大人とは不思議な生き物だ。都合の悪いことは揉み消し、隠し、時代の闇へと葬ってゆく。
僕の父親もそうだ。
姉さんをあんな姿にしても、あの人は至極当然の様に言ったのだ、

「エイダは一度家をでて勉強をしてくる」

と。


幼い僕はその言葉を疑いもしなかった。いい子で待っていれば姉さんは帰ってきてくれる、そう信じて学校に通った。
そう信じて待つこと自体が愚かな事だったと気付くのは、もう少し後の事だった。


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正直、学校は何も楽しくない。小等部の時点で既に馴れ合いの精神が身に付いてる甘ちゃんばかり。あぁ、つまらない。

その時だ、噂を聞いたのは。
高等部の人達から情報を聞き出すのは容易かった。小等部の後輩という肩書きだけで油断してペラペラと勝手に喋ってくれた。
これから衛士になるというのにその甘さはどうだろう。あぁ、こういう奴が早死にするんだろうななんて思いながら僕は「先輩、どうもありがとうございました」と笑顔でお礼を言い頭を下げる。全く、こんな奴に頭を下げるなんて反吐が出そうだ。


話に聞いた場所へ僕は何度も足を運んだ。そして、接触する事ができた・・・。






「こんにちは」

学校から少し離れた丘の上、そこが彼の定位置だと教えてもらった。何度目かの訪問でやっと会えた。挨拶をすれば冷たい視線が返ってくる。

「人影を見つけたので気になって来てみたんですが…あ、隣良いですか?」

返事は無かった。僕はそれを肯定と取り彼の隣へと腰を下ろす。彼は呼んでいた本から視線を外す素振りを見せない。何の本だろうと少し興味を持ってチラリと視線を彼から本へと移そうとすると突然声が降りかかってくる。

「何の用だ?それ以前に、僕は君と面識が無い」

思っていた以上に、冷たく、刺す様な声音にぞくりとした。口調は丁寧だが、言葉の温度と言えばいいのだろうか、人にかける言葉とは思えない程彼の声は冷たかった。
内心を悟られない様、仮面を被る。冷たく、厚い仮面を。

「あ、それは僕もです。噂には聞いていたんですけど、こうやってお会いするのは初めてですよ?」

ニコリと微笑めば、彼は目をスッと細める。まるで内心を探るかの様に。
そう。コレだ。僕が求めていたのは、この感覚・・・。
さて、この人はどう思うのかな。今までの様な馬鹿な大人なのか、それとも違うのか、見せて欲しいなあ…。


(ジン=キサラギ先輩…?)






【大人と子供とその間】





どちらにもなれない中途半端な僕は何なんだろう


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