HQ | ナノ
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -




不器用な愛 前編


「おー、山本。そういえば彼女とどうだ?順調か?」
「な、なんスか急に」


朝練が終わってぎゅうぎゅう詰めの部室で着替えている時に、クロさんがいきなり話を振ってきて思わず手が止まる。
俺が答えるよりも先に「あー、そういえばもう半年だっけ?早いな」と、夜久さんが便乗し始めて更に言葉に詰まった。

こういう話題が出るのは珍しい事じゃないが、自分が的になるのはあまりなくて上手く言葉が出てこない。
そうしている間にも先輩たちはどんどん話を進めていき、勝手に盛り上がっていた。


「いいよなァ。オフの日とかそういうコトし放題だろ?」
「・・・そういう事?」
「決まってんだろ?セック・・・ゴフッ」
「朝っぱらから何を大声で言ってんだお前は」


ゴホッゴホッと夜久さんの一発がいい所に入ったせいか咳き込むクロさんだったが、クロさんが言いかけた“そういう事”がどういう事なのか分かってしまった俺は何も言えなくて、ただ顔に熱が籠るだけ。
何も言わず動きもしない俺をおかしく思ったのか、皆が俺に視線を移した後に目を見開き、視線を交し合って会話していたのが分かった。


「山本・・・まさかとは思うけどお前、」
「・・・」


クロさんの言葉に無言で目を逸らせば「マジか」と全てを悟ったような、それでいて驚きに満ちた声が聞こえた。

皆の言いたい事は分かっている。俺だってもっと触れたいとか色々シテみてぇって思うけど、元々女に慣れていないせいもあって彼女と付き合った当初は話す事さえままならなかった。
もちろん付き合ったのは今の彼女が初めてで、色々と様子を見ながらゆっくりと進んできたけど、これ以上となるとどうしても踏み切れない自分がいる。


「いいッス、別に」


とりあえずこの変な空気を何とかしようと投げやりに言い放ってみたけれど、それでこの先輩が納得してくれるハズもなく、ポン、と肩に手が置かれた。


「コレやるからガンバレよ」


軽率に差し出されたものを見れば、何度か目にしたことのある四角いパッケージ。
それが何なのかは一目瞭然で、動揺のあまり後ろへ飛び退いた。


「ちょっ!?な、なにを」
「・・・お前学校に何持ってきてんだよ」
「男の嗜みでしょーが。それにコレ、ローションたっぷりついてるヤツだから初めてにはうってつけだぜ?」


きっと彼女も期待してるって。と俺にだけ聞こえるように耳元で言ってニヤニヤと笑いながら俺の手にソレを握らせる。


「もーちょっと慣れたら今度は極薄やるよ」
「うっわ、黒尾サイテーだな」
「えー?夜っ久んも欲しいの?しょうがないなぁ」
「違うわ!」


呆然と先輩たちを見ながら手の中のものをギュッと握り締めれば、中のゴムがにゅるりと動き、それにまた動揺してしまった。



◇ ◇ ◇



「はぁ・・・」


昇降口で靴を履き替えながら、つい溜息をもらす。
朝練でこれだけ疲れたのは、絶対に部室での会話が原因だ。今日は朝練だけで良かったと心底思う。これで午後の練習もあったら絶対またからかわれてたに決まってる。


「あっ、虎くん!」
「っ!?葵」
「おはよう。どうしたの?」
「い、いや・・・別に」


教室に向かって足を進めていると、背後からかかった声に肩が跳ねた。
それは紛れもなく話題に上がっていた彼女だったからで、話の内容がアレだっただけに気まずい気持ちになり、微妙な返事をしてしまう。

きっと顔にも出てしまっているんだろうけど、葵は「ふーん」と相槌を打つと再びパッと笑顔に変わった。


「そうだ!今日部活ないんだよね?虎くんの家に遊びに行ってもいい?」
「お、おぉ。いいけど」
「やったぁ!」


嬉しい。と喜ぶ彼女をみて、いつもならその可愛さに悶えそうになるところだが、今日ばかりはさっきクロさんが言った「彼女も期待してる」の言葉が頭の中をぐるぐるとまわっていて堪能する余裕もない。

本当に葵は期待しているのか・・・。
だとしたらこの誘いってそういうコトなのか・・・?
それともただいつものようにゲームしたりするのか・・・??
そんな事を考えていると、尻のポケットに無造作に突っ込んだゴムが早く使ってくれと存在を主張しだしたように思えた。

ダメだ。葵がどう思ってるか分かるわけがないし、かと言って直接聞くわけにもいかない。頭を抱えたい気持ちに駆られた時、前にクラスメイトが言っていた事を思い出して葵へと視線を戻した。
そうだ、確かあの時女子がスカートの時はOKのサインでパンツだとNGと言っていたぞ!

俺の様子を不思議に思っているのか、首を傾げる葵にバレないようにチラッと足元に視線を落としてみれば、スカートから伸びるスラッとした脚が目に入る。
おぉ・・・スカートだ。じゃあ・・・


「って、ちがーう!!」


女子の制服なんだからスカートなのは当たり前だろーが!!
あまりにも馬鹿げた自分の考えに突っ込みをいれれば、「なんか今日の虎くん変だよ」とついに葵から言われてしまい、言葉に詰まる。


「大丈夫?」


心配そうな表情を浮かべてグッと距離を縮めてきた葵からはふわりといい香りがして、余計に落ち着かない気持ちになったがなんとか「・・・おぅ」と返事をした。


「そう?じゃ、また後でね」


ひらひらと手を振って教室へ消えていく彼女を呆然と見送る。
クソッ、どうすりゃいいんだよ!


back] [next

*注* 次の話は性描写を含みますので、注意喚起としてパスワード入力になります。




まさかの!山本で!!えっ!?
さてどうなるんでしょう・・・って、次パスワードって書いてあるんでバレバレですよね(笑)
write by 神無



[ back to top ]