Piece17



Piece17



 ギレイオやサムナが派手に暴れた結果、隊商はほぼ全滅と言ってもいい状態に追い込まれていた。数だけは揃っていたものの、実力が伴わなかったらしい。サムナはラオコガたち本隊を護衛しながら建物の中を進むが、タウザーの出る幕はなかった。剣の一払いでほとんどの者は戦意を喪失し、それによって犠牲者が少なくて済むのならとサムナも率先して切り込んでいった。多くが表での出来事と、先刻まで響き渡っていた悲鳴を知っており、侵入者に対して抵抗するという意欲を失っていた。
「……なんだか静かすぎて怖いな」
 ぽつりと、ラオコガがもらす。
 元学校の建物は地上二階、地下一階まであり、地上部分が宿泊施設だとすると、荷物などの類は地下ないし一階部分にあると彼らは踏んでいた。そして何の収穫もなしに一階部分を巡ったところで地下への入り口を探しだし、不意に、辺りが静かになっていたことに気付いたのである。
 一階を巡っていた時は、何かがぶつかる大きな音と振動がしていたが、今はそれもない。表には倒れた者ばかり、中には人気もなく、心なしか血の臭いまでもする。建物の中に反響するのは彼らの足音のみで、たまに交わされる言葉が異様に大きく響いて聞こえていた。
「静かなのは良いことだよ。相手の動きがすぐにわかる」
 タウザーが小さな声で言った。
「でも、大きな音を出せばこちらの位置もばれる。手早く、出来るだけ静かにやった方がいい」
 地下へはサムナが先導し、その次に明かりを掲げたラオコガ、仲間の男が二人続いて、タウザーがしんがりを務めた。残りは入口で見張りをし、何かあれば声をかけるようにラオコガが指示しておいた。
「暗くないか、サムナ」
 ラオコガがサムナの方へ明かりが行くよう、ランプの位置を変える。廊下に転がっていたところを拝借した物だった。
「平気だ。見える」
 タウザーの魔法で行く先を照らし続けていけばいいと、タウザー自身が申し出たのだが、ラオコガはそれを却下した。何かあった時にタウザーの魔法は強力な戦力になる。それを、明かりのために気力を消耗させては元も子もなかった。
 確かに、サムナは自身の視力に不安を持ってはいなかった。人よりよく見えるのは事実であり、それは暗闇の中でも同じことである。タウザーの消耗を減らす、というラオコガの意見にも頷けた。
 だが、そこまでラオコガが警戒を強める理由がサムナには見当がつかない。
「……ラオコガ」
「うん?」
 階段は短く、すぐに平坦な場所へと着く。明かりをかざして見ると、階段口から両側に向けて広い廊下が伸びていた。廊下には等間隔で頑丈そうな金属製の扉が並び、そのどれもが新しく、ランプの光を反射してうっすらと輝く。
 皆が息を飲むのを聞きながら、サムナは続けた。

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