そうしているうちに五年が過ぎ、人のいる場所を夢見出来るようになっていた。
そして紫歩は見た。
弟と災いの子として告げられた四才くらいの女の子―たぶん妹だろう―紫歩を見捨てた両親が見えた。
あまりにも平凡で幸福そうな光景に、紫歩は呆然と夢に見入った。
“お前は必要ない”
その光景は、確実に紫歩を拒んでいた。
訳のわからない感情が紫歩の胸に芽生え、幸福そうな弟妹たちに嫉妬した。
訳も無く苛立ち、予見詩人に両親の居場所を報告したのが先月の終わり。
数日前、両親と弟妹が死んだことが紫歩に伝えられた。
水忌から逃げ出したことなどを考えて、殺されたのだろうと言うことが、容易に想像できた。
祖父母はかなり前に亡くなっていたこともあり、東堂は紫歩を除いて誰一人としていなくなった。家は傍流だったが、予見師としての能力はとても高かった紫歩は、予見詩人を経験せずに洗礼名を受けた。
“最丞紫月醒藍天女”
師の洗礼名を受け、紫歩は予見師たちの頂点とも言える存在になった。
現在洗礼名を受けているのは紫歩だけだった。
厳密に言えば“志央姫蜜月華仙女”と呼ばれる洗礼名を受けた者もいたが、彼女はかなりの高齢で、予見師としての仕事が出来なかった。
満足に仕事ができる洗礼名を受けた者が、紫歩だけだったのがいけなかったのかもしれない。
紫歩が洗礼名を受けた後、仲の良かった予見師の友人がいなくなった。
いなくなった理由は簡単すぎるほど簡単だったが―


いつの間にか泣きつかれて眠っていたのだろう。目覚めた紫歩の気分は、これまでに無いくらい最悪だった。
どうやら泣き過ぎたらしく、頭痛が酷かった。
―どうせ今日は何も無いし、部屋に篭っていようか・・・・・。
どうすべきか悩んでいる紫歩に、声がかかった。「最丞紫月様、当主様が火急との事です。」
その言葉に紫歩が逆らえるわけも無く、すぐさま着替えを済ませて紫歩は中央の間までたどり着いた。
軽くため息をついて膝を付くと、紫歩は中に声をかけた。
「最丞紫月です。火急の用件だと聞きましたが?」
「入れ」の言葉をもらってから、紫歩は障子を開いて中に入った。
「失礼します。」
部屋に入った紫歩を待っていたのは、紫歩が仕えている央雅の当主様と、蒼羽の当主だった。

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