Piece11



Piece11



 だから変態なんだよ、とギレイオは言い放った。
 隣でハンドルを握っているサムナは「それではわからない」と言い、続ける。
「研究をしたいのなら、もっと別の場所もあっただろう。安全で、資料が近くにあるからという理由では、学校内に入り込む理由にはならない。もちろん、お前の言い分にもだ」
 オフロード仕様の車は土煙をあげながら、荒野を疾走する。
 グランドヒルを出てから三日、ギレイオらはガイアに向かっていた。タイタニア大陸の西から東へ横断する形になる旅路は、そう簡単なものではない。中央のタイタニアを突っ切って行けるなら早いが、それが出来ない身の上では、迂回路を模索しつつ進むしかなかった。
 どうやらワイズマンの所で厄介になっていた間に、サムナは随分と有名人になってしまっていたようで、ちょっとした小さな町でも人々は顔を寄せ合って密やかに話し始める。それだけならまだしも、宿で眠っていたら襲われた時には、いよいよ現実に対する甘さを改めざるを得ない必要性に迫られた。
 おかげで寄れる町は限られ、宿に泊まるなどもってのほかである。必要な品物を買い込んだ後はさっさと町を後にし、夜は野宿で過ごすことにした。たった三日でえらく生活水準が下がったものだが、元に戻ったと思えば気楽なものである。ただ、ギレイオにしてみれば小金稼ぎもし辛いというのは痛かった。
 サムナはサムナで初めは申し訳なさそうにしていたものの、三日目ともなれば、気にするなと言い続けるギレイオの言に従い、通常に戻りつつある。サムナがどう思おうと、事態が解決するわけではない。ギレイオの言葉は正しく、ならば常態であろうとするのが一番だ、という考えに落ち着いたのだった。
 そして、旅路のほとんどを占める移動時間の合間に、サムナは尋ねたのである。ずっと気にはなっていたことだが、それ以上に気になることが出来て、尋ねることが出来なかったことだった。
 ワイズマンは何故、魔法学校の中に家まで作って研究しているのか。
「……リスクに対する見返りが少なすぎる」
 助手席でだらしなく座るギレイオは面倒臭そうに答えた。
「だから変態なんだってー」
 サムナはちらりと相方を見やる。
「お前、適当に片づけようと思っていないか」
「お前なあ……」
 いい加減、しつこい相方に呆れたらしく、ギレイオは大きく息を吐いた。
「変態だっていうのはある意味、真理なんだよ。あいつは女に惚れてあそこに居座ってんの」
 予想だにしない言葉が飛び出し、サムナは頭上に疑問符を点滅させる。
「どういうことだ?」
「知るか。女の置手紙がどういうわけか暗号化されてて? そんでその読み方を知りたいから、女の母校に居座ったんだと。過去を知ることで暗号の鍵を見つけることが出来るかもしれねえってな。ついでにその女が、今ワイズマンが研究している内容の先駆者らしくて、それで研究を続けて追いかければいずれは、なんてお話ですよ」

- 187 -

[*前] | [次#]

[しおりを挟む]
[表紙へ]




0.お品書きへ
9.サイトトップへ

×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -