声を耳元で聞きながら、ゆっくりとミルクティーを飲み込んだ。

いつまでこうしていただろうか。
最後の一口を飲み終える頃にはすっかり冷たくなっていたミルクティーが、この一時の終わりを告げる。


「まだこのままでいたけど、遅いし帰りますか」


そういった徹くんが私から離れた瞬間、冷たい空気が私を取り巻いたように感じた。
優しい温もりが離れて少し寂しいと思ってしまうが、いつまでもここにいるわけにもいかないし仕方がない。自分を奮い立たせ顔を上げると、徹くんの大きな手が差し出された。

やっぱりズルい人。

徹くんの熱を求めその手を掴むと、そのままグイッと勢いよく手を引かれ、考える間もなく唇を奪われる。
唇から伝わる熱はすぐに離れたけれど、腰に回された腕はそのままで顔に手を添えられ、しっかりと合わさる視線。
徹くんの手を熱く感じないくらい私の頬も熱を持っているようで、屋外でのキスにうろたえる私を少し怖いくらいの眼が見下ろしてくる。


「お前さぁ、そんな分かりやすく寂しいとか嬉しいって顔するのやめなよ」


徹くんはいったい何を言っていて、私はどんな顔をしているのだろうか。
コンビニのドアが開くたびに微かに聞こえていた店員の声も、誰かの話し声も、今は何も聞こえない。


「止まらなくなるだろ」


その言葉と共に、今度は深く重なった唇に全ての意識がもっていかれる。
何度も啄まれた後、いつもよりも熱く感じる徹くん舌が間を割って入ってきて、厭らしいほどに絡まり合う。
ゾクゾクと体を駆け巡る感覚が徹くんを求め、ココが何処かも忘れてそのキスに浸った。

もう、寂しいだの人恋しいだの、そんな感情が入る隙はなくなっていた。


「次の休み覚えておけよ」


苦しいほどに重ね続けた唇が離れ、ギラギラとした眼が突き刺さる。
徹くんの言葉が体に染み込んでいき、またゾクリと体が震えた。


「ほら行くよ」っと頭を撫でていった大きな手も、逞しい後姿も。
当たり前のように再びつながれた手も、歩幅を合わせてくれるその優しさも。
全てが私を夢中にさせるから。


「徹くん、好きだよ」


同じように徹くんにも夢中になって欲しくて、繋がれた腕に抱き着く様に寄り添った。

いつまでも徹くんの隣に居られますよに。




奏様、こんにちは。この度はリクエストありがとうございました。
こうやってリクエスト頂くと、やはり及川徹は人気あるんだな〜っと再実感します。

年下ヒロインをご希望でしたが、年下感はあまりなくなってしまったかもしれません。
あと、甘やかされるの認識が違っていたらすみません。ご期待に少しでも添えていたら良いのですが、違ったらまた詳しく拍手にでもリクエスト下さると嬉しいです。
及川さんなら普段から書きたいなって思うので、ネタがあると助かりますし。
それ以外でも気軽にご意見いただけると喜びます!(笑)

何度もサイトに来て下さって、楽しみにして頂いているなんて温かいメッセージもありがとうございました!
とても励みになります!これからも楽しんでいただけるような作品が書けるように頑張りますね。
更新も遅く、気ままなサイトですが今後もとよろしくお願い致します。
write by 朋


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