Piece17



「まだ何か警戒することがあるのか?」
「あるさ」
 言って、ラオコガはタウザーを手招きした。そして左右に廊下が伸びていること、扉があることを確認させると、ランプの火を消す。途端に暗闇が押し寄せ、今まで明かりが場を支配していた分、押し寄せた暗闇の重さは外の比ではなかった。
「……規模が大きいにも関わらず、手練れと言えたのはさっきギレイオが相手していた連中を含めてわずかだった。戦意が喪失してたっていうのも、静かな理由になるだろうけどな。素人相手に抵抗が少なすぎる」
 暗闇の中でも窺えるラオコガの表情は明るくない。声音も調子を落としているからだろうが、まるで何者かが闇の奥で潜んでいるのを訝っているようでもあった。
 その時、ふう、と暖かな風と共に、光が現れる。見れば、タウザーが合わせた両手から、白い光が漏れ出ている。タウザーが手を開くと、ランプの明かりとは違った柔らかな光の球がいくつも飛び出し、廊下に並んだ扉の前でそれぞれ静止する。
 一瞬で暗闇を打ち消したそれこそ、光属性方程式魔法と呼ばれるものだったが、サムナは自身が見たことのあるものとの違いに興味を覚えた。
「ベイオグラフのものと違う」
 タウザーはちらりとサムナを振り返る。
「彼は攻撃力に特化した部類だからね。俺はその真逆というか……戦闘向きじゃないんだ。索敵や状況把握みたいな、後方支援タイプなんだ」
「お前の性格に合った魔法だよな。その流れで残党も探せれば良かったんだが」
 ラオコガが苦笑交じりに言う。半ば本気の言葉であることは、誰もがわかっていた。
 タウザーも困ったように笑って応じる。
「面目ない……人ばかりは、一度は魔法で触れないとわからなくて」
「魔法で?」
「うん……魔法で人に触れると、その人を探し出すことが出来ると言えばいいのかな……ただ、その時に出る光が強烈で。こういう場所だと光が乱反射して、使ってる方まで目をくらますんだよね」
 使えねえ、とギレイオなら一蹴しているところである。確かに、狭い空間では難しい魔法だとサムナは思った。
「……広い場所でなら絶大な力だろうな」
「追いかけっことかくれんぼには有効かな。ただ、どうしても目立つから、一緒に素早く動ける鬼の役がいないと役立たずだけど」
「今のこれも探しているのか」
 光の球は微妙に光の加減を変えつつ、扉の前で宙に浮いている。
「魔法は魔晶石や魔石を通して生まれるものだから、人よりも簡単なんだ。親を探すようなものだね」

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