HQ | ナノ
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -




Moments of slumber

遠くで小鳥がさえずるような心地よい朝、及川は肌に触れる空気の冷たさに目を覚ました。


(そういえば裸のままだっけ・・)


自分の今の格好を思い返し、布団から出ていた腕を擦ってみれば思っていたよりもひんやりと冷え切っている。

現在の時刻は朝の5時を過ぎたところ。いくら今日も練習があるとはいえまだ起きるには早い時間だ。
それでも二度寝をするのはもったいない気がして、冷えた体を温める様に布団をかぶり直しながら隣にいる彼女、高宮へと目をやる。

先程まで規則正しい寝息を立てていた高宮は、及川が布団を引いた際に身じろぎしたものの起きる気配はない。むにゃむにゃと幸せそうに何かを食べている様子に及川から笑顔が漏れる。


「無防備な顔しちゃって」


その可愛さからか、幸せそうに動く頬っぺたへと人差し指を伸ばす。
ふにふにと柔らかな感触を楽しむように何度もつつけば、居心地が悪かったのだろう、高宮が「ん〜」と唸ってから薄っすらと目を開けた。


「あれ?起きちゃった?」


寝ててよかったのにと、自分のせいで起きたと事は微塵も気にすることなく高宮の頭をなでる及川。まだ浮上しきらない頭では及川の行動など深く考えられない高宮は、ただ与えられる温かな手のぬくもりに気をよくし、甘えるように及川の胸へと顔をうずめた。


「おはよ・・とおるくんあったかい・・・」
「おはよ。普段もこうやって甘えてくれればいいのに〜」


起きている時は竹を割ったようなさっぱりとした性格で甘えるのが下手なだけに、寝ぼけているとはいえ自ら胸元へすり寄って来る高宮が嬉しくて、満足そうに抱きしめる。
お互いの素肌がサラリとふれあい、先程冷えていた及川の腕を温めていく。


(早起きは三文の徳って本当だな)


滅多に見られない高宮の姿を拝めただけでも三文以上の徳だが、さらに欲を言えば寝ぼけている姿をしっかりと目に焼き付けておきたいと、抱きしめていた腕を緩め、顔を覗き込む。


「葵?」


先程確かにおはようと挨拶を交わしたので起きていると思っていたが、高宮の瞼は閉じられ、名前を呼んでも反応がない。
よくよく耳をすませばスヤスヤと可愛らしい寝息が聞こえてくる。


(さすがに無理させ過ぎたかな・・)


いくら初めてのお泊りで興奮していたとはいえ、立て続けに3ラウンドはきつかっただろうと及川は昨日の自分を振り返り反省する。



もともと高校生のカップルがお泊り出来る機会なんてそうそうあるはずもなく、いつもHはしてもそのまま朝を迎えるなんてできないでいた二人。今回はたまたま高宮の両親が親族の結婚式で家を空けることになり、高宮は招待されていないしバイトもあるので留守番せざるを得なくなった。
彼氏として何度も高宮家に訪れご飯なども共に頂き交流を深めていた及川は、高宮の両親より大変信頼されており、家で娘を一人にするのが怖いから一緒にいてくれないかと宿泊をお願いされたのだ。
及川を婿にもらえればと日々考えている母親の策かもしれないが…


及川にしたら願ってもいないお誘いに二つ返事で承諾をし、こうして初お泊りというイベントを手に入れたのだ。しかも幸運なことに高宮のバイトが早上がりの日。
普段料理をあまりしないという高宮が及川の為にカレーを作って待っていたというオプション付き。なんの隠し味もない、ごくごく普通のカレーがいつもの何倍も美味しく感じられるほどの高宮からの愛情を受け取った及川が張り切らないわけがない。


優しく、激しく、焦らすように、攻めるように
何度も何度も何度も何度も高宮を求め、食らいつくす。
どんなに求めても、どんなに繋がっても、もっともっとと欲が及川を支配する。そんな獣のような一夜だった。

最終的には全く身動きが取れなくなった高宮がぐったりとベッドで息を整えている間にそのまま眠りに落ちてしまったのだ。

今こうして二度寝するのも無理はない。
きっと腰も痛いって言うだろうなと、及川は抱きしめていた手で優しく高宮の腰をなでる。
改めて触る素肌は、及川が想像していたよりも心地よい手触りで、撫でるにつれだんだんと触り方が厭らしくなっているなと気づき、失笑する。


(この状況で息子のやる気出させてどうすんのさ)


ただでさえ朝のに加えて、先程昨晩の事を思い出して反応しているというのに自身で煽って自滅しているようなものだ。

散々無理って言われたのにヤリ続けといて、今朝もHしようなんて高宮に言ったらどうなる事かと想像して冷や汗を流す。何とかして高宮が再び目を覚ます前に落ち着かせねばと密着していた肌を離そうと下半身を遠ざけて深く呼吸をする及川の焦りなどお構いなく、触れていた温かさが無くなる事への執着か、及川の足を追いかけるように体を寄せ、逃すまいと足を絡める高宮。
普段裸で寝ることなどしない高宮は、今の自分の格好などきっとわかっていない。生まれたままの姿で相手の足をからめとる様に自分の足を上げれば、普段隠れている大事な部分がどうなるかなど頭の片隅にもないのだろう。
高宮の大事なところと自分の息子がご挨拶しそうな状況に、及川の精神はすり減らされていく。


(ホントなんなの、試してんの?!残酷スギんだけど!)


流石にここで疲れて寝てる彼女を犯してしまうほどの鬼畜さは持ち合わせていない及川は必死に打開策を考える。焦りと緊張と興奮から自分の手がしっとりと汗ばんできているのがわかる。
とりあえず高宮のこの格好を正そうと、自分に乗っかかっている足を持ち上げるように膝裏に手を入れた時だった。


「・・んん・?とぉるくん?・・・」


触れたからなのか、布団が持ち上がり冷たい空気が入ったせいなのか分からないが、寝ぼけながら及川へと声を掛ける高宮。
あまりの最悪なタイミングに心臓が嫌と言うほど大きく動き、全身へ大量に血を送り出す。驚き過ぎて動きを止めてしまったことを悔やんでも時すでに遅し。


「・・・なに・・してるの・・」


目を覚ましたら全裸で片足持ち上げられ、大事な部分を全開にされたところへ完全にやる気を出している息子をあてがわれているともとれる状態に、高宮の及川を見る目が冷たいものへと変わる。


「イヤ!違うんだって!」


完璧に誤解されていると判断し、すぐに弁解しなくてはと焦った拍子に息子が高宮に触れ、高宮の体がビクリとはねる。


「・・最低・・・放して」


いつも聞かないような声で呟かれたセリフに素直に従い足を下ろすころには、息子もみるみる大人しくなっていった。




「ホントごめんなさいっ///////」


もう何度目になるかわからない高宮の謝罪に苦笑いを浮かべながら「もういいのにと」高宮の頭をなでる及川。

あの後きちんと事の成り行きを説明された高宮は、自分の行動への羞恥心と及川を責めた罪悪感から謝ったり布団にもぐったり朝ご飯を準備しながら指切ったりと見事にテンパっている。
普段は落ち着いているだけにまた珍しいものが見れたと始めは楽しんでからかっていたが、出掛ける時になっても落ち着かない高宮が今度は心配になってくる。


(帰ってくる頃には痣がいくつか出来てたりして)


今でも玄関先で忘れ物は無いかとなぜか自分のポケットを探る高宮に大丈夫だからと告げて靴を履く。


「ん〜そんなに気にするなら今日も夕飯葵が作ってくれたら許す!ってのでどう?」
「うぅ・・ほんとにごめんね・・・・頑張ってご飯作る」


朝見送ってくれて、帰りはご飯を作って待っていてくれる人が居るなんてなんだか新婚さんみたいだなと感じて幸せになる及川。
それをそのまま高宮に伝えれば、顔を真っ赤にさせながら「もうっ///」って返されてますますその気になってしまう。


「ねぇねぇ帰って来た時にアレやってよ。ご飯にする?お風呂にする?それとも‥ってやつ」
「ばかっ///練習遅刻するよっ!」
「こんな時しか新婚さんごっこできないのに〜」


そんな幸せな冗談を言いながら家を出れる事に、いつも以上に浮かれて高宮をからかってしまう及川。
帰るとき連絡してねとか、リクエストあったら早めに送ってねとか出掛け際に言われるセリフでさえも気分を掻き立てる。あまり緩んだ顔で行くと岩ちゃんに怒鳴られるかなとか思いながらもにやけ顔が止まらない及川。


「それじゃ行ってきまーす」


流石にいつまでもジャレていたら本当に遅刻してしまうなと気持ちを切り替え、張り付いていた足を進める及川。

名残惜しそうに高宮の頭に乗せていた手をどかしドアを開けようとした及川は、後ろへ引っ張られる小さな力に再び足を止めた。驚きながら振り返れば、からかっていた時よりもさらに顔を赤くした高宮が自分の服の裾を引っ張っている。


「・・ん」


そう言って目をつむって少し唇を突き出してくる高宮に思わずふっと笑ってしまった。


(も〜ホント可愛いんだから)


なんだかんだ言って高宮も新婚さん気分を味わっていたのかと思うと嬉しい。
突き出された唇に、軽く自分の唇を重ねわざとチュッと音を立てる。


「行ってきます」
「・・行ってらっしゃい///」


照れながらもやってくれる高宮を残してこのまま行ってしまうのはもったいない気がして、及川はもう一度、今度は深く唇を重ねた。
舌を絡ませ存分に堪能するようなキス。


「ごちそーさま♪」
「っっっっっ///」


してやったりと言う顔で颯爽と出て行く及川の背中に、声にならない高宮の悲鳴がしばらく響いていた。





初めての及川さんで第三者視点なんてするんじゃなかった・・・。
もうよくわからない文になってしまって申し訳ないです。

ただ朝のまったりを書きたかっただけなんですねどネ…

write by 朋


[ back to top ]