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「クロフォード様、ウェルズ氏がソロンの種付けを見てみたい、とおっしゃってますが。いかが致しましょう?」

 副業のために雇っている秘書のシルヴァからの電話に、クロフォードは迷った。断ってもいいが、相手は本業の工場経営でも関わりがある上に、気まぐれで知られる男だ。臍を曲げられて今後の取引に支障が出るのは避けたい。

 しかしソロン用の雌はまだ開発途中だったはずだ。
 いま無理をさせて使い物にならなくなっても困る。
 めっきり白髪の増えた濃いブラウンの髪を後ろに撫で付けた頭をひと撫でし、

「……地下に連絡をして雌が使い物になってるかどうか確認しろ。まだ使えないようなら、ウェルズ氏には三日の猶予を貰え」

 クロフォードは秘書にそう指示して通話を切った。
 先日、畜舎を見回った時、ソロンの雌はまだ目標値の半分の大きさのディルドで苦悶していた。クロフォードはちょっと考えた後、再び携帯電話を手に取り、畜舎に繋いだ。

「私だ。シルヴァから連絡はあったか? ……そうか。いや、それならいいんだ。ああ、粗相をさせないようにしろ」

 畜舎の管理人の答えに、クロフォードは安堵した。雌は既にソロンと交わっていたようだ。しかし意外でもあった。

「……素質があったのかな」

 今度こそうまくいくかもしれない、と期待して、クロフォードは午後から出席をする予定の会議の準備に取り掛かった。


   * * *


 午後9時。本業の業務を終えたクロフォードは、ハイヤーで自宅に向かいながら、電話をかけた。

「ああ、シルヴァ。ウェルズ氏のための準備はどうだ? そうか。カメラはもう回っているのか?ああ、じゃあ見てみよう」

 話しながらノートパソコンを開き、シートに据え付けられた可動式のデスクに乗せる。畜舎のモニター映像が受信されると、画面には眩しいほどのライトに照らされた男の姿が映った。

 筋骨逞しいその男は、全裸だ。年は、38歳だったか。見事に筋肉の盛り上がった両腕は後ろに回されて、分厚い鉄枷で繋がれている。白い台座に膝をつき、大きく開かされた太腿は両脇の二本の支柱に短く調節された鎖で繋がれ、その首に巻かれた首輪から伸びた太い鎖も二本の支柱に括りつけられており、男は上体を僅かに前後させる程度の身動きしかできないようにされていた。

「うん、いま見ているが、口枷とコックリングが無いようだが? ……ソロンが? そうか、それならいいが。薬は使ってるのか? 必要ない? ……なるほど、そういえば以前薬漬けにしたヤツから生まれたモノはすぐにダメになったな。しかし、弛緩剤も無しで入れられるのか?」

 クロフォードがキーを叩くと、モニターは切り替わり、繋がれた男の尻が背後からアップになる。

 開かされた尻肉の間から、ディルドの底が見えている。それは500mlのペットボトルほどの大きさで、ソロンを受け入れるにはまったく足りない。

「本当に一度は交わったんだろうな? 穴が小さいようだが」

 懸念するクロフォードに、畜舎の管理人は、まったく問題ない、と答えた。

「オーナー。ご心配には及びませんよ。あのソロンってのはまったく大したヤツで。今まで散々失敗して学習したらしい。うまいことやるんで、まあ見てて下さい。おっと、そろそろウェルズさんもお待ちかねなんで、ショウタイムといきましょう。では」

 さっさと電話を切り上げた畜舎の管理人、テオはライトの熱気に炙られながら尻をもじつかせる種つけ用の雌を見遣った。




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