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今からでも君に・・・


いつも通りの規則的な機械音で目覚める朝。
瞼が開かない状態でゆっくりと起き上がるが、気怠さからまたベットへと逆戻りしてしまうのはいつもの事。
なんで朝は起きなくちゃいけないのだろうか。そんなこと言ったって状況は変わらないが毎朝思ってしまうのはそれだけ会社へ行きたくないってことなんだろうけど。学生時代の朝練はもっとちゃんと起きられたのにな。
グダグダと時間を浪費していても仕方が無いので、再度鳴ったスヌーズと共にベッドを抜け出した。覚めきらない頭で今日のスケジュールを思い出し、あまりの仕事量に思わずため息が出てしまう。


「月末だし…今日も残業コースか」


俺だけの仕事ならそれなりに定時で終われるだろうけど、月末は部長の印鑑やら後輩の書類の確認やら俺だけではどうすることもできない仕事が山積みなのが腹立たしいかぎりだ。みんな余裕持って効率よくやっておけよと言いたくなる。と、そこまで思ってからふとカレンダーへと目をやる。
普段カレンダーに予定を書いたりしないから見ることもないが今日は無意識に目を向け、でかでかと赤字で書き込まれた『葵誕生日!!』の文字を見つけ、一気に血の気が引いた。

彼女の誕生日がこの日だってことは記憶している。
そして今日がすでに月末だということも。
つまり、一か月以上も前から誕生日アピールをしていた彼女の誕生はすでに過ぎ去っているのだと今更ながらに認識したのだ。

どうせならもっと早くに気付きたかった・・・。
いつもなら返信しなくてもくるメールがこなくなった理由がわかったが、わかったところでもう出勤時間も迫っていてどうすることもできない。取り合えず『今日会える?』とだけメールを入れ、仕事を早く切り上げれるように急いで家を出た。




「・・・ダメか」


定時を過ぎても彼女からの返事がないことに頭を抱える。
誕生日を忘れたくらいで・・・なんて言えない。彼女がどれだけ誕生日を楽しみにしていたか知っているから。


「お〜国見。これも頼むなー」
「・・・先輩。これ以上は一切やりませんからね」
「お、おう。・・・なんだよ、いつも以上に怖ぇぞ」


本当なら今すぐにでも帰りたいのにこの仕事だけでも引き受けてあげたんだから文句言われる筋合いないけど。そんなこと口には出せないから態度で示す。
後輩もいつもと違う俺を感じ取ったのか急いで仕事をこなしてくれた。だがその間も葵からメールが返ってくることは無かった。


「お先に失礼します」


誰よりも早く帰宅を告げ、急いで葵の家へと向かう。彼女の仕事は月末とか関係ないし、この時間なら大抵家にいるだろうと踏んで。
向かう途中に何度か電話を掛けてみたが、電源を切られているのか繋がる事は無かった。
行っても家に入れてもらえないんじゃないかという不安が募っていく。いつも会いに行けば嬉しさを前面に出してくるだけに、拒絶されることに慣れていないんだけど…。

ドアを開けてもらえなかったらどうしようかと無駄にドキドキしながらしながらインターフォンを押した。ピンポーンって響く音ですらいつもよりゆっくりに聞こえるくらい今の俺は不安で仕方がない。
中からガタガタと物音が聞こえるから葵がいる事は明白だ。
インターフォンへの応答が無いままバタバタと足音が近づいてくるから「帰って!」とでも言われたらどうしようかと身構える。だが、


「英!!?!!急にどうしたの!?」


玄関のドアを勢い良く開けた葵はいつも通りの嬉しさ全快の笑顔で俺を出迎えてくれた。


「・・・・・は?」


想像もしていなかった対応にどうしていいかわからず立ち尽くす。
なに?怒ってたんじゃないの??メールの返事も無ければ電話にも出なかったのにこの笑顔は何??
あまりの不意打ちに顔をしかめる俺に、葵の方がオロオロと不安げな表情を見せる。


「・・・あ、英?どうかした・・??」
「メール返信ないから。・・・それと電話も。」


怒ってるのかと思ったのにとつい呟いてしまったが、これはさほど大きな声でもなかったし聞かれていないはず。
葵の名前で埋まっている発信履歴を見せれば、目を見開いて驚いているから本当に気づいていなかったみたいだ。慌てて部屋の中に戻ってスマホを捜す葵の後姿を眺めながらちゃっかり玄関の中へ入らせてもらった。帰れとはもう言われないと思うけど。


「そういえば一昨日くらいに友達と長電話してから充電してなかったんだ!」


スマホを探り当ててから、いつから切れてたんだろうと首をかしげる葵に盛大な溜息をついた。俺の苦労を返して。


「ごめんっ!!全然気づかなくて・・・」
「いいよ。怒ってないみたいだし」


ここで俺が怒るのはお門違いってやつだろうし。
とりあえず安心したことを伝えると、ヘヘッといつもの力ない笑顔が返って来る。
それなりに一緒にいるけど、この笑顔がこんなにも安らげるなんて初めて気が付いた。


「実はちょこっと拗ねてたけどね。だから友達に愚痴ったりもしたし、英にメール送るの止めたりしてたんだけど」
「そうなの?全然そんな感じじゃなかったけど」


メールがこないのだけは感じていたけどインターフォン押したら駆けて来てくれるし、会えば満面の笑みだったし。俺の想像をいい意味で裏切って、いつも通り俺を振り回す葵だったけど?
拗ねていたならなんで笑顔で出迎えてくれたんだと問えば、目を逸らして恥ずかしそうに口をとがらせる葵。


「だって・・・英と連絡取らないでいたら寂しくなっちゃったんだもん」
「・・自分からやったのに?」


どんな理由だよと笑いそうになったが、ここで笑ったらせっかく直っているのにまた拗ねらせてしまうと思いこらえる。
ホント、葵が彼女で良かったよ。元々は俺が悪いのだと未だ口をとがらせている彼女の唇に、そっと己の唇を重ねる。


「うん、ごめん。遅くなったけど誕生日おめでとう」
「・・・不意打ちはずるいです///」


恥ずかしそうにしていた時よりさらに顔を赤らめ、恨めしそうに俺を見る葵。
でもそれも一瞬の事で、すぐにいつもの笑顔に戻り抱き着いてきた彼女をしっかりと受け止めた。


「お詫びに今度の休みは二日とも葵の行きたいことに付き合うから」
「ほんとに?!何処でもいいの?!」
「いいよ」


普段なら行かないテーマパークだろうが疲れるハイキングだろうが今度ばかりはとことん付き合おう。葵にならそこまでしてもいいと思える。
それだけ、葵が好きだから。


「しっかり可愛い恰好できてね」


それまでに俺は、君に似合う指輪を捜しておくから。




いつも仲良くさせて頂いているはろーまいだーりんの紫苑様への誕生日プレゼントで書かせていただきました。
社会人な国見ちゃんです!似非っぽいですが国見ちゃんです!!!!

write by 朋
HappyBirthday Shion!



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