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世話係の憂鬱な一日(後)


「高宮ーーー!!」


チャイムが鳴り終わるよりも先に木兎がこちらに突っ込んでくる。
既に鞄を持ち席を立つ準備をしていた私は捕まってたまるかと、木兎から遠い方のドアへと一目散に向かったのだが


「お前を帰すわけにはいかないぜ」


なぜかクラスメイトからの妨害工作。昼に私に言ってきた奴ではないが、こいつも確か教科係だったか…


「諦めろ…プリント出していないの木兎だけだから高宮さんに任せてますって既に先生に言ってある」
「うわ!最低!私を売ったのか!!」
「悪いな、今日は女子高と合コンがあるんだ」


めっちゃどうでもいい私的な用事!!そんなものの為に私は売られたのか!ってかそれで良しとしちゃう先生もどうよ!!
このクラスに味方はいないのかと周りに視線を送るが、みんなして笑いながら「がんばれ〜」というだけ言って帰っていく。

やっぱり今日は厄日か。
かくして今日は最後まで憂鬱な一日となったのだ。



◇ ◇ ◇



「・・・・・まだですか?」


薄情なクラスメイト達は一人として残らず、木兎と二人きりの教室になってから早くも30分が経過している。木兎が私に泣きついてきた時は、まさか白紙の状態で来るとは思っていなかった。一通り説教してから、まさかの問題文が読めないとか言われるし。
どうやって高校入試受かったのか謎だわ。


「・・・・わかりません・・」


説教の時からしょぼくれモードな木兎は、今にも消え入りそうな声でつぶやく。
それでも今回は励ましたりなんてしない。


「そんなんじゃ部活いけないよ」
「・・・やだ」


やだって子供じゃないんだから。
じゃあ頑張りなさいと一喝する。
私も早く帰りたいし、ちょいちょいヒントくらいは与えてあげる。時々ありえない回答をするがあえて突っ込まずにいよう。長引くだけだ。冷ややかな目で見すぎて高宮冷たいって愚痴が木兎から漏れているが。


「・・・・大体、なんで私に言ってくるかなぁー」


木兎は友達も多いし、私よりも頭のいい子はいっぱいいる。それこそ部活仲間にだって聞けただろうに。


「だって高宮がいい」
「・・・・なんで?」


私別に教え方が上手いわけでもないのだが


「なんでって・・・なんでだろう?あれ?なんでだ?」
「いや、聞かれてもわからないし」


むしろ何が言いたいのかもよくわからない。それよりあと一問なんだから解きなさいとプリントを指さして急かす。
ウッスと小さくうなずいて問題集に向き直って固まった木兎にため息をつき、時計を確認する。既に1時間半くらいたっているか。
木兎は少しくらい部活に顔出せるかな?いつも遅くまでやってるし。私の貴重な自由時間は木兎のせいで毎日どんどん削られてるけどね!

今日は雑貨屋に寄りたかったんだけどな…。


「わかったーー!!!!」


私に自由を告げる木兎の雄叫びにようやく終わったかとプリントを覗けば、ラスト一問はまだ空欄のまま。


「・・・・わかったんじゃないの?」


わかったなら早く書けとの意味を込め回答欄を指でつつく。


「それはわからん!でもわかった!!」
「・・・・・・なにが?」


木兎の中でしか通じない会話に戸惑うのにも慣れてはきたが、今回はいつもに増して意味不明だ。


「高宮がいい理由!」
「・・・・そっか、理由なんだった?」


そっちか。ってか考えてたのか。
きっとくだらない理由だろうと思ったが、今更しょぼくれモードに戻られても面倒なので興味津々のふりをして木兎を見る。そしたらばっちりと目が合った木兎は満面の笑顔で言ってのけるのだ。


「高宮の事が好きだからだ!だからお前じゃなきゃダメだ!」


あまりに予想だにしていなかった言葉に、なぜにこんなにもドヤ顔なのかとか、軽いなとか、思考が逃避モードへ入る。


「あ、赤葦くんや木葉も好きでしょ。クラスメイトも」


きっと軽い気持ちで言った発言だろう。そうであってほしいと願ってつづけた言葉もむなしく


「ん〜好きだけどその好きじゃない。高宮の好きはギュってしたりチューってしたいやつだ」


考えてて今気づいたけどな!と笑う木兎になんと返していいのかわからず固まる。
きっと私の顔は真っ赤になっているだろう。こんなストレートな告白、慣れてないからね!なんかお子様っぽい発言だけど!


「高宮はどうだ?俺の事好きか?」
「嫌いではないけど…木兎の好きと一緒ではないと思う・・・そんな風に見たことなかったし」
「そっか、じゃあこれから見てくれ!俺も高宮が好きだって今気づいたし!」
「あ・・・う、うん?」


ココってうんって返事でいいのか?
逃避モードに入りかけた思考回路では木兎にはついていけず、とりあえず頷いてしまったが。


「おう!俺も頑張る!」
「・・・おう、頑張れ」


何を頑張るのかなんて何にも考えずに発した私の言葉に嬉しそうに笑った木兎。

この発言を後悔したのは翌日だった。
朝からずーっと私に付きまとう木兎にクラスメイトが楽しそうに発した


「木兎〜今日は高宮さんにべったりだな〜」


とのからかい発言。
その返答に、この男は


「おう!高宮口説いてるところだからな!邪魔すんなよー」


と、バカでかい声で言ってのけたのだ。


「ちょっ!!!何言ってんの!?」
「なにって、昨日言っただろ??頑張るって!」


昨日の頑張るはそれか!それにしたって木兎には恥ずかしいという感情はないのか!!

その後も言い争う私と木兎に、より一層大きくなるクラスメイトの楽しそうなからかい。


「好きになったか?」
「なってない!!」
「そか・・・でも俺は好きだ!」


なんとも恥ずかしいやり取り。
これが日常になるなんて思ってもいなかった。

毎日のように好きだと言ってくれる木兎。
そんなまっすぐで素直な木兎にほだされる日はそう遠くないだろう。




ちょっとラブラブにできなったですが。
きっと木兎は恥ずかしがらずに好きっていうんだろうなーと思ってたらこんな内容に。。。

write by 朋


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