HQ | ナノ
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -




月曜日の君 後

キラキラと輝きを見せる街並み。
軽やかな音楽。
寒空の中でもたくさんの人々の笑顔が溢れている。

そして沢山のスイーツが並ぶ、私の一番好きな季節。
今年は、もっと好きになる予感がしている

だって、彼と会えるから



*月曜日の君と*



終業式後の教室。
これから冬休みで浮足立つ生徒たちはクリスマス会などの予定を話しながら笑顔でじゃあねーと帰って行く。だが私はまだ笑ってる余裕なんてないのだ。


「結衣さま〜〜〜!!!これどう?!どう?!」
「葵、とりあえず落ち着いて。ちゃんと食べるから」
「うぅ・・・・」


帰る直前の友達を捕まえて試食のお願い。
かれこれ彼女にお願いするのはこの2週間で3度目だ。

ずっと好きだった花巻君と話しが出来て、しかも何故だかお菓子を交換することになったのは2ヶ月前のこと。それから彼に渡す前には誰かに味見のお願いをしている。
元々お菓子を作った時はよく結衣に渡していたが、その場で食べてもらって意見を言ってもらう様になり、お世辞なく感想を言ってくれる結衣を一番信頼している。

昔から一緒にケーキ屋巡ったりしてるだけあって食べ慣れてるし、さすが親友。
だからこそ!今回は絶対に結衣が美味しいって言うまで改良するって決めている。

今までで最高の出来のシュークリームを作る。そして、そのシュークリームを渡した時にきちんと告白する!
そう決めたから。このシュークリームは絶対に妥協できない。


「ん〜この変わり種のモカシューの方は美味しくなった。この味好き。でも普通のシュークリームは甘すぎるかな」


モカシューも一緒に食べてるからかもしれないけどと、食べ終わった後に渡した紅茶を飲みながらの有り難きお言葉。確かに一つづつ作って味見していたかから続けざまの甘さは考慮していなかった。

今までにモカシューの方は生地がふにょふにょになるのはどうかと思うとか、コーヒーが渋いとか、見た目もう少し凝ったらとか。本当にいろんな意見を頂いき、ようやく納得できるものになったと自分でも思っていた。しかしシンプルなシュークリームと言うのは中々どうして上手くいかないのか。

一番初めは「普通」と言われてかなり落ち込んだ。
前にも何度か作っているし、それよりも良い出来をっていうのは至難だ。


「ありがと・・・。もう1回チャレンジしてみる。」
「カスタードの舌触りは絶品だと思うよ」
「っ!!嬉しい!!頑張る!!」
「頑張れ。もう味見してあげられないけど…結果報告期待してる」


それじゃ、とカバンを持ってから私の肩をポンとたたいて教室を出て行く結衣に大声でお礼を言う。今度はこうしてみようと頭でシュミレーションをして気合を入れる。

今週はずっとバイトがある為あまり時間がないが、きっと大丈夫!あんな結衣に協力してもらったんだしね。花巻君に美味しいって言って貰えるシュークリームを絶対作る!

そればかりを考えていて、考えて、考え続けてついに向かえた25日の決戦の朝。私はもう20分程悩み続けていた。前日に用意したシュークリームは冷蔵庫で綺麗にラッピングされている。味も自分で納得のいくものになったと思うし問題ない。しかし、


「何着て行けばいーのーー!?スカート?まさかのホワイトクリスマスだし寒い?!」


今まではバイト中のバイト着か、終わってからの学校の制服でしか会ったことないという事に今更気づいたのだ。
私服のセンスなんて良いかどうかも分からない。

クローゼットの中の冬服全部を引っ張り出して並べてみたものの、あれこれ着すぎてパニック状態だ。
買ったばかりのお気に入りのロングブーツを履こうと決めたもののそれに合う服が分からない。だが今日は早出の為、バイトの時間が迫っている。事前に結衣にでも相談しておけば良かったと思っても後の祭り。

そこからさらに15分悩んだ結果、Aラインの赤のワンピに白のダッフルコート。黒のロングブーツに合わせてベレー帽ともこもこバッグを黒にした。ちょっとスカート短くて足が寒いかと思ったがそこは我慢しよう!

お洒落には我慢も大事だと誰かが言っていたし!ちょっと雪降ってるけど!
変じゃないといいな。姿見の前で一回転してから時計を確認し、慌てて家を出た。

何処かクリスマスが終わってしまったという物悲しさが漂う25日の朝。いつも日本はなんで当日じゃなくイブの24日に盛り上がり終わってしまうのかと不思議になる。
その現象が赤裸々に出るケーキ屋は、昨日の忙しさが嘘のようにまったりとした時間が流れていた。


「・・・長い」


ゆったりとした時間は、待ち遠しさを募らせるには十分すぎる。終了の時間までもう少しなんだけどなと何度も時計を見やるが、先程から10分単位でしか針は進んでいない。
時計を見ては肩を落とす私に、店長が厨房から出て来てクスクスと笑いだす。


「高宮さん、今日は落ち着かないわね。この後デート?」


朝もとてもかわいい服を着ていたしと指摘され、途端に顔が熱くなる。


「はい!いや、いえ!デートなんて大それたものじゃ・・っ!!」
「あら、彼と出掛けるんじゃないの?もう来て待ってるみたいだけど…」
「えぇ!?」


店長がほらと指をさした方向をみると、ちょうど角にあるカーブミラーに自動販売機にもたれかかっている花巻君が映っていた。


「いつもあそこで待ち合わせしてるでしょ?」


ここからだとよく見えるのよねと楽しそうに笑う店長。
全然知らなかった…。穴があったら入りたいと今日こそ本気で思った事は無いかもしれない。


「あと15分だし、今日はもう上がっていいわよ。昨日も残業させちゃったし」


早く彼の所行ってあげてとウインクする店長にお礼を言い、急いで着替える。
お疲れ様でしたと店を出る間際


「見える所ではあまりイチャイチャしないでねー」


とからかう店長から逃げるように店を出たが、恥ずかしすぎてちょっと涙が出そうだ。
とにかく花巻君にあの位置から移動してもらわなくちゃ!

雪はやんでいたが、うっすらと積もった雪に足を取られそうになりながらも角を曲がる。
自販機にもたれかかっていた花巻君が私に気付いてくれてこちらへ歩いて来てくれる。


「花巻君お待たせっ!ちょっとわけありなので早く移動しよ・・・っキャ!」


駆け寄りながら言いかけた言葉は、雪に足を取られることにより遮られる。前のめりに倒れた先に居たのはもちろん花巻君で、見事に抱きつくように突撃してしまった。

まだ履きなれないブーツで雪の日に走ったりした私がバカでしたけど!日頃から鍛えているからか、私がつっこんでもしっかりと支えてくれる花巻君は本当にたくましいと思う。
ちょっとキュンとしちゃう。

だが、こんな申し訳ない格好でいるわけにもいかない!上半身にかかった重心を慌てて戻すように離れると、勢いをつけすぎたのか今度はそのまま後ろへと傾く。あわや後頭部強打かと思ったが、花巻君がとっさに私の手を取り、ぐいっと再び胸へと引き寄せられる。


「あっぶねー。見てて面白いけど、とりあえず落ち着いて」


ね?と抱きしめられたままの状態で言われ、ドキドキと恥ずかしさでどうにかなってしまいそうないっぱいいっぱいの顔で謝る。途端、花巻君がうなだれるように私を抱きすくめてきた。


(照れた顔で涙目にくわえ、抱きしめた状態で下から見上げるとか…反則だろ)


花巻がそんなことを思っているとはつゆ知らず、肩にかかった重みと、胸に押さえつけられてシャットアウトした視界に困惑する。


「花巻君???!えっとどうしたの??私がぶつかったせい?何処か痛めた!?」


以前メールでバレー部のレギュラーだと聞いた。
そんな大切な体にケガでもさせてしまったのかと慌てたが、花巻君から聞こえたのは長い長い溜息だった。


「高宮ちゃんさぁ、なんでそんなに可愛いわけ?」
「・・・・・・・・・・・えぇうぁ!?」


突然の理解できなかったセリフに咄嗟に可笑しな奇声で返事をしてしまう。
しかし花巻君は私の奇声なんて気にせず、本当はもっとかっこつけて言いたかったんだけどなとかささやいている。

先程から耳元で話される声に、少しくすぐったいようなぞわぞわする感覚がして身をよじるが離してもらえない。逆に強く抱きしめられて身動きが出来ない状態になってしまった私の耳に、花巻君の声がダイレクトに響く。


「その可愛さ、俺だけのモノにしたいんだけど」


再びの理解しがたい言葉に完全に思考回路が停まった。
固まってしまった私に、それでも花巻君はたたみ掛けるように言葉を続ける。


「本当は自販機で話しかける前からずっと気になってたんだけど。喋ったことのない子で、しかも店の店員に惚れるとか初めてで声かけづらくてさ…。なのに実際話して見たらやたら可愛いし、胃袋捕まれるし。もーこれはやばいって思ったね」


そこまで言ってからゆっくりと体を離し、しっかりと私の顔を覗き込む。
今まで見たことないくらい真剣で男らしい花巻君のから目をそらす事が出来ない。


「俺と付き合ってください」


停まっていた思考回路がゆっくりと動き出すのが分かった。
じわじわと理解していく花巻君の言葉に、体の熱がどんどん上がっていくのを感じる。


「あー…ダメだった?」


未だに言葉を紡ぎだすことが出来ないでいる私に花巻君が不安そうに尋ねる。

ちゃんと伝えなきゃ!動き出したばかりの脳は上手く言葉をまとめることが出来ないが、それすらも気にする余裕も無いまま話し出す。


「あのね!私もなの!!本当はずっと話したかったんだけど勇気がなくて、話しかけて貰えて舞い上がって。私の作ったの食べてくれるようになっていっぱい会えて嬉しくって!
 今日会う時に今までで最高のシュークリーム作って美味しいって言って貰えたら告白しようって決めてて!! だからね、えっと・・・あのね!

 私は花巻君が好きです!」


そこまで言い切ってから、花巻君の顔が思いのほか近くにあることに気付き離れようとしたが、それよりも先に花巻君の手が私のほほにそえられ、そのままチュッと軽く唇が重なった。と思ったら急にしゃがみむ花巻君。

私は自分が言った事や、さっきのキスにあわあわとなってしまい、花巻君がつぶやいたやべーって言葉は聞こえなかった。


「・・・・・・よし。俺ん家行くか」


何か覚悟を決めたようにすくっと立ち上がったと思ったら、急に私の手を取り歩き出す花巻君に状況がつかめないながらも付いて行く。
花巻君と会ってから、私の考えると言う能力は何処かへ行ってしまったようだ。


「寒いし、また外で滑っても危ないし、その最高のシュークリーム食いたいし、可愛い恰好あんま人に見せたくないしな」


可愛過ぎてみせるの勿体ないと何とも恥ずかしいセリフをさらりと言われ、赤い顔が治まる暇を与えてくれない。極めつけに、立ち止まってから


「それに、人前じゃできないことしたいしな・・・葵と」


と、なんとも楽しそうな笑顔で言ったりするから意地悪だ。
ボンっ!と音が出そうな程に全身真っ赤にさせて視線をさまよわせる私に満足そうな花巻君。

今年のクリスマスはとってもとっても甘く、最高のクリスマスとなった。




後日


「高宮さんってば、見えるとこでいちゃつかないでって言ったのに〜」


という店長の言葉で再び穴に入りたい気持ちになったのは言うまでもない。





無理やり完!
まだ花巻つかみきれてなくて似非ですみません。。。。
write by 朋


[ back to top ]