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「#エロ」のBL小説を読む
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熱中症にご注意を

テレビを付ければ猛暑だ酷暑だ熱中症だとニュースが流れる日々。一歩外に出れば容赦ない陽射しが照り付けてきて、纏わり付く湿気やアスファルトの照り返しにはうんざりするけど、まだ夏は始まったばかりだ。
朝練の時はまだマシだったけど、午後練は地獄だな。炎天下の下でやってる部活よりはマシなのかもしれないが、蒸し風呂状態の体育館も相当キツイ。汗で床は滑るし、飛びついてボールを拾うのにも躊躇しそうだ。なんて、実際ボールを追い始めたら体が勝手に動くんだけど。
今日着替え何枚持ってきたっけな。いつもより水分補給には気をつけておかないと、皆練習に熱中するとすぐに忘れるからなー。って、これは清水に任せておけば大丈夫か。
授業の内容は右から左。窓の外に広がる青空と所々に散らばっている白い雲を見ながら、灼熱の中で追うボールの事を考えていた。


「スガー。お前なんでそんなに涼しい顔してんの?」
「いやいや、俺も暑いから」
「っつーかもっと冷房の温度下げてほしいよな」


三年になってから何かと受験受験と言われる毎日だけど、まだ部活も引退してないからかどこか遠いことに思える。進学校でもあるまいし、この時期から受験に向き合ってるのなんてちゃんと目標を立てている一部のヤツらだけだ。
それに当てはまらない俺達は休み時間の度に集まってはくだらない会話を交わした。っていっても、最近は皆バカの一つ覚えみたいに暑いしか言わないけどな。


「俺さ、思ったんだけど」
「何だよ」
「夏服の女子って・・・エロくねぇ?」
「分かる」


内容が内容だからか、声のトーンを落として顔を寄せながら喋り始めたヤツらを見て思わず苦笑を浮かべた。
まあ、男なんてこんなもんだ。勉強なんかよりも女子の方が気になるし、季節が変わる度にどうだのこうだのと話題に上がる。もちろん俺だってつい目がいってしまうのは同じだしコイツらが言ってることも分かる。でも、同意したら同意したで絡まれるからあえて黙っていたのに、今日はそれでもダメだったらしい。


「いいよなースガは」
「昼休みは毎日彼女とラブラブタイムだもんな」
「ぎゅーとかちゅーとかヤり放題!うらやましい」
「リア充うぜぇ」
「一緒にメシ食ってるだけだろ!学校でンな事しねーって」
「はい、嘘ー」


まあ、嘘ですけど。大体いつも他愛ない会話して終わりだけど、たまにぎゅーとかちゅーとかする事もあります、はい。なんて馬鹿正直に言おうものなら彼女とのアレコレを聞かれかねないので黙っておくに限る。いくらコイツらでも想像されたくないしな。
朝も夜も部活で会えないし、唯一二人きりになれる昼休みなんだからちょっとくらいしたっていいべ?俺だって健全な男子高校生だし、彼女が隣に居れば色々としたくなる時だってある。
あー・・・でも、ここ最近はそういう事してないかも。何でだ?暑かったから?と、そんな事を考えてしまったのがダメだったのかもしれない。




「うわ、暑いな」
「暑いねー」


昼休み、屋上へ続く階段の踊り場が俺たちのいつもの場所。
風が抜けないからか空気がむわりと熱を含んでいて、お世辞にも弁当を食べるのに適した場所なんて言えないけど、それでも二人並んで腰を下ろした。
特別教室は施錠されてるし、教室や食堂には大勢の人。天候に左右されない校舎内で二人きりになれる場所を探した結果、行き着いたのがこの場所だ。夏は暑いし冬は寒いけど、それでも葵と二人きりになれるのなら何てことない。


「今日髪型違うんだな」
「うん。暑いからまとめちゃった。どうかな?」
「かわいいかわいい」
「心がこもってないぞ」


軽く返したのは照れ隠しとかそういうのじゃない。休み時間の時に話していた内容を思い出してしまったからだ。
いつも下ろしている髪の毛が上の方でくるりと器用に纏められていると、白い項が露になって目を奪われる。背中を丸めた時に浮かぶ下着の線だとか、半袖の制服から覗く細い腕。汗で額に張り付いてしまっている前髪。火照ったように色づいた頬。そして、風を送るためにパタパタと胸元を揺らす時にチラリと見えた色のついた紐。
男っていうのは、普段隠されている場所が垣間見えるだけで視線を奪われてしまうようなどうしようもない生き物で。それが自分の彼女であれば全て暴きたくなってしまう。


「・・・え?今なんて?」


隣に座る葵に視線を向けながらそんな事を考えていたら、自分の願望をそのまま耳が拾って思わず目を瞠る。
急にどうした?え、俺口に出してねぇよな?もしかして葵も同じ気持ちだった?内心で煩く喚きながらも動揺を覚られないように聞き返してみれば、不思議そうにこちらを見る双眸とコトリと傾げられた首。


「?熱中症になりそうだね、って」
「ああ、熱中症ね・・・」


がくり、と肩が落ちる。だよな、葵がそんな事言う訳ねーべ。でも聞こえちゃったものは仕方ないっつーか・・・それしか考えられなくなってくる。


「なあ、葵ちゃん」
「なあに?考支くん」


頼んだら言ってくれるかな。と思いながら、心の内を覚られないようにいつも呼ばない呼び方で名前を呼べば、それに乗っかってくれる葵。こういう所、かわいいし好きなんだよな・・・・・・じゃなくて。


「熱中症って、ゆーっくり言ってみて」
「んー?ねっ、ちゅー・・・、」


俺の言った言葉を素直に繰り返した葵だけど、不自然なところで言葉が止まった。きっと、俺が何を言いたいか気づいたんだろう。チラリと目線だけで見上げてきて、その先を躊躇ったのが見て取れた。頬が先程よりも赤いのはきっと気のせいじゃない。
そんな顔を見せられたら、我慢出来なくなるだろ。つい動いてしまいそうになる体をグッと拳を握って耐えたのは、ほんの数秒。


「・・・しよぉ?」


小さく呟かれた言葉を飲みこむように葵の唇を塞いだ。
しっとりとした感触は柔らかくて、熱い。久しぶりだからかただ重ねただけじゃ物足りなくて、ほんの少しだけと舌を伸ばせば躊躇いがちに絡めてくれた。
触れ合っている事で体温が上がっているせいか、むわりとした空気が増したように思えるけど全然気にならない。呼吸の合間に「こーし・・・」と舌足らずに名前を呼ばれれば、より深く求めてしまう。
どれだけそうしていたのかは分からないけど、じわりと滲みだした汗が米神を伝い落ちていくのを感じて、漸く唇を離した。


「へへっ、熱中症になりそうだな」
「もう・・・学校なのに」
「たまにはいいべ?さ、メシ食お」
「・・・食欲無くなった」


照れているのか、横で頭を抱えだした葵の背中をポンポンと叩く。本当は頭を撫でてやりたいけど、折角綺麗にまとまってるのに触ったら崩しそうだし。
俺だって、何か色々治まってないんだけど。それを口に出したら流石に怒られそうだから、バレないように何ともない素振りをしつつ弁当に手を付ける。違う欲が芽を出したからか食欲なんて全く湧かなかったけど、何度か咀嚼して呑みこんだ。

毎日うんざりするくらいの暑さだけど、葵と感じる熱さは心地よくてクラクラする。
だからか、照りつける太陽も蒸すような湿気も嫌いにはなれないんだよな。と思いながら、未だに俯いている葵の項を指でそうっとなぞると、結局怒られてしまった。
何するの、なんて全然怖くない顔で怒る葵を見て思う事は一つ。次は全部暴きたい。
暑さと熱さにやられた頭では、やっぱりどうしようもない生き物になってしまうみたいだ。




スガさんが大好きなお友達へ書きました!流行りのネタで(笑)
スガさん書くの1年ぶりということもあって、めちゃくちゃ迷走したので何かちょっと違ったらごめんなさいw
でもこのネタ楽しかった!

write by 神無




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