「ちょっと手伝ってあげようぜ」
 「……」
 軽い口調でそう言う明良に、嵐は閉口した。
 明良の物好きに付き合わされるのはいつものことだが、なんでまたよりによって……。
 しかし、そんな嵐の心情など知るよしもなく、明良はさっさと車を降りると、女の子のほうへと近づいていってしまう。仕方なく、嵐もしぶしぶその後に続いた。

 「こんにちは」
 明良が愛想よく声をかけると、女の子はゆっくりと顔を上げた。
 「こんにちは」
 嵐と明良を交互に見ながら、はきはきとした口調で挨拶してくる。
 「四つ葉を探してるんだろ?」
 「うん」
 「どれどれ…」
 そう言って明良が女の子の隣にしゃがみ込むと、
 「一緒に探してくれるの?」
 「うん」
 明良が頷いた途端、女の子の顔がぱっと輝いた。
 「ありがとう、お兄ちゃんたち。もうあまり時間がないから、すごく助かる」
 そう言いながら、にっこりと明良に笑いかけ、そのままの笑顔で嵐を見つめてくる。
 内心「まいったな」と思いながら、嵐もその場にしゃがみ込んで一緒に四つ葉を探し始める。なんだかんだ言いながら、実はかなりお人よしだったりする嵐なのだが、本人はちっともそのことに気付いていない。
 そんな嵐の様子を見て、
 「ありがとう」
 女の子は本当に嬉しそうに笑った。

 そうして、しばらくの間、三人で必死になって四つ葉を探していた。
 しかし、なかなか四つ葉は見つからず、いつの間にか冬の太陽が西に傾きかけていた。
 「そろそろ陽が暮れる」
 何気なく嵐がそう言うと、女の子ははっとして顔を上げた。そして、まるで睨むように太陽を凝視する。
 女の子の唇がかすかに震えた。
 「お願い。もう少しだけ……」
 切羽詰ったようにそう言う。


- 32 -

[*前] | [次#]
[表紙へ]
[しおりを挟む]





0.お品書きへ
9.サイトトップへ

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -