「ちょっと手伝ってあげようぜ」
「……」
軽い口調でそう言う明良に、嵐は閉口した。
明良の物好きに付き合わされるのはいつものことだが、なんでまたよりによって……。
しかし、そんな嵐の心情など知るよしもなく、明良はさっさと車を降りると、女の子のほうへと近づいていってしまう。仕方なく、嵐もしぶしぶその後に続いた。
「こんにちは」
明良が愛想よく声をかけると、女の子はゆっくりと顔を上げた。
「こんにちは」
嵐と明良を交互に見ながら、はきはきとした口調で挨拶してくる。
「四つ葉を探してるんだろ?」
「うん」
「どれどれ…」
そう言って明良が女の子の隣にしゃがみ込むと、
「一緒に探してくれるの?」
「うん」
明良が頷いた途端、女の子の顔がぱっと輝いた。
「ありがとう、お兄ちゃんたち。もうあまり時間がないから、すごく助かる」
そう言いながら、にっこりと明良に笑いかけ、そのままの笑顔で嵐を見つめてくる。
内心「まいったな」と思いながら、嵐もその場にしゃがみ込んで一緒に四つ葉を探し始める。なんだかんだ言いながら、実はかなりお人よしだったりする嵐なのだが、本人はちっともそのことに気付いていない。
そんな嵐の様子を見て、
「ありがとう」
女の子は本当に嬉しそうに笑った。
そうして、しばらくの間、三人で必死になって四つ葉を探していた。
しかし、なかなか四つ葉は見つからず、いつの間にか冬の太陽が西に傾きかけていた。
「そろそろ陽が暮れる」
何気なく嵐がそう言うと、女の子ははっとして顔を上げた。そして、まるで睨むように太陽を凝視する。
女の子の唇がかすかに震えた。
「お願い。もう少しだけ……」
切羽詰ったようにそう言う。
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