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未成熟な時間


久しぶりの休み。
久しぶりのデート。
久しぶりの飛雄の部屋。

これで緊張するなってほうが無理な話で、ばっちりオシャレをしてちょこっと化粧もして。なんなら下着だって新調した。
いや、期待はしてないよ?・・そんなには。でも、もしかしてもしかした時にと思ってしまうのが付き合っている彼女のサガと言いますか。
つまりそれなりに期待したってことです。
たとえ部屋に来た目的が試験がやばい飛雄の勉強をみるためだとしても。


でも、実際に飛雄の部屋で問題集を開いて見れば何のことはない。彼は数秒で夢の世界へと旅立ってしまったのだから。


「・・・・どうしよう」


日頃疲れているから仕方がないとそのままにしておいたけど、すでに二時間近くたっている。
今日は飛雄に教えることを優先するために自分の問題集はすでに終わらせてしまっているし、復習するのにも飽きてしまった。


「勝手に部屋の中物色したら怒られるかな…」


起きているならみてもいい?とか聞けるけど、寝ている相手には許可も取れない。
かといってこの部屋以外に行くのもどうかと思うし…。
ちょっとだけなら。そう思って本棚を確認すれば、見事なまでにバレー本ばかり。ブレないというか何というか…


「あっ・・・」


たくさんのバレー関係の本の隅でひっそりと隠すように置いてあるアルバムを見つけ、そっと手に取る。
ちょっと古びた表紙を慎重にめくればまだ小さい飛雄がまぶしいほどの笑顔を浮かべていた。


「なにこれ!可愛い!!」


今の飛雄からは想像できないくらいの満面の笑みに、すかさず携帯をかざす。
これは記念に保存しておかねばとカメラを起動させたところで不意に影が差した。


「なにしてんだ?」
「あ・・・おはよう、ございます」


まだ少し寝ぼけた状態の飛雄が後ろから覗き込むようにして近づいてきたので、悪いことをしていたわけでもないのに反射的にアルバムを隠した。
いや、勝手に見たって罪悪感があるからかもしれないけど・・・。


「起きたなら勉強再開する?」


このまま見つからずにすめばと飛雄の意識を別に向けようとしたが、飛雄の視線はしっかりと私の手元へと向かっていた。


「・・・・見たいのか?」
「ぇ?あ、う、うん」


私が見たがっている理由がわからないのか首をかしげる飛雄だけど、見ることを咎めるつもりはないようだ。
ならば堂々と見てやろうとアルバムを先ほどまで勉強道具を広げていたテーブルの上へと移動させる。ついでにさっきの撮り損ねた可愛い飛雄の写真も撮ろう。


「ねぇねぇ!これいくつくらいなの??」


彼氏の昔の写真を見るなんてなんだか彼女っぽくて、先ほどまで放置された寂しさなどはどこへやら。鼻歌でも歌いだしたくなるほどの上機嫌で飛雄の隣へと座り、写真につて説明を求めれば不思議そうにしながらも当時の話をしてくれた。
まぁ、とっても簡潔にだけど。それでも十分すぎるほど嬉しい時間だ。

写真を見ながら昔の飛雄を知る事が出来て興奮気味の私を理解できないのか、楽しいか?と始終首をかしげる飛雄。その腑に落ちない様子に、本当に嫌だったらすぐ顔に出るから嫌がっているわけではないと思ってたけど、もしかして飛雄はつまらなかったのではと急に不安になる。


「ご、ごめん。嫌だった?」


私だけが楽しんでいたのではと、今更ながら飛雄の機嫌をうかがう。
飛雄は私が質問した意味もよく分からないようで、もともと傾げていた首をさらに傾けながら眉をひそめた。
やっぱりきちんと言わないと伝わらないかと、改めて飛雄へと向き直る。


「私ばっかり楽しんでたけど…飛雄はつまらなかったかなって思って」
「別に?お前が楽しいならそれでいい」


なんでそんなサラリと言うかな。
見たいんだろ?って返され素直にうなずいたけど、なんだか飛雄のセリフを思い返すと恥ずかしくなってきて写真どころではなくなってしまった。

熱くなった顔を誤魔化すこともできない距離に、改まって向き直るんじゃなかったと後悔するが時既に遅し。私が顔を赤くしているのに気付いた飛雄に心配そうに顔を覗き込まれ、大丈夫と言いながらもさらに動機が激しさを増す。
駄目だ。このままでは飛雄に心臓の音が届くんじゃないかと思うほど内側が煩い。


「あっ!そろそろ勉強しないと!!」


不自然極まりないが、このまま冷静に写真など見れるわけもないので、自分を落ち着かせる為にも勉強を再開しようと提案する。
本来の目的だし、なにより赤点を取るわけにもいかない飛雄はすんなりと納得してくれたようで、近かった顔が離れ、そっと胸をなでおろした。のも束の間。
照れ隠しにささっとアルバムを戻そうとした手が、同じように片付けようと伸ばされた飛雄の手と重なり、慌てて放したことでアルバムがバサッと音を立てて落ちる。


「悪いっ!」「ごめんっ」


それは飛雄も一緒に離したからで、お互い赤い顔で手を押さえて固まった。
静寂の中に漂う雰囲気がおかしなモノへと変わりそうで、目が回りそうな視界を必死に落ち着かせる。
だが、アルバムを見ていて忘れかけていた今二人きりだという事実が、今更になって私を惑わせてくるから落ち着くなんてことはできなくて。先程よりも加速度を増した鼓動が全身を熱くさせていった。
まともに飛雄の顔が見れないで俯いていた私は、突然近くに感じた飛雄の気配に驚いて顔を上げる。


「やべぇ・・」


何が。そう聞きくために開きかけた私の唇は、音を紡ぐ前に飛雄の唇にふさがれてしまい、出たのは「んっ」という何とも恥ずかしい音だけ。
たった一瞬の出来事だったが、突然の事に息の仕方すら思い出せないほどの動揺が私を襲った。


「ななななっ、なんで!?」
「しょーがねーだろ!可愛いって思ったんだから」
「可愛いってっっっ!なにそれ?!それでキスするの!?嬉しいけど!」
「体が動いたんだよ!嬉しいならいいだろうが!俺もしたかったし!」


お互い真っ赤な顔して声を張るが言っている事は支離滅裂で、意味など求めてはいけない言い争い。ただのバカップルのようなやり取りをしばらく繰り返し、息が切れたことでできた間でやっとこの可笑しな状況に気付いた。

もちろんその後に起こるのは笑いしかなくて。
先程までの甘ったるい雰囲気など微塵もなくなるほど、お互いのバカさ加減を笑いあった。
本当にあほすぎる。キスだけでこんなに動揺しているような二人がその先に進めるのなんてまだまだほど遠いだろうな。
そう思ったらずっと無駄な期待で緊張しっぱなしだった心も軽くなる。

私たちにはまだ早い。
ただそれだけの事。
可愛い服も、新しい下着も、きっと必要な時はやってくるけどそれは今じゃない。
素直にそう思えるし、それを不満に思わないのはきっと飛雄だから。


「じゃ、勉強しよっか」
「おぅ」


真面目に勉強に取り組もうとする飛雄の横顔には写真のような幼さはないけれど、それでも可愛らしいと思える要素をまだ残している。
これが男の子の顔から男の顔にかわったら、その時は私もちゃんとした大人の女性になっていたいな。


「あんま見んな・・またするぞ」


この照れ隠しのぶっきら棒さがあるうちは、まだまだ大人への道は先になるだろう。
自然と緩む口元を必死に誤魔化しながらどーぞっとおどけて見せる。

そしたらきっと飛雄は驚いて照れながらも優しい触れるだけのキスをくれるから。
今はそれだけで幸せです。





影山スキーなフォロワーさんに日頃の感謝を込めて書いてみましたが・・・
あれ、名前変換が出てこない・・・
中々影山を書かないのに変換無いとか本当にすみません。。。
それでもピュアな影山を楽しんでいただけたら嬉しいです!

write by 朋



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