※簡易設定
・黒カルル…強い人を求めてカグツチを徘徊する殺人鬼。戦い>姉さん
・紫カルル…黒を心配してはいつも返り討ちにあう不憫ちゃん。理由ははっきりしないが黒に好意を抱いてる






カツンカツンと軽快な音を鳴らしながら少年は夜のロストタウンを歩く。街灯に照らされてくっきりと浮かび上がるのは真っ白な銀髪と、少しくすんだ真紅の瞳。

「…ねぇ、いつまでボクを追いかけてくるの?」

真紅の瞳をぎらつかせながら少年は暗闇に視線を向ける。返事は無いが、その代わりギリギリと何かが駆動する音が聞こえた。聞き覚えのあるその音に少年は表情を歪める。

「何だ。また君…?」
「また、とは失礼だと思うけど…カルル」

街灯の明かりの下へ現れた声の主は少年…カルルと瓜二つの顔に声をしていた。違うのは癖の無い柔らかそうな茶色の髪に、深い悲しみを帯びた濃い藍の瞳、服は赤みを帯びた紫で対峙する黒の少年と比べれば幾分か柔らかい印象を受ける。

「相変わらず君はボクの邪魔をするんだね」
「…好きに言えば良いよ」

そう言い少年が構えると傍らに人形が現れる。紅い目を細めてカルルは笑う。

「全く、君は何が目的?ボクはただ、あのお兄さんと遊びたいだけなのに」
「あの人は…危険すぎる…!」
「何も知らない君に言われたくないなぁ…」

トン、と軽く駆け出し相手との距離を詰める。当然の様に人形で攻撃を防いでくるが、それは想定内の事。

「ボクにこんな事言ってるけど、君はじゃあ、この飢えを、満たしてくれるとでも?」

姿勢を低く落とし、人形の横をすり抜け背後を奪う。攻撃は受け止められたが、人形の動きを止めれただけで十分だ。

「強い人と戦いたい、この単純明快な欲を、飢えを、満たせると!?」

背後からの攻撃に体勢を崩した所を仕込んでいた旗ですくい上げ、地面へ叩き付ける。

「う、あ゛っ…!」
「ボクより弱い君に…何が出来るって言うんだい?」

地面に無様に倒れ伏せた少年を紅い目が嘲笑する。起き上がろうとした少年の喉元に突きつけたナイトの槍の切っ先が、動きを地面に縫い止める。

「ほら、今も何も出来ない」
「……っ!」
「いい加減、実力の差を知ると良いよ」
「それでも…それでも僕は諦めたくない!お前が傷付く姿なんて…見たくないんだ!」

そう叫べばカルルはつまらなさそうに武器をしまい、その場から離れる。慌てて起き上がり少年は腕を掴むが、あっさりと振り払われ胸倉を掴まれる。引き寄せた衝撃で少年の眼鏡が地面に落ち、カシャンと儚い音を立てた。

「その程度の実力でボクを止めようとしたの…?笑わせないで欲しいよ」

真紅の瞳と藍の瞳の視線がかち合う。

「分かる?君はニルヴァーナを使ってもボクに勝てなかった。そしてボクはニルヴァーナすら使わなかった」

その言葉に少年は歯軋りをする。否定したくても事実なのだから、何も発言は出来ない。

「じゃあね。あぁ、折角見つけたお兄さんの気配見失っちゃったよ…」









少年は去ってゆくカルルの背中を見ている事しか出来なかった。無力な自分を嘆くかの様に肩を抱き、静かに地に伏せ嗚咽を漏らした。







【弱者は何故、かの殺人鬼に執着を示すのか】



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