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拍手小話 嫉妬編


 嫉妬(木兎)



光太郎の部屋でスマホを見ていると、偶然見つけてしまった動物の画像。

それが凄く可愛くて、光太郎にも見てもらおうとスマホを差し出した。


「ねぇ見て?この猫可愛くない?」

「んー?そうだな」


自分も一緒に覗き込むようにして見ているせいで必然的に密着してしまったけれど、今は可愛い画像に夢中でいつも感じる恥ずかしさも然程なく、指を動かして次々と画像を表示していく。


「可愛いなぁ・・・猫好き!でも兎も犬も好きだなぁ・・・」


どれを見ても可愛くて、つい口許が緩んでしまう。

画像が切り替わる毎に可愛いと好きを繰り返していたが、光太郎の反応が薄い事に気がついてふと顔を上げた。


「光太郎はどれが好き?やっぱり梟とか・・・、」


揶揄いを含み、笑いながら光太郎の顔を見上げると、思っていたよりも近くにあった顔に言葉の続きを呑んでしまう。

ほんの数センチ身を乗り出せば唇が触れてしまいそうな距離に、慌てて離れようとお尻を動かせばいつの間にか腰に回された手によってグッと引き寄せられてしまった。


「俺はお前が好き」

「えっ・・・、」


至近距離での言葉に心臓が煩く鳴り始め、顔に熱が込み上げる。

腰を掴まれているせいで逃げる事も出来なくて、せめて視線だけでも、と必死に光太郎から逃げ出した。


「さっきから可愛いとか好きとか、俺嫉妬しそーなんだけど?」

「や、だって・・・動物だよ?」


前にペットショップに行った時には、一緒にはしゃいでたのに。
しかも今回はただの画像。なのに何故そんな事を言い出すのか、と首を傾げた。


「だから5秒以内に、光太郎好きって言わないとキスしまーす」


何がだから、なのか。しかもいきなり何なんだと頭の中は疑問だらけ。

楽しげに笑う光太郎に一言言ってやろうと思えば「ごー、」とカウントが始まり慌てる。


「よーん」


カウントされると焦ってしまうのは人間の心理だろうか。

「待って」と静止を掛けても待ってくれる様子のない彼に、頭の中でさっきの言葉を反芻する。


「さーん」

「こ、光太郎っ・・・んぅ」


思い切って口を開いた瞬間。

大きな手が後頭部を包み込み、やや乱暴に唇が重ねられた。

驚きに目を見開いたのも束の間、くちゅりと舌が絡められて、受け入れるように瞼を閉じる。

与えられる刺激を堪えるように光太郎の膝へと手を置けば、ゴトッと音を立ててスマホが滑り落ちた。


「悪ィ、俺が待てなかった」


ワザとらしく音を立てて離れていった唇を見つめていれば、スルリと頬を撫でられる。


「そろそろお前を可愛がりたいんだけど・・・イイ?」


今にも捕食しそうな双眸に見つめられ、もう頷く事しか出来なかった。



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