第二十七章 僕は



 目を腕で覆っていたライが追いかけようとした時、ジャックの叫ぶ声が聞こえた。

「カラゼク!……ロアーナ!」

「……なに?」

 蹄の地面を蹴る音が近くなり、反射的にそちらへ視線を向ける。

 すると、煙の中で僅かに出来た隙間に騎乗した人影が現れ、草原に放った火で銀色の光が反射するのが見て取れた。

「カラゼク!」

 思わず叫ぶと、布に覆われた目がこちらを見る。

──そんな、まさか。

「やめろ!行くな!」

 しかしライの声に構わず、急襲した一団は疾風の勢いで駆け抜けていった。

 確かにいた。ライはこちらを見たカラゼクの腕にあるものを見た。

 息を飲んで彼らの消えた方向を見つめるライの元に、外套で口許を覆ったバーンがどうにかこうにか辿り着く。

「おい、大丈夫か?ジャックが叫んでたが……」

「……カラゼクがいたのは確かだ。ロアーナは見てない」

「ったく、何なんだ……」

 言いながら辺りを見回したバーンは、あるはずの姿がないことに気付いてライに詰め寄る。

「おい、まさか」

 ライは顔をしかめて頷く。

「すぐに用意をする。……アスが連れ去られた」



二十七章 終

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