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暴風で暴走


『東京全域に大雨、暴風警報』


朝食の最中にテレビの速報で流れたテロップに顔がにやける。
朝起きた時から風の音がすごかったし期待していただけあって喜びも倍増だ。


「雨降ってないのに大雨警報なのね〜」


そんな母親の独り言に好都合と返すとすっごく呆れた顔をされた。


「どうせ光太郎君のところに遊びに行くんでしょ?気をつけなさいよ」


ほんと誰に似たのかしらとつぶやく母は、出掛けるのを見逃してくれることからきっと身に覚えでもあるのだろう。

光太郎とは私の彼氏の名前。
バレー部で男らしいのに私と一緒にアホができるノリのいい子で母も気に入っている。だからこそ、こんな日に会うとすぐにわかっちゃったんだろうけど。

暴風警報=休み
本当は自宅待機なのだけど、学生にしたら休みのようなものだ。遊ばなくてどうする。


【台風になったらさ!例のヤツ実行しようぜ!】


昨日の光太郎とのメールのやり取り。
前々からやろうと言っていたことがついに実行できるのだと急いで身支度を整えているところにメールを受信。


【準備できた!いつもの河川敷で待つ!】


やる気満々のスタンプと共に送られてきた文字に私のやる気スイッチも入る。
大きな手提げかばんにアレもコレもと荷物を詰めていざ出陣!自宅から歩いて10分ちょっとの河川敷は私たちのお気に入りにの遊び場だ。
今日は強風に煽られていつもより時間がかかったけど、思うように進めないのがまた楽しかった。

笑いながら到着した私に、光太郎も「今日の風やべぇよな!」とハイテンションだったのでお互いに笑ってしまった。


「風無くなんねーうちにやろーぜ!」


暴風警報が出ていても風が無い日だって多いが、今日の風はまさに暴風。もってこいの天気なのだ。
私が持ってきた手提げの中からいくつか道具を取り出す。


「じゃーん!まずは定番からね!」


そう言って光太郎に手渡したのはバドミントンのラケットと羽根。
お互い駆け足で一定の距離まで離れて向き合う。
よぉぉっしゃぁ〜との勇ましい掛け声と共に高く上げられた羽根は、ラケットに当たることなく私の方へと飛んでくる。


「・・・ぷっ!あははははは!ナイス空振り!!」


ブオンと風に負けないほどの勢いで風を切ったラケットを見つめ光太郎がもう一度だ!とトライするが結果は一緒。私の笑いが増すだけの結果となった。


「ぬぉ!この風やっぱやべーぞ!葵もやってみろって!」


マジでビビるからと手渡された羽根を笑いながら受け取り構える。
私は光太郎のように上からじゃなく、アンダーサーブだ。風を考慮して前方へ羽根を投げ、いい感じで風に乗って戻ってきてくれたところをラケットで迎え撃つ。

ぺしっと頼りない音とともに上がった羽根は半分も行かないうちに私のもとへと帰って来た。


「ぶはっ!すげーー!!魔球だな!」


俺もやるとこちら側に来て再び放たれた羽根は、うまい事風に乗って帰って来たのでそのままラリーを続けてみる。
まさかの隣に並んでのラリーに次第に笑いが絶えられず、どちらからともなく崩れ落ちた。


「ははははははっ!ありえなーーい!!」
「マジすげー―!この風強ぇーな!」


ただ羽根が返ってきて落ちるというだけでここまで笑えるのは光太郎とだからだろう。

他のも!と再びカバンをあさって出してきたのは昔懐かし竹とんぼ。早速やろうぜと立ち上がり、風上を向いている光太郎に反対を向く様に指示。風に乗せて飛ばすなら風下に向かって飛ばさなきゃ。

おぉ!と言ってすぐにくるりと反対を向いて、勢いよく竹とんぼを飛ばす。
高々と上がった竹とんぼはきれいに風に乗って飛んでいると思いきや、途中から全く羽根が回っていなかった。


「すげー飛ぶなー!!!」
「いやいやアレ飛んでないから!飛ばされてるから!」


投げたのと変わらない状態になってるよと言えばマジか!?と驚きながらも飛ばされていく竹とんぼを追いかける。竹とんぼが落ちる距離まで走ったらかなりの距離をダッシュしてしまい、息があがる。


「ぶっ!葵死にそうだな!?」
「竹とんぼで殺されるかと思ったよ…」


肩で息をする私と、竹とんぼで殺される発言がツボったのか光太郎が竹とんぼを掲げコイツ凶悪だと爆笑しだす。
その笑いはなかなか止まらず、竹とんぼを掲げて震えている木兎がおかしくて息が整わないうちに私も笑ってしまった。


「はぁ・・ククク・・はーやばい・・あはは・・・息が・・ふはっ!苦しいっ」
「死ぬなー死ぬんじゃない葵――!」


コントの様なやり取りのおかげで笑いが止まらないのは私たちにはよくあることで、ひとしきり力尽きるまで笑い転げる。


「はぁ〜苦しかった」
「おー次は疲れないのにしようぜ」


これ以上は葵が危ないと茶化す光太郎に軽くパンチをしてカバンをあさる。


「あ、これならいいかも!風もメチャ感じられるし」


取り出したのは昔の正月の定番。
なぜ私の家にあったかは謎だが、そこそこりっぱな凧だ。

凧揚げ初めてだと興奮する光太郎。
じゃあ最初に私がやるねと凧を持ってもらって風上に走ろうとしたが、強風の為か走る必要なく風を受けて上がっていく。


「おぉぉぉぉ!すげーあがるな――!って葵!?」


強風を盛大に受けた凧はかなりの力で、私は持っている糸がまかれた握りが飛ばないようにするだけで必死だった。


「ちょっ!!光太郎助けて!!」
「マジか!任せろ!!」


今にも飛んでいきそうな握りを私の後ろから覆いかぶさるように握ってくれる。
私の手も握る様に持ってるし、なんだか真後ろに光太郎を感じてちょっとドキッとするが今はそれどころではない。

さすがに男の子の中でも力のある光太郎が助けてくれたのでかなり楽にはなったが…


「マジでコイツすげー力だな!!風受け度最強クラスだ!」
「・・・だよね。どうしようね?あげ続ける??」


手放してしまうのは危険すぎるし、道路へ飛んで走行中の車にでも当たったら事故になりかねない。しかし、かなりの強風に乗っている凧はこちらからの刺激ではピクリとしか反応してくれない。

まさかこの風が収まるまでこのままか!?
今回の台風はかなり速度が遅いと言っていたし、この後雨でも降ったらどうする?
しばらく考えてみたものの答えは出ず。2人して濡れ鼠確定かなんて焦っているところに聞きなれた声が響いた。


「・・・木兎さん、高宮さんなにやってるんですか」


かなり呆れたため息交じりのこの声。
見なくてもわかる


「「赤葦ーーー!!」」


救世主の登場に満面の笑みを向ければ、一瞬眉をひそめる赤葦。


「まさかとは思いましたけど…」


こちらからの説明をしなくても状況を察してくれた赤葦が、糸を伝って行って凧を簡単に下す。


「おぉ!赤葦やるな!」
「ふはは!あれなら私でも出来たじゃん!」


確かになとあんなに必死に持っていたのが可笑しくなって2人してまた笑ったら赤葦がすごい顔で見てきた。


「お2人とも…ちょっといいですか」


赤葦のいつもよりも幾分か低い声と据わりきった目にピタリと笑いが止まる。
あぁ、これはやばい。いつもよりも長いお説教モードに突入だ。

「前から言っていますが…」とか「危険だと何度言えば…」とかおおよそ年下からは言われなさそうなセリフがつらつらと…。毎度も言わせてる私たちがいけないのだけど。


「ところで赤葦はなんでココへ?」


話を変えようと試みたが「こんなことだろうと思って確認に」と呆れられ、説教が続いてしまった。


「俺が来なかったらずっとああしてるつもりだったんですか?」


そのうち疲れて凧を手放して大変なことになってたかもしれないんですよと言われ、すみませんとしか言えなくなる。
それでも赤葦は私たちを心配して言ってくれてるってのもわかるから可愛いのよね。


「もう二度とやらないでくださいね」


赤葦の忠告に素直にハーイと返事をしてたらお説教タイム終了。
そろそろ痺れてきた足を崩し、地べたに座り込む。


「あ、でもさっきの体勢さ、光太郎の男〜を感じれて・・ちょっとドキドキしたよ」


男の子の力強さも感じられたうえに、後ろからハグされてるみたいだったし。思い返してみるとなんだかちょっと照れるくらいに近かったしね。

そんな私の発言に、光太郎も思い返したのか「お、ぉう」とか言って照れていた。
普段友達ノリが強いだけにこういう雰囲気に慣れていなくて2人して照れ笑いをしあう。


「はぁ・・・ちゃんと反省してますか?」


赤葦の本日だけで何度目かの呆れたため息に「ごめん」と返したけど多分また怒られる様な事するんだろうな。
光太郎もそう思っていたのかお互い少し赤い顔のまま見合ってへへっと笑ってしまう。

そんな私たちの意図を察した赤葦が再度説教を始めてしまったのは言うまでもない。




木兎のギャグ的なのメチャ書きやすい!
エロいのばかりじゃなくたまには笑いもご提供ww
ちなみに管理人(朋)も台風の中遊びたい派です。

write by 朋


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