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抑えきれない衝動 前編

鼻歌を歌いつつ、鏡を見ながらメイクが崩れていないか確認をする。
浮ついた気持ちは隠せないのか鏡に映る自分の表情はどこか楽しげで、それを自覚すると口許がだらしなく緩みそうになって引き締めた。

手櫛で髪型を整えていると、机の上に置いてあるスマホがバイブ音を立てたので視線を移せば、通知画面に【着いた】と短いメッセージが届いたのが見え、慌てて口紅を唇に乗せる。

今日までお互い仕事が忙しかったから、久しぶりのデートだ。つい気合が入ってしまったのは今日の出で立ちでバレてしまうだろうけど、実際楽しみにしていたのだから仕方ない。

軽く部屋全体を見渡して忘れ物と戸締りを確認した後に家を出る。軽快な足取りでアパートの階段を降りると、目の前の道路には見知らぬ車に凭れかかっている彼氏の姿があり、目を瞬いた。


「え、どうしたの!?」


驚きのあまり挨拶もせずに問いかけてしまったが、それも予想の範疇だったのかニヤリと笑いながら車に手を掛ける鉄朗はどこか誇らしげだ。


「先輩が譲ってくれた。まだ走るからってさ」
「え!?すごい!」
「下取りの値段が大した事なかったらしくて、どうせならってな」


へぇー、そういうものなんだ。
免許は持っているものの、東京では車が無くても不便ではないため車の事に関しては全然分からない。


「外車のSUVなんだけど、カッコよくね?」


でもやっぱり男の人は違うのか、珍しく無邪気な笑みを見せる鉄朗にこちらまで嬉しくなってくる。
「ドーゾ」とエスコートして乗せてくれたのは外車ならではの右側で、何だかよく分からないボタンが色々なところにあり、何もかもが目新しくて浮き足立ってしまう。

運転席をチラッと見れば真剣な顔でハンドルを操作する鉄朗の横顔。
今までレンタカーや親の車を借りて出かけた事は有ったから、こうして助手席に乗るのは初めてじゃない。なのに、何度見ても運転するその姿がカッコよくて見惚れてしまうんだ。


「そういや、ちょっと行った先に穴場の夜景スポットあるらしいぜ」


ふと会話の為に横目で見てきた鉄朗と目が合って、慌てて「い、行きたい!」と返事をする。
見惚れてたなんてバレたら恥ずかしいし、絶対調子に乗りそう。


「ククッ、・・・じゃあ飯の前に寄るか」


だけど私の心情なんて鉄朗にはお見通しだったみたいで、笑われながらそう言われればもう黙るしかなかった。

近況を伝え合う、何てこと無い会話を交わしながらも車は都心を抜けて山道を登っていき、誰かに聞いたのか元々知っているのか定かではないけれど、迷い無く目的地へ向かっていく鉄朗を凄いな、と改めて思った。
日が落ちてきて、オレンジ色に染まっていた空は段々と黒に呑み込まれて行き、それと同時に人工的な灯りが街を照らし出す。


しばらく車を走らせて拓けた場所に出ると、その光景が視界いっぱいに広がって思わず感嘆の声をあげた。
早く外に出たい気もするが、あともう少し待った方がもっと綺麗な夜景になるだろう。それは鉄朗も同じだったようで、「ちょーっと早かったな」と時計に視線を向けながらポツリと言葉を落とす。

駐車場になっている場所の隅の方へと車を停めて、グッと伸びをする鉄朗。
慣れない運転で疲れただろう。「お疲れさま、ありがとう」そう声をかけると、ふわりと頭を撫でられた。
それだけで甘い空気に変わってしまった車内の雰囲気を誤魔化すように、目に入ったいくつものボタンに手を掛ける。


「ね、ねぇ。このボタン何かな?」
「さぁ?俺もまだ弄ってねぇから」
「押してみてもいい?」


ポチポチと良く分からないままに触り続けていると、横から伸びてきた手にグッと手首を掴まれた。簡単に私の手首を一周してしまう鉄朗の大きな手は熱を持っていて、その熱さにドキッと心臓が跳ねる。


「夢中になりすぎ」


やや不機嫌そうな顔で言うや否や、掴んだ手を力強く引かれて強制的に引き寄せられると柔らかい唇が重なった。
温かいその感触に一瞬そのまま流されそうになったけど、ここは車の中だ。
駐車した時は早い時間だったからか他の車は無かったけど、もしかしたら・・・と思うと気になって仕方が無い。唇は重なったままだったけれど、外を確認しようとそっと薄目を開く。


「んっ・・・」


鉄朗は目を瞑っていると思っての行動だった。けれど、どうやらそれは思い違いだったようで鉄朗の双眸に捉えられ、視線を動かす事が出来ない。
集中しろ。と言わんばかりにキスが深くなって再び瞼が落ちてしまうと、もうキスに溺れるしか無かった。

くちゅ、と唾液が絡まる音が静かな車内に響く。
厭らしいその音は興奮材料となり、お互いの熱を更に高めていった。


「っン」


誰かに見られるかもしれない。
止めないといけないのに唇を離すことが出来ない。

たっぷりと口内を堪能した後、ちゅう、っと下唇を吸いながら離れていった鉄朗の唇は暗闇の中でもツヤリと光っていた。


「ヤベ・・・我慢出来ねぇかも」


はぁっ、と熱い息を吐いた鉄朗の瞳は情欲を宿していて、その言葉が嘘じゃないことを伝えてくる。


「ゃ、ダメだよ」


ふにゅりと胸を揉まれた事に、流石に危機感を感じてその手を掴む。


「なぁ・・・」
「、なに?」
「後ろ行かねぇ?」


鉄朗の視線を追って後部座席を見れば、暗く染まった空間があった。
何をするつもり、なんて聞くのは野暮だろうか。想像しただけで中途半端に引き上げられた熱がジクリと疼く。

もう一度軽くキスを落としてから運転席を後にした鉄朗を見ていると、程なくして後部座席のドアが開いた。大きな体躯を折り曲げて乗り込み、全く動いていない私を見てふっと笑う。


「葵、・・・来いよ」


その言葉と笑みに引き寄せられるように、気付けば後部座席のドアを開けていた。瞬間、腕を引かれて強引に中へと引き入れられる。

バタン、とドアが閉められたのは音でしか確認出来なかった。鉄朗の熱すぎる唇が重なって、舌を捉えられたから。

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*注* 次の話は性描写を含みますので、注意喚起としてパスワード入力になります。




皆で電話して話してる時に盛り上がったカーセッ○スネタwww
次の日に忘れられない!!って相方に言ったらプロット起こしてくれたので軽率に書いてみましたwww
write by 神無



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