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独占欲のシルシ 前編


「キャッ、すごーい」


次に控えた体育の授業の為に更衣室で着替えていれば、女子特有の黄色い声が上がって自然と皆の視線が声の方へと向く。私も例外なく視線を移せば、着替え途中のキャミソール姿のクラスメイトが先程声を上げたであろう女の子から何やら話しかけられていて。彼女の姿を見るだけで何が凄いのかが理解出来たが特に関わるつもりもなく、視線を戻して自分の着替えを再開させる。


「彼、独占欲強くて。恥ずかしいからやめてっていってるのに」


なんて控えめな声で恥ずかしそうに言っているけれど、隠す気はなく、むしろ見せつけるように着替えていたあたり誇らしげな気持ちなんじゃないだろうか。現に私と目が合った時、下着姿の私を見て馬鹿にするように口元が嗤っていたから。

首筋や胸元など、露になっている部分にいくつも散っている赤い鬱血痕。
遠目からでも分かるソレが何を示しているかなんて一目瞭然だ。


「でも、男子ってそういうとこあるよね」
「分かるー。どうでもいい女にはキスマークとかつけないよね」
「いいなぁ、愛されてるじゃん」


クスクスと笑いながら交わされている会話の視線が私に向いている事は分かっていたけれど、反応することも視線を向ける事もせずに指定の体操服を取り出して、何一つ痕なんて無い自分の肌を隠すように頭から被った。



◇ ◇ ◇



「徹はさ、独占欲とか・・・ある?」


放課後、久しぶりに徹の家にお邪魔して一緒に過ごしていた時、不意に体育の時の会話を思い出して聞いてみたけど、話に脈絡が無さ過ぎたのか整った顔がポカンとした表情へ変わり「え?」と疑問の声が返ってくる。

あの時、女子たちが私を嘲笑うような事を言ったのは、私と徹が付き合っているのは周知の仲だから。そして、徹が校内では有名人だからだろう。
人当たりが良くて顔もいい。おまけにバレー部の主将も務めていて運動も出来るとあれば人気が出るのは当然の事で。一年の時から私とずっと付き合っているのにも関わらず、未だに告白される事だってあるらしい。
ああ、そう言えば更衣室で声を上げたあの女の子も徹に告白したって前に噂で聞いた事がある。徹は心配掛けたくないからか私には報告してこないので噂の範疇を出ないけど、私に向けられたであろう言葉には棘があったし、強ち間違いではないのかもしれない。


「独占欲・・・?」
「自分だけのものにしたいとか、そういうの」
「いや、それは分かるけど」


急にどうした?と不思議そうな表情を浮かべながら首を傾げる徹。やっぱり言うのをやめようかとも思ったけれど、一度気になった事をそのままにしておいてもロクな事にならないだろう。今日一日どころか、度々思い出してはモヤモヤとしそうな気がして、意を決して口を開いた。


「・・・ス・・・ク、」
「ん?、ごめん。なに?」


けれど、実際に口にしてみると恥ずかしくて。小声になってしまったのを当たり前のように聞き返されて、じわりと顔に熱が籠る。別に変な事を聞く訳じゃあるまいし普通に聞けばいいのに、何でこんなに恥ずかしいんだろう。
じわじわと湧き上がる羞恥心を押し殺すように、胸の辺りを押さえ付けてギュっと目を瞑った。


「キ、キスマークとか、あまり付けないなって・・・思って・・・」


ああ、言ってしまった。どうしよう、いきなり何でキスマークの話なんだって思われたかな。ドキドキと脈打つ自分の心臓の音を聞きながら、徹の返答を待ってみたけれど何も返答がなくて。やっぱり聞かない方が良かったのかと若干の後悔を持ちながら、閉じていた目蓋を開いておずおずと徹へと視線を向けた。


「・・・付けて欲しかったの?」


ばちりと目が合った瞬間、その瞳に捉われてしまったかのように視線が離せなくなった。
漸く言葉を発した徹は先程までとガラリと雰囲気を変えていて、声色も艶を帯びて低く響き私の鼓膜を揺るがす。私を移す鳶色の瞳はゆらめくような熱を宿しているのが見て取れて、心臓がドクドクと更に大きく高鳴った。
何か・・・スイッチを押してしまったのかもしれない、


「誰に何言われたか知らないけど」
「っ、」


徐に伸ばされた手が頬に触れ、じわりと温もりが伝わってくる。先程からの羞恥で私の頬も熱をもっているはずなのに、徹の手が・・・熱い。
その指でするりと頬を撫でられるだけで、胸がキュンと音を立てた。


「お前に関しては独占欲しかないよ」


ニヤリと口元に弧を描いたその唇がゆっくりと重ねられる。柔らかさを堪能するように何度か小さく啄まれた唇は手よりも熱くて、頭がクラクラとした。
ぬるりと舌で唇をなぞるのは、これ以上進んでいいかどうかを聞くためのサイン。勿論拒む筈もない私は少しだけ口を開く。そうすれば差し込まれる舌がくちゅりと絡まって、とても気持ちが良い事を知っているから。


「んっ」


徹の舌の動きに応える事に集中していれば、頬に置かれていた手がゆっくりと落ちてきて首筋をツゥ、となぞる。ピクリと反応してしまった私に構う事なく、鎖骨のカタチを確かめるように動き、やがて胸元へと到達した指が紐タイを解くのが分かった。
一つ、二つとボタンを外され、少し肌蹴てしまった服の隙間から胸の谷間をなぞられて、反射的に徹の手首を掴んだ。


「・・・目立つし、葵は嫌だと思ってたから付けなかったけど」


漸く離された唇が小さく動くのを見ていれば「もう遠慮しないよ」と呟かれたのと同時に捕まれていた手首を返して、逆に私の手首を掴むと強く引かれる。そしてもう片方の手で腰も引き寄せられ、胡坐を掻いた徹の足を跨ぐように座らされた。

ちゅっ、とリップ音を立てながら首筋に落とされた軽いキス。ふわりと触れる髪の毛が擽ったくて身を捩ったのも束の間。首筋に這わされた舌が微かな刺激を与えてきて、抑えきれなかった声が漏れる。
その直後、肌を強く吸われる感触とピリッとした微かな痛み。舐められて吸われる動作を繰り返されて与えられるもどかしい快感に、徹の髪の毛をクシャリと乱した。


「んっ、・・・ねぇ」
「なに?」


視線を落とせば胸の谷間をなぞる赤い舌と、上目で見つめてくる徹が目に映る。まるで誘っているかのような仕草に、思わず息を呑んだ。


「・・・私も、つけたい」
「ん?」
「私もあるから。・・・独占欲」


素直に吐き出した言葉だけど、それが意外だったのか軽く目を見開いた後にククッと喉で笑った。胸元から離れ、ほんの少しの距離を取った徹は長い指でネクタイの結び目に指を引っ掛けると、徐に鎖骨まで引き下げた。


「どうぞ?」


口角を上げて笑いながら差し出された徹の首筋は、白く綺麗で。滑らかな肌に引き寄せられるように、微かに震える唇を近づけた。
キスマークなんて付けた事ない。肌を吸い上げて鬱血させるというのは分かるけれど、そんなに簡単に出来るものなのだろうか。
頭の中でさっきの徹の仕草を思い出しながら、真似をするように何度か軽く口付けを落として柔らかな部分を探っていく。そして、ちょうど肩の辺りに唇をのせて強く吸い付いてみる。力加減がよく分からなかったけど、舌が痺れるような感覚の後にそうっと唇を離してみれば、赤く色づいているのが目に入った。


「、付いたっ・・・」


少し薄いような気もしたけれど、キスマークを付けれた事が嬉しくて。自然に浮かんだ笑顔のまま徹へと顔を向ければ、噛みつくようなキスを落とされた。


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*注* 次の話は性描写を含みますので、注意喚起としてパスワード入力になります。




及川さんはっぴーばーすでー!!
前についったの方でちょっと載せていたネタを使用しました(笑)
ギリギリまで書いていたんですが、ちょっと間に合わなかったんで後編は今日中のアップを目指して頑張ります。
write by 神無



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