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Shortness of breath


「東京タワーの展望台に行きたい」


話している最中、何の脈絡もなくいきなりそんな事を彼女が言い出したのは先週の話。
思い立ったら行動派の葵はそれから計画を立てていたようで、俺の部活が午前中で終わった土曜日の今日。本当に赤く聳え立つタワーの前へと連れて来られた。


「わぁ・・・近くでみるとやっぱり凄いね!」
「・・・ソーダネ」
「ちょっと鉄朗、テンション低くない?」


非難めいた視線を送られてもどうしようもない。むしろ東京タワーでテンションをあげろっていう方が難しいんじゃないか?久しぶりの午後フリーだし、別の場所の方がよかった・・・って言う気持ちがちょっとある。


「そういう葵は楽しそうだな」
「うん!来たかったからね!」


でも、満面の笑みを浮かべてこんなに楽しそうな葵を見ていると、まぁ付き合ってやろうかっていう気になってくるから不思議だよな。
いつも時間が取れなくて我慢させてるし、たまには葵のプランに乗っかるのもいいかもしれない。
土曜日だけど時間帯のせいか目に見えた混雑もなさそうだ。


「スカイツリーじゃなくて東京タワー?」
「そうそう。昔ながらのがいいんだって!スカイツリーに行く機会はきっとあるけど、東京タワーって自分で行こうって思わないといかないじゃん」
「ふーん。そんなもんかね」


ま、東京タワーってメシ屋とかも確か充実してたような気がするし。思うよりかは時間潰せるかもしれねーな。
とりあえずさっさと入ってメシにしよう。部活の後何も口にしていなくて空腹は既にピークを迎えている。

葵の手を引いて入り口へと足を進めた、が。思い通りに行かせてくれないのがこの彼女だ。


「ちょ、鉄朗!テっちゃん!あっち!」
「なに?」
「見て!階段で上まで行けるみたいだよ!行こうよ」
「え〜・・・」


何を見つけたかと思ったらコレかよ・・・。
確かに葵が言うように外階段は上れるようになっていた。けど、見上げても終わりなんてどこにあるか分からないくらいの階段。それを・・・上るのか?


「マジで言ってんの?」
「楽しそうだしいいじゃん。それに、女の私が行けるのに運動部の鉄朗が上れないなんて」


そんな訳ないよね?と挑発的に言う葵。
俺をノせるために態とそういう風に言っているのは分かってる。普段ならノってやるとこだけど・・・さすがにコレはなぁ。

チラッと階段に目を向けると「600段」という数字が目に飛び込んできて余計に萎えて項垂れる。600段って・・・トレーニングの域だろ。こういうのは部活だけで十分だっつの。


「葵チャン、俺情けなくていいからエレベーターで行っていい?」


葵の方に振り返って言うが、そこに姿はなくて。
「先に行ってるねー」と声の聞こえた方に顔を向ければ、既にチケットを購入して階段を上ろうとしていた。

・・・ホント、勘弁してくれ。

仕方なく、本当〜に仕方なく階段の方へ歩いてチケットを購入する。既に葵の姿は見えなくなっていたが、どうせ上で会えるからいいかとゆっくり上って行く事に決めた。
なのに、だ。


「あれ?女の子なのに階段から行くの?」
「そうです。外の景色見ながら上れるっていいですよね」


どっかの男に声を掛けられているのが聞こえて、慌てて階段を駆け上がった。
思ったより早く葵の姿を捉えると、駆け上がっていた足を緩めて一段飛ばしでその距離を縮める。何悠長に話してるんだよ・・・どう考えてもナンパだろ。もうちょっと危機感持てって。


「あれ?ハンディあげたつもりなのにまだここにいたの?」


なーんて、そんな思いは一切出さずに飄々とそう言い放つ。
こう言って煽ってやれば葵は絶対に、


「は?鉄朗のこと待っててあげたんだし。これから本気で上るから!」


ほら、食いついた。
本当単純で可愛いヤツだよ。

葵にバレないように男の方を睨みつけると、悔しそうにしながらも引いていった。
こういう時身長高いと便利だよな・・・威圧感出せるし。


「絶対負けないっ」
「あ、オイ!」


男を牽制するために葵から気をそらしていると、彼女は勝利宣言をしてタンタンッと軽快に階段を駆け上がっていってしまった。呆気にとられてその姿を呆然と眺める。
いや、どう考えても俺の煽り方が悪かったけど・・・マジですか。

はぁ・・・、と今日何度目かの溜息を付きながら足を動かした。大体普段から部活やってる俺に勝てるわけねぇのに。


「マジで勝負すんの?」


葵みたいに駆け上がることはせずに、足のリーチを生かして一段飛ばしで確実に進んでいき、彼女の真後ろに位置づけてそう問いかけた。


「はぁっ・・・マジだし!」


プッ・・・もう息切れてる。
早すぎじゃね?最後まで持つのかね。


「じゃあ負けた方が罰ゲームな」
「っ、望む、ところ!」


っしゃ!俄然ヤル気出たわ。だって俺が勝つに決まってるし。
何してもらおうかな・・・なんて考えていたら顔が自然と緩んでしまう。

600段という聞けば気の遠くなる段数も、いざ駆け上がってしまえば10分にも満たない。
ずっと葵の真後ろに着いていたが、終わりが見えてきたときに一気にペースを上げて葵を抜き去り展望台へと到着した。


「っはぁ・・・さすがに疲れたな」
「はぁ・・・っ、ずる・・・はぁ」


肩が大きく上下していて、言葉を発するのも辛そうな葵の背中を摩ってやる。
大丈夫か?この調子だと絶対明日筋肉痛とかになりそうだよなコイツ。


「ねぇっ、このままプリクラ撮ろうよ!」
「はぁ?」
「面白そうだし!ね?」


息も整っていないのに意気揚々と俺の腕を引っ張って進んでいく。
もうここまで来たら何でもいいか。なんてほとんど投げやりな気持ちで葵の好きなようにさせてやった。

プリクラって、メイクとかちゃんとしてから取りたがるもんじゃないのか?階段を全力で上ってきた後に撮るって・・・本当、変わってるわ。
誰も並んでいない機械へと入り、お馴染みの機械の声で何枚か撮った後落書きするための場所へ移動する。


「あははっ!見てこの顔!めっちゃ疲れてる」
「おー。顔死んでんな」
「ヤバイね!おもしろい」


楽しそうに笑いながら器用に落書きをしていく葵をジッと眺める。
まぁ、楽しいなら良かったけど・・・絶対罰ゲームの事忘れてるよな。


「あー、やっと普通に呼吸できるようになった。息切れちゃったけど、たまにはこういうのも楽しいね!」
「・・・俺はどうせならコッチの息切れの方がいいわ」
「ん?何・・・っ、!」


近い距離に座る葵が俺の方を向いた瞬間に、唇を塞ぐ。
驚いた様子が伝わってきたけどそのまま舌を侵入させて舌を絡ませた。


「っちょ、」


俺の胸を押し返すように抵抗してくる葵だけど、そんなに弱い力じゃビクともしない。むしろ、逆に引き寄せてより密着する体勢に持っていってキスを深くする。
上顎を舌で撫ぜてやると葵から「んっ」と色っぽい声が聞こえて、余計に火がついた。
ちゅく、と舌が絡まる音も周りの喧騒に掻き消されて俺たち意外に聞こえる事はない。狭く密着したこの空間でキスを交わしあった。

機械の間の抜けた落書き終了の合図と同時に唇を離すと、また息が上がっている葵が睨みつけてきた。


「っ・・・なに、すんの」
「なぁ。さっきの罰ゲーム」
「え?なに・・・」


だけどそれを物ともせずに、さっきからずっと考えていた罰ゲームの内容を口にする。


「東京タワー満喫した後でいいから俺の家来て?」
「うん・・・、それは良いけど」
「シャワーとか無しで帰ったらすぐにヤリたい」
「えっ!?」


焦る葵をみてニヤリと笑ってしまう俺は、我ながら性格が悪いと思う。さっき階段を駆け上がった所為で多少なりとも汗をかいているはず。葵は行為の前に必ず身体を洗いたがるから、葵にとっては充分罰ゲームになるよな。


「そ、それは・・・」
「俺はそっちの方がイイ」
「・・・変態」


恨みがましい視線を送られたって、意見を変えるつもりはない。
こんな機会でもなければ出来ないしな。抵抗されたらされたで燃える・・・って、ダメだ俺。最悪だわ。


「とりあえずメシ行こーぜ。腹減った」
「・・・うん」


もう葵の頭の中には帰った後の事しかないんだろう。
メシの最中も、あんなに楽しみにしていた展望台も心ここにあらずといった様子でボーッとしていた。

だから結局当初よりも大分早く東京タワーを後にする事になって、俺の家に向かう。


「プリクラ・・・折角撮ったのに、取るの忘れてきた」


キスに夢中になりすぎたせいか、機械から出てきたプリクラを取り忘れた事に気付いたのは全てが終わったベッドの上だった。




黒尾・・・なんで普通に書けないんだろう私。
何故か変態になってしまった。ごめんなさい。

ちなみに、東京タワーの内部の事は全然分からないので捏造してます。
お叱りは勘弁してください。。。
write by 神無


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