番外編 Previous×Prologue



Previous×Prologue


 仰向けになった体の背中で地面の振動を感じ、耳で車の走行音を聞く。時々、がつん、と石を弾き飛ばしたのか、地面の瘤にでも乗り上げたのかした揺れと音が混じった。
 鼻孔をくすぐるのは乾いた土の匂いで、それを証明するように、肌を打つ風も乾燥したものだった。しばらく、その風にさらされた頬は砂にうっすらと覆われて気持ち悪く、ギレイオは首元でたるんでいた外套の裾で顔を拭き、そのまま覆い隠した。
「今、どのへん?」
「アクアポートの手前だな。あと一晩はかかる」
「時間は……」
 言いかけた言葉を、腹の虫の音が遮る。
「昼か」
「みたいだな」
 隣で無感動に受け答えするのはサムナだった。ギレイオとは違い、サムナがハンドルを握ると車は穏やかな走行を見せる。
「もっとスピード出せよ」
「砂利でハンドルを取られる」
「草地を走ればいいじゃんか」
「“異形なる者”に会いたいのか?」
「お前が叩き潰せばいい」
「お前を庇いながらでは難しい」
「……悪かったな」
 ギレイオは珍しく、殊勝に謝ってみせ、目を覆っていたゴーグルの位置を直す。その上からは目を隠すように、ぼろぼろになった布切れが被せられていた。
 サムナはちらりと、助手席で仰向けになった相棒を見る。
「調子はどうだ」
「良くねえよ。胸糞悪い」
「目の方を聞いているんだが」
「見えてはきてるけど、まだぼやける」
 ギレイオは盛大に舌打をした。
「ったく、あのやろう。これで大事な片目が潰れたら、二度と溶接なんて出来ないようにしてやる……」

- 455 -

[*前] | [次#]

[しおりを挟む]
[表紙へ]




0.お品書きへ
9.サイトトップへ

×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -