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「#エロ」のBL小説を読む
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Don't be mean

学校帰り、久々に部活がないという彼氏の家にお邪魔して部屋に2人きり。
かといって別段甘い雰囲気は無く、私は前に流行った恋愛ドラマの再放送を見ていたし、鉄朗はスマホのゲームに夢中だった。
ドラマは今日が最終回で、これまで紆余曲折あった主人公とヒロインが漸く結ばれる所。前にリアルタイムで見ていたから、結末まで全部知っているんだけど何度見ても良いものは良い。

この俳優さんカッコいいし、こんなに甘い台詞言われたら胸キュンだよね。
ドラマの中の甘い二人に感化されて、隣にいる鉄朗を視線だけ動かして見やる。・・・ちょっとくらいくっ付いてもいいかな?
何となく甘えたい気持ちがムクムクと湧いてきて、胡坐をかいている鉄朗に近づきその足へ手を掛けた。


「悪ィ、今いいトコだから」
「あ・・・ごめん」


頻りに指を動かしている姿は真剣そのもので。こういう時に無理矢理に絡んでも機嫌を損ねるだけだから、ゲームが終わるまで待ってゆっくり構ってもらおうっと。
そう、思っていたのに。


「クッソ」


ドラマのエンドロールが流れて、次の番組に変わってしまっても一向に終わる気配はなく、その視線が私に向くことはない。
折角二人きりだし、いちゃいちゃしたいなー。なんて思っていたけれど、鉄朗の態度を見ていたら段々とどうでも良くなってきた。・・・それどころか、ちょっとムカつくよね。
まぁ、付き合って長いからさ、二人きりになった途端に甘い雰囲気に――、とかそういう時期は過ぎたし、こういう自然な空気だって嫌いなワケじゃないけど。さすがにこれだけ放置されたらイラッとしちゃう。


悪態ついてしまう前にコンビニでも行って気分変えようかな。
頭冷やすためにアイスでも買うか?・・・うん、それが良い。そうしよう。自問自答の末に、早速行動へ移そうと腰を上げた。
数歩進んでドアノブへ手を掛けたところで、行き先を告げた方が良いかな・・・と、ふと思って鉄朗の方へ振り返る。けど、私の目に映ったのはやっぱりこちらを見向きもしない鉄朗の姿で、不貞腐れた気持ちのまま部屋を後にした。




◇ ◇ ◇




出て行った時とは打って変わって、フフーンと鼻歌混じりで再び鉄朗の家へ。
食べたいなーと思っていたアイスも買えたし、立ち読みした漫画も面白かった事もあってイイ感じに怒りが冷めた。暇潰しに雑誌も買ったし、これで鉄朗がゲームしてて構ってくれなくても大丈夫だ。

中に鉄朗しか居ないのは分かっているけど、一応インターホンを押してから扉を開けた。
すると、けたたましい足音が奥から響いてきて、驚いて音の方へ顔を向けると凄い勢いで駆け寄ってくる鉄朗の姿。


「びっ、くりした。慌ててどうしたの?」
「いや・・・葵が怒って帰ったかと思ってたから・・・」


だからそんなに焦って来たのか。
自分が悪かったと自覚しているのか、若干ヘコんだ様子に笑いが漏れた。何かもう・・・珍しいそんな姿を見れただけで全部許せちゃうのは惚れた弱みかな。


「いや、カバン置きっぱだし、流石に黙っては帰らないよ」
「あー、そっか。そうだよな」


財布と携帯だけ持ってコンビニに行ったから、帰った訳じゃないのは分かりそうなものなのに…。それだけ焦ったって事だろうか。
眉根を下げて髪の毛をクシャリと乱すその姿はいつもと違って何だか可愛く見えて、思わず口角が上がる。


「ホント悪かったです」
「いいよ。ゲームの邪魔しちゃったのは悪かったし・・・ちょっと甘えたいなーって思ってたんだけど」


靴を脱いで1歩踏み出すと、そこには手を広げる鉄朗が行く手を阻んでいた。


「それだったら今からでも大歓迎」


笑顔に戻りホラ、と言う鉄朗の横をスルリとすり抜け部屋へと足を進める。


「今はいいですー。さっきの話なんで」


残念ながら1度折れた心はそう簡単には戻らない。
さっきと同じ場所に腰を下ろし、何か言いたげな目で見てくる鉄朗を無視して雑誌を開く。そのままアイスも開けて頬張ると、その冷たさと甘さに顔が綻んだ。


「葵、」
「ん?アイス食べる?」


はい、と半ば強引に鉄朗の口へと押し込む。
もちろんアイスが食べたい訳じゃないのは分かっていたけど、もうちょっとだけ意地悪させて欲しい。だって、拒否されたの結構傷ついたからさ。


「コレ美味しいよね。またリピしよっかなー」
「いや、まぁウマイけど」


そうじゃない、と言わんばかりに距離を詰めて座ってきた鉄朗を避けるように、食べ終わったアイスのゴミをゴミ箱へと捨てに立ち上がった。


「葵、こっち来いって」
「え〜だってまだ雑誌読み途中だし」


スルリと腕を触ってきたり、髪の毛を梳くように頭を撫でられたり。読んでいる雑誌を覗き込んでくるその仕草が示している事は分かったけど、あえて知らない振りを決め込んだ。
その視線から逃げるように雑誌のページを捲るけど、実際は鉄朗の方ばかり気にしてしまって服のカラーくらいしか頭に入って来ない。


「葵」


暫くそうしていると、真面目なトーンで名前を呼ばれて、流石に鉄朗へと視線を向ける。


「マジで悪かった。これから気を付けるから」


本当はもうとっくに許していたけど、さっきの私の気持ちを分かって貰おうと意地悪しただけ。けど、少しやり過ぎたかな?
眉を下げて謝る鉄朗を見てそう思った。

雑誌を置いて座っている鉄朗の前に膝立ちになり、その肩に手を置いてゆっくりと唇を重ねる。もういいよ、と伝える代わりのキス。
今日初めて交わしたキスはもちろん軽いものでは終わらなくて、何度か唇を啄んだ後にくちゅりと舌が絡まる。
いつの間にか主導権は鉄朗に移行していて、膝立ちになっていた筈が完全に鉄朗の胡座の上に乗っかってしまい、肩に置いていた手もしっかりと首へと回し密着していた。

キスに夢中になっていると、不意に鉄朗の手が胸へと伸びてきて手を厭らしく動かすものだから、「んっ、」と吐息を含んだ声が漏れる。それを皮切りに服の中にまで侵入してきた手。
一瞬このまま委ねてしまおうかとも思ったけれど。


「ん、今日はここまでね」


手首を掴んで侵入を阻むと、もう片方の手で距離をとった。


「は?」
「許してあげるけど今日だけはお預けです」
「え?マジで言ってんの?」
「うん」


私の表情から冗談では無いことを悟ったのかガクリと頭を下げる。


「だってもうそろそろ帰らないといけない時間だもん」


あのまま流されても良かったけど、偶々目に入った時計に引き戻された。
ドラマ見たりコンビニ行ったりしていたから、いつの間にかすっかりいい時間になっていたみたいだ。
そろそろ鉄朗の親もかえって来る頃だろうし、あまり遅くなるとウチの親も煩いので色々と面倒臭い事になる。


「もう絶対一緒に居る時ゲームしねぇ…」


余程堪えたのか、力無くそう言った鉄朗の寝癖頭をポンポン、と宥めるように撫でた。



◇ ◇ ◇



「高宮さんと喧嘩したんだって?」


翌日、朝練に向かう途中に研磨から振られた話題は未だ若干引きずっている昨日の事で。情報が早すぎるだろ、と思ったが神無は色々と研磨に報告するクセがあるから今回もきっとそれなんだろう。


「喧嘩っつーか、俺がゲームばっかしてたから怒らせた」
「そう…珍しいね」
「お前が抜けそうな点数のままでいるからだろ」


そう、あの時挑んでいたのは他ならぬ研磨だ。
いつもは群を抜いてトップにいるクセに、今回だけは違ったからついムキになってしまった。


「知らないよ。おれの所為にしないで」
「いや、まぁ…全部俺が悪いんだけどな。色々キツかったし反省したわ」
「ふーん…おれ、今違うゲームやってるからしばらくあの点数のままだと思うけど」
「俺ももうやんねーよ!」





絶賛スランプ中に書いた黒尾。
スランプ感漂った感じのになってしまってすみません…。
早く抜け出したいですー!
write by 神無


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