番外編 Previous×Prologue



「これまでと同じじゃないか」
「ああ、変わらない。だから、結局お前もそれで納得しろよって話」
 そこまで言って、ギレイオは顔をしかめた。
「……って、これ一番最初に話した内容と全然、進歩がねえな」
「初めて会った時のあれか」
「何年経っても成長がねえってか……」
「どうだろうな」
 ギレイオは頭をかきむしり、ようやく顔を見せ始めた朝日に、ゴーグルの中の目を細める。
「駄目だ、まだ眩しい。あと、また頼むわ」
「わかった」
 助手席のシートを倒し、目に布を覆い被せてギレイオは寝転んだ。
 進歩がない、成長がない、とギレイオは言う。だが、その中で小さく変化したものをサムナは知っていた。
──頼む。
 自分を守り、暴走した際には止めろ、といった最初の頼みごと以外にも、ギレイオは事あるごとにサムナへ「頼む」と言うようになっていた。ギレイオ本人も気付いていない小さな変化だが、それはサムナにとっての大きな進化である。それを体験出来ることが誇らしかった。
 がたん、と車が揺れて、サムナは少しだけハンドルを左に切った。石ころだらけの地面にはいささか飽きていた。人の目には確認出来ないものの、サムナの目には遥か前方に薄い緑の絨毯が見えている。わずかでも、草地の方が走りやすく、その先には目当てのアクアポートの街があった。
 "異形なる者"が現れる可能性は確かに高い。だが、向かわれれば叩き潰してやればいい。それがサムナの仕事である。
 だって、と誰にもわからないくらいに小さく笑った。
 頼む、と言われたからな。



終り

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