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ビタースウィート 前編


「あ、やばいコレおいしい」


テスト週間中という学生にとって憂鬱な期間。中学と違い教科も増え、日々の授業でいっぱいいっぱいだというのに、テスト範囲という名の膨大な量を頭に叩き込まなければならない。正に地獄の期間とも言える。
勉強しなければいけないのは分かっているが、一人だと普段やらない掃除を始めてみたり、目に入った漫画を読んでしまったりとどうしても脱線してしまうし、かといって一人で図書館に行く気にもならない。さてどうしようかと思ったところに、そういえばこの期間は彼氏の部活がない事を思い出したのだ。


「休憩多すぎ」
「いいじゃん。頭使うから糖分が欲しいんですー」


快くとは言えなかったけど、何とか誘いに応じてくれた彼氏の英。普段なら一緒に過ごす事の出来ない土曜日にこうして英の部屋で2人きり。机の上にノートを広げて勉強に勤しんでいるわけだ。
こんなにゆっくりとした時間が取れるのは随分と久しぶりで、正直言うと勉強どころではない。なんて素直に口に出そうものなら帰れと言われかねないから絶対に言わないけれど、内心では浮かれているのも確かだ。
少しでも英と話したくて、休憩という名のおしゃべりタイムに突入してみてるけど、英の視線がさっきから冷たい気がするし、何なら今鼻で笑われた。


「さっきから全然進んでないけど」
「だって難しいんだもん。数学分かんない」
「勉強してるより食べてる方が多いよね」


「また太るよ」なんてグサリと心を刺す言葉を放ってくるのはいつもの事。またって何だよまたって。確かに最近ちょっと太ったのは事実だけどさ。呆れたような目で見るのもやめて欲しい。はぁ、彼女扱いってなんだっけ?って何度目かの思いが浮かんでくる。二人きりだからと言って甘い空気なんて全然流れないし、そもそも英は私のこと女と思ってるんだろうか。そんな馬鹿な事を思ってしまうくらいには糖度が足りない。浮かれているのは私だけという悲しい現実。足りない糖度を糖分で補うように、また一つお菓子を手にとって口の中に放り込んだ。


「これ美味しいよ。英も食べなよ」


とりあえず棘のある言葉は流して、これ以上何も言うなという意味も込めながら摘んだチョコレートを英の口に押し付けてみる。
「ちょ、やめろよ」って、顔を顰めて嫌そうな表情を浮かべられたってめげない。英の拒否には耐性がついてるんだからね。悲しいけど。

くだらない攻防の末、根負けしたのか面倒臭くなったのか。多分後者だとは思うけど、私の手首を掴んでチョコを口で奪い取った英にニヤリと口元が緩む。勝った。と内心で喜んでいれば、スッと英の瞳が私へと向いた。
ほぼ無表情に近い英は、依然私と視線を合わせながらも、唇に僅かについたチョコレートを舌でペロリと舐めとる。まるで私を煽っているような仕草と視線にドクンドクンと心臓が反応して、体の奥に熱が灯った。


「何、そんなに構ってほしいの?」
「・・・え、」
「構ってやろうか」


ふっ、と微かに笑いながら口角を上げた英。そして、掴んだままの私の手を自分の口元へと引き寄せてパクリと指先を口内に含み、舌を滑らせた。
生温かな感触と、触れる舌の熱さ。ツゥッとなぞられた時に走る微かな刺激でピクリと肩が震える。
ついさっきまでは冷たくあしらわれていた筈なのに、一体急にどうしたというのだろう。身にまとう雰囲気をガラリと変えて、部屋の中に流れる空気さえも違ったものになった。
英の視線、声のトーン、触れる手。その全てが優しく変化すると、否応なしに「構ってあげようか」と言った英の言葉の真意を理解してしまう。だって、いつもはどこか素っ気無い英がとびきりに甘く優しくなるのがどういう時か、身をもって知っているから。
だからこそ、どう答えていいか分からずに戸惑っていた。

でも、だからと言って待ってくれる英ではない。わざとらしくちゅっと音を立てて指を離した英は徐に距離を詰めてきて、躊躇なく唇を重ね合わせた。
先程まで指を舐めていた舌が、今度は私の舌を捉える。私のものよりか随分と熱をもっているそれは熱くて、触れられている部分から融けてしまいそうだ。しっとりとした薄い唇に食まれると気持ちよくて、絡み合う舌は時折意地悪く上顎を擦り上げる。

漏れる吐息すら熱を含んだものになった時、そっと離された唇。
急激に体の熱を引き上げられたせいで、物足りなく疼く体。もっとキスして欲しい。もっと、触って欲しい。そんな思いが心に宿る。


「葵、どうする?」
「・・・構って」


まるでその時を見計らっていたかのように問いかけてくる英に、私はもう白旗を揚げるしかない。


「いいよ」


私が望んだから、仕方なくしてあげる。あくまでもそういうスタンスの英に思うところはあるが、この優しさに触れるとどうでも良くなってしまう。
満足そうに笑みを深めた英は、ずっと掴んだままだった私の腕を引いて、ゆっくりとベッドへと導いた。

思えば、随分と久しぶりな気がする。
テスト期間に入る前はバレー部が本腰を入れていたために時間がとれず、私もバイトが入っていたりとすれ違いが多かった。故に学校以外では会っていなかったし、校内では二人きりになる機会なんてあまりない。だから、キスもそれ以上の行為も久しぶりだ。
そう自覚してしまうと、一気に緊張感が増してドキドキと心臓が暴れだした。
私の上に跨った英を必然的に見上げる事になるけれど、この角度から見る顔もかっこいい。だなんて今更ながらな事を思ってしまうあたり、かなりテンパっているのかもしれない。

そんな私とは反対に、照れた様子一つ見せない英は着ていたシャツをいとも簡単に脱ぎ捨てる。
まだ外は明るくて、英の白くて滑らかな肌や細い腰。でも筋肉はしっかりとついている綺麗な体が目に入って、心臓がドキドキを通り越してバクバクしてきた。

スッとトップスの裾からはいってきた手が素肌を撫ぜる感覚に、思わず身を捩ってしまう。


「どうした?」
「いや、あの・・・久しぶりだから・・・緊張、しちゃって」
「・・・ふーん。そうなんだ」
「ね、英・・・」
「ん?」
「優しくして、欲しい」


初めてでもないのにこんな事言うのが恥ずかしくて、逃げるように顔ごと背けた。
面倒くさいって思ったかな。このまま止めちゃったらどうしよう。少しの不安が胸を渦巻く。


「何それ」


案の定、少し不機嫌さを含んだ一言が返ってきて。やっぱり言うんじゃなかったと後悔しながらも恐る恐る英の方へと視線を向けると、その声音とは裏腹にニヤリと意地の悪そうな笑顔を浮かべた英の表情が目に映る。


「いつも優しくしてるつもりだけど?」


肯定を促してくるかのような言葉にゆるりと頷くと、寄せられた英の唇。
さらりと英の髪の毛が触れるのと同時に目を瞑ったのが合図になった。


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*注* 次の話は性描写を含みますので、注意喚起としてパスワード入力になります。




国見ちゃんが好きなお友達からネタを頂いたので、お友達の誕生日プレゼントとして書いてみました!いつも国見ちゃんを書く度にこれは国見ちゃんなのかと首を捻るけど、国見ちゃんだと言い張ります!後編も良ければ!
write by 神無



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